千堂京一、深慮する その2
『本人が意図せずしてしまった<失敗>と、明らかに悪意の元で意図的に行った<悪行>とは明確に区別しなければいけないと私は思う。
ただ、それをどう評価するべきか難しい事例というのもあるのはまた事実。
先日の、エリナ・バーンズの行為がまさにそれだ。
彼女は紛れもなく、報復を目的として意図的に
しかし、彼女は本来、そのような行為を働くタイプじゃないことも、私は知っている。
そして、検察も、彼女の行為については起訴猶予相当と判断して不起訴処分としたのだ。つまりは、法律の専門家の目から見ても彼女の行いは情状の余地ありとされるものだったわけだ。
だから私は、彼女がいつか立ち直り、現場に戻ってきてくれることを望んでいる。
彼女は非常に優秀な人材だ。あのようなことで失いたくはない。
その一方で、あの、ジョン・
『才能がない』から評価しないのではない。彼自身の不誠実さ、他者への攻撃性が、すべてを台無しにしているのだ。
『自らの役目に対して誠実であること』
それ自体が大変な才能であると私は考えているし、
にも拘らず、他人を妬み貶めようとするのであれば、それを評価の材料としないわけにはいかない。
自らの処遇に不満を持つ者は、よく考えてみるべきだろう。自らを省みるべきだろう。
自分は、誰かを傷付けようとしていないか?
誰かを貶めようとしていないか?
普段のそういう行いは誰かの目に留まり、それが評価の対象となるのだ。このことを忘れてはいけない。
牧紫栗はそれをわきまえず理不尽な逆恨みを他人にぶつけようとしたことで、自らの立場を悪くしたのだ。
彼がそれを理解できていたなら、今のような配置転換は行われなかったのにな……
アリシアには、この私の考えが届いているだろうか? 私は、それを体現できているだろうか?
彼女は私を手本として人間というものを学んでくれている。私はその事実と向かい合わなければならない。
私が、この子の<親>なのだ』
目の前ですばらしいパフォーマンスが繰り広げられている中、
正直、彼の隣で目を輝かせてショーに見入っていたアリシアの方が、よっぽど人間らしかっただろう。
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