底辺ライターの異世界テレワーク漂流記
怪奇!殺人猫太郎
2020年3月29日(日) 家ごと異世界(?)に飛ばされた
朝起きたら、家ごと異世界に飛ばされていた。
何を言っているのか分からないと思うが、俺も何をされたか分からない。
▼9:00ごろ。
タバコを買いにコンビニにいこうと思って玄関の扉を開けたら、お外はまるで南の島。NHKのドキュメンタリーでしか見たことのないような、東南アジアの密林みたいな空間が広がっていたんだ。
いやさ、もうね、びっくりだよね。なんかけたたましい鳥の鳴き声みたいなのが遠くから聞こえてくるし。怖いよ。
わけが分からないので、きっと悪い夢だと思って寝直した。
▼13:00ごろ
起きた。夢じゃなかった。玄関の外は人外魔境。家の外の木には見たこともない鳥がとまっている。なんか猿の鳴き声みたいなのがあっちこっちから聞こえる。怖い。
ひとまず家の戸締まりを確認して、飯を食うことにした。
不思議なことに、家のライフラインは全部生きていた。電気もガスも水道も。それどこかろか、インターネットやテレビの電波も来ている。
「俺んち、いったいどうなっちゃったの?」
一人ごとを言いながら、インスタントラーメンを作って食べたが、まったく味がしなかった。
一部のネットニュースによれば、新型コロナウイルス(COVID19)に感染すると、味覚がなくなるという仮説があるのだというが、いま食ったラーメンの味がしなかったのは、コロナのせいじゃないと思う。
▼15:00ごろ
俺の家がいまどんな状況にあるのか。
いろいろな可能性を考えたが、合理的な説明は思いつかなかった。材料が足りなさすぎる。かといって、家の外に踏み出して周囲を調査する勇気は、まだ湧いてこなかった。
いつものクセでツイッターを見たが、タイムラインはいつもと変わらぬ脳天気な雰囲気。『仮面ライダーゼロワン』や『ヒーリングっど♡プリキュア』の話が延々流れてくる。
どうやらおかしくなっているのは俺だけみたいだ。少なくとも、表面上は。
ツイッターを見ると、今日は関東地方ではかなり雪が降っているらしい。
仕事仲間が大騒ぎしているが、うちの外ときたら一面の雪化粧どころか、謎の熱帯雨林っぽい何かだ。
助けてくれ。
とりあえず「異世界なう」と書いたら、ネタツイートだと思われたらしい。ライター仲間の東山くんが、漫画のコマを貼ってリプライしてきた。
なにが「今日も一日がんばるぞい」だ。ぶち殺すぞ。
▼17:00ごろ
無気力なまま、録画していた『ゲゲゲの鬼太郎』第六期の最終回を見た。六期はやたら現代文化を話に絡めようとするところが鼻について、最初はあまり好きじゃなかったけど、通して見れば傑作だったと思う。
ダラダラしていたら、iPhoneに着信。表示されている名前は「明沢」。電話に出ると、「頼んでた原稿まだ? 明日までにあると俺っち助かるんだけど」。
何のことかと思えば、先週頼まれたソシャゲのフレーバーテキストの話らしい。たしか締め切りは来週って言ってなかったか? 相変わらず進行管理がめちゃくちゃな男だ。
よく分からないが、どうやら俺はこんな状況でも働かねばならんらしい。
仕方がないので、原稿を書くことにした。いま自分の身に起きていることをつらつら考えるよりは、働いていたほうがマシだ。
▼18:00ごろ
仕事の原稿に取りかかる前に、自分の身に起きていることの記録をつけることにした。要するに日記だ。
ふとイタズラ心が湧いてきたので、カクヨムに日記をアップしてみることにする。
どうせ誰も信じないだろうが、念のためアップ前に、固有名詞は全部仮名に変えておこう。
疲れたから、仕事の前にAmazon Primeで『虚構推理』のアニメを6話まで見る。原作を読んだのって何年前だっけ? ほどよく内容を忘れているので面白い。
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