沈没船

#1

片足を舵に回して

ワルツに影を重ねた

荒れた海で見付けて

私はそこに居るのだけれど


過ぎる明かりに輝いても

碇がなければ呑まれる

後に平行線になる

私はその頃は藻屑だけれど


窓に映した果ての海

暗雲に染まった月は隠れ

誕生は同時に終わりを意味する

私は地よりも深い底へ帰される

何処へ名前を呼べば良いの

まだ私はあなたの居る方を知らず


波は無邪気な子供だった

押して引くばかりに持て余し

被さり沈める玩具にされた

飽きられるまでが救いでした


#2

風が吹き回りながら押し潰す

僕は硬くなった雨粒の中 丘を目指す

あなたの声をこの先の嵐で聞いた気がした

僕の呼ぶ声を荒波は撃ち落とす


あなたの船は水平線に重なる筈だけど

ごまかす様に八方に揺れていた

掻き分けてそのもとへ行けたのなら

末を知ってたなら止めていたのに


今はただ祈ることしか出来なかった

飽きた海は忘れさせる程穏やかで

僕はあなたが何処にいるのかを

分からないまま過ごしている

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