難解クーデター

#1

窓の蝿に電流を神経へ送り込み

陥没した空の先に鴎は飛ぶ

蛍光灯が切れかけていて

瞬きを繰り返してる

それに同性を浮かべた

明るいあの娘は錯乱してる

強弱の表情に

不安の唾液を売り捌く

脳の内側に球根はそっと植えられていて

頭だけ出してる人達の花壇に水をやる

それでも花は知恵を吸わず

賢く生きようとはしなかった

霜に花びらを凍らせていた


#2

三日月を翻す

旗は首から橋へ身投げした

鉄の山脈を裸で犯しなぞる

舌の上の熱にのしかかり

鋏で散らした紙を誘拐する

髪が吊された木々をに

炎は毛先から焦がしてく

壁に塗り付けた導火線は

壁をどう辿り虫食いにするだろう

雲の隙間を光は射し

舞い上がる逃げた塵は

それを跳ね返す

枕が夢を見せてる

それを多くは自らの体験の様に語る


#3

手先から灰になる前に

水を一杯飲みたい

藪の兎は跳ねることを知らない

その左手がそうさせている

羊雲は遊牧をしていて

指で囲ってみた

怖い飼い主がやって来て

毛を全て剥いだら

空には何にも残らなかった

形あるものは失くなると

角佐藤は怯えてコーヒーに飛び込んだ


#4

眠りは月の浅瀬に弱い波を見るようで

軍隊は戦いへの寂寥を忌憚する

幾何が夜に撒かれた日には

無花果は一輪だけ花びらを散らす

午後の白昼夢の庭を見ることもなく


#5

仮想に代理人を申し立て

忠告に金縁が苔に覆われる

胸の心臓の入れ墨に

ただ暫く手を当てたいだけ

流れる水は潔癖なだけだった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る