第2話 彼女は冷たい
僕が玉砕した次の日。クラスの男子達が机の周りにやってきた。
「いやーいい散りざまだったぜクロエくん」
「そうそう!まさか初日に突撃するとは」
「天晴れである!!」
「もしも俺だったら…今日学校にこれない…」
「「確かに!!」」
僕の周りでギャーギャー騒ぐのは男子のほとんどだ。昨日の玉砕を見てから、僕に優しい眼差しを向ける。
初日から皆の話のネタになったのは、仲良くなる為には良かったのかもしれない……
「うんうん……クロエの新しい恋を探そうぜ!」
「「賛成ーー!」」
盛り上がる男子達を後目に女子は藤宮さんの所に集まっていた。
「ちょっと藤宮さん、男子達サイテーだよね?」
「ホントだよ!昨日は藤宮さんに寄ってたかって……しかもいきなり告白だなんて」
「それで昨日の事を再現までしてるんだよ?」
「迷惑だよね?私から男子に言ってこようか?」
藤宮さんは目を閉じて静かに座っている。
「別に……」
ただ一言そう告げて
ガラガラッ
教室の扉が開くと同時に担任の先生が入ってきた。
「うぃーす。お前達席につけー」
担任の園田カオル先生だ。
どこかのスパイ映画に出てきそうなスレンダーでショートカットが似合うキャリアウーマンだ。そして他の追随を許さないそのバディを遺憾無く発揮している。
「まぁなんだ……今日のHRでめんどくさいがクラスの各委員を決めなきゃならん」
そしてズボラで面倒くさがりみたいだ
「先に委員長決めるぞ〜誰か〜」
周りではコソコソと話をする声が聞こえる
しかし誰も手を挙げない……
「他薦でもいいぞ〜」
その一言に女子達が反応する。
「先生!だったら藤宮さんがいいと思います!」
「私も!」
「うん、絶対合ってる!」
女子は藤宮さんを推しているようだ。昨日のあの態度を見て、クールビューティーの称号を得たのだろう。
「ん〜藤宮かぁ、藤宮はどうだ?」
「別に……」
「んじゃ女子は決まりって事で!次に男子〜」
女子が藤宮さんになったので、男子連中が騒ぎだした。
「俺、立候補しちゃおうかなぁ?」
「やめとけって、釣り合わねぇわ」
「ここは俺の出番かな!」
「でも、昨日のゴミを見るような目で指示されたい……ハァハァ」
大盛り上がりだ。それでも誰も手を挙げようとしない。そんな中……
「先生!僕がやります!いえ僕しかいません!」
その声の主は言わずもがな僕である。周りは僕の方を見て、固まっている。
「んぁ黒江か、いいんじゃね?じゃあ男子は黒江でいいか?」
先生の呑気な声が聞こえる。
「えっ?いやいやお前正気か?」
「冗談だよなクロエ?」
「ちょっとヤダー、黒江君がクラス委員?」
「ねぇ藤宮さんもそう思うよね?黒江くんが男子の委員やるなら辞退した方がいいよ」
大ブーイングである。
「別に……」
彼女はただつぶやいた
(てかさっきから別にしか言ってないよね?)
「んじゃ委員長が決まったという事で、後は二人に任せるわ〜先生二日酔いだから終わったら起こしてくれ!」
そういって椅子を窓際に持っていきうたた寝を始めた。
「「テキトーな先生だなぁ」」
クラスの総意である。入学二日目にしてこれからが心配になってきた。
僕と藤宮さんが席を立ち黒板に向かう。
「よろしくね!藤宮さん!」
僕は精一杯の笑顔で彼女に手を差し出す。友好の握手だ
「話しかけるなブタ野郎」
くぅぅぅぅ
藤宮さんてば冷たい!
その一言はツンドラのように教室を支配した。
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