色仕掛けされても勇者なんてやりたくない
二重世界
第1話
「初めまして、異世界の人間」
ある休日の朝、俺は気付くととんでもないレベルの見知らぬ美人に跨がれていた。
……これは夢だな。うん、そうに違いない。こんなラノベみたいな展開が現実にある訳がない。
何か訳の分からない事言ってるし。
……寝るか。
「寝ないでください!」
「イタっ!」
思いっきりぶたれた。
もしかして夢じゃないのか?
だったらこの女は誰だ? よく観察してみるが、やっぱり見覚えはない。
こんな美人、一度見たら忘れるはずがないのだが。
服装も見た事ないような物だ。前衛的と言えばいいのか、何と言うか。
布ようなもので出来ており面積が少ない。
胸元や太ももが露出していて、ハッキリ言ってかなりエロい。
「イテッ!」
再度ぶたれた。
「何するんだよ!?」
「貴方の股間からイヤラシイ気配を感じましたので」
それは仕方ないだろ。この状況で反応しない男子高校生なんていない。
いるとしたら病気で性欲がない奴かホモだけだ。
「更に大きく……もしかして叩かれて興奮する特殊性癖の持ち主なのですか?」
「違う!! 断じて俺にそんな趣味はない!」
何で初対面の女に変態認定されないといけないんだ。
大体、どう見ても変態はお前の方だろ。
「ていうか、あんた誰?」
「ああ、そういえば名乗るのを忘れていましたね。私はレイア。貴方に分かりやすい言葉で説明すると異世界人というものです」
「異世界人?」
胡散臭いな。アニメとかではよく見るけど、本当にいるとは思えない。
これは隙を見付けて警察に通報した方がいいな。それとも精神病院か。
「その顔は疑っていますね。まぁ、それも当然の反応です。私もつい最近まで異世界の存在なんて信じていませんでしたから」
「それよりも、そろそろ退いてくれないか」
ずっとこの状態はマズイ。
別にレイアと名乗った女が重いとかではない。むしろ軽いぐらいだ。
ただ服の面積が少ないせいで、柔らかい女体がダイレクトに感じられて健全な男子高校生には刺激が強すぎる。
「だから証拠を見せてあげます」
この女、俺の要求を無視かよ。なんてマイペースな奴だ。
レイアは退くどころか、より密着して自分の耳元を見せてくれた。
服の隙間からハッキリと胸元が見えて更に状況は悪化する。サイズも大きく形も素晴らしい。破壊力は抜群だ。
いつ爆発してもおかしくない。もし爆発したら変態認定されても反論できなくなる。何とか我慢しなくては。
「これは……」
レイアの耳は常識では考えられないぐらい長くて尖っていた。それこそ創作でよく見るエルフみたいだ。
確かに普通の人間ではないのかもしれない。
「信じてくれました?」
「いや、これだけでは断言する事は出来ないな。もっと確実な証拠はないのか」
特殊メイクとかの可能性もある。
何でそんな事をして人の寝込みを襲っているのかは全く分からないが。
ていうか、そんな事より早く何とかこの女を退けないと。この状況を親に見られると終わりだ。
「確実な証拠……そういう事なら直接連れて行った方が早いですね」
「はい?」
レイアが指をパチンッと鳴らすと俺達の下に幾何学的な紋章を現れた。
何だ、これは。魔法陣みたいに見えるけど。
さすがにこれは理解の外だ。科学的に証明できる事ではない。
「ちょ、待っ――」
「待ちませんよ。証拠を見せろ、と言ったのは貴方です」
次の瞬間、俺は見知らぬ森にいた。
俺はついさっきまで自室のベッドの上にいたはずだ。それが一瞬で知らない場所に。
確かに確実な証拠だ。
「これでどうかしら、七瀬伊吹くん」
「……ああ、信じるよ」
ん、待て。俺、名乗ったっけ?
何で俺の名前を知っているんだ?
「名前を知っている事が不思議なようですね。でも名前ぐらい知っていて当然です。むしろ貴方に用があって会いに行ったのに名前も知らない方が不自然だと思いますが?」
「そう言われると確かにそうだが……でも、そうなると俺に用ってなんだ?」
「それは簡単にして明瞭、貴方に勇者として世界を救ってほしいのです」
「……はい?」
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