風を釣る

転校生が来ました

それは遠くから来たと

先生が教えてくれた

少年はチョークを借りて名前を書く

「北風 勘太郎」

勘太郎は丁寧にお時期をして言う

「はじめまして

北風 勘太郎と言います

これからもよろしくお願いします」

勘太郎は真ん中の前の席に座る

どうしてだろうか

席を作ったのに

前から有った様に違和感を感じなかった


体育の授業が始まり

内容は駆けっこだった

クラスの早い子と

勘太郎は走る事になった

先生は位置に付かせて雷管を鳴す

勘太郎は突風の様に突き抜ける走りをする

ゴールするとクラスの皆が勘太郎に集まる

その後にゴールをした早い子は

眼を潤ませているのに僕は気付いた


算数の授業があり

僕達は習いたての掛け算に苦悩する

だけど僕は国語が苦手

会話は日々暗算

足算と掛け算からなされていて

計算間違いは答えに辿り着くまで

身を潜めているんだ

勘太郎は穴の開いた九九の問題で

自信に溢れた手をあげる

先生は指名し勘太郎はチョークを握る

瞬く間に解いて行き

それは全問正解だった

先生が言う

「お前は凄いなぁ

前の学校でもしてたのか?」

勘太郎は照れた顔をしながら言う

「前の学校でも遊んでばかりでした

僕はただ、風の噂を信じただけです」

算数よりも分からない答えだった

ただ答えは自然に導かれて行く

この後に分かる事になる


昼休みになると

勘太郎は机で頭を抱えていた

頭が痛いとかそんなのじゃなくて

不安になったそうだ

さっきから良いとこ取りしてる自分が

嫌われるんじゃないかと

僕は別に嫌わないだろうこれからも

ただあいつの事は分からないけど

勘太郎は言う

「心配かけてごめんね

気にしないで欲しい

憶病風に囁かれただけだから」

学校が終わり下校する

勘太郎は校舎の北側の裏山へ歩いて行く

「やりたい事があるんだ」

理由を聞いて見たけど秘密にされた

僕は親しい友達と学校を後にする


数日たって勘太郎は生活に慣れたみたい

憶病風に囁かれる事もなくなったそうだ

そんなの事は今は関係ない

僕は勘太郎の裏山の秘密を知りたい

僕はそれを知りたくてしょうがない


勘太郎はさよならをすると裏山へ行く

僕は気付かれないように

後を付けて行く枝を踏んでしまわぬ様

ゆっくりと冷たくなって行く

山の奥へと歩いて行く

頂上に着くとそこは広い草原だった

僕はまだそこに踏み出さず

木の影に身を移す

勘太郎は真ん中に有る大きな岩の下

何かを探す様に手を伸ばしていた

それは小さな釣竿で引っ掛ける所には

赤と青が交ざった風鈴が付いていた

勘太郎は大きな岩の上に登り

釣竿を垂らした

暫くすると風吹いて来た

なだらかな風

すると風鈴は激しく揺れ始めて

勘太郎は飛び跳ねた

勘太郎は風に跨がっている

草原の中を軽やかに泳いでる様だった


「っあ…」

僕は出来事に同様をしていて

声を立てるすると風は吹き止んで

勘太郎は泳ぐのを止めた

隠れている僕に歩み寄ってくる

「知ってしまったんだね…

勘太郎はとても残念そうな顔をした

「僕は風の子なんだ

出身が北風だったから名字は北風

先生には風の噂で違うとこ信じこませた

たまにはこうやって誰かと触れたり

勉強とかもしたかったけど

決まりがあって

誰かに見つかったら

僕はいなくならなきゃならない

君は悪くないよ

僕が勝手にした事だから


僕は居なくならないでと

手を強く握ったけれど

勘太郎は俯いたままだった

「悲しませてごめんよ

償いにもならないけどこれ使ってみな」

勘太郎は僕に釣竿を渡した

「これは風を釣るんだよ

風の人は皆こうやって

気楽に飛んで暮らしてるんだ

コツを教えるからやってみな」

気が付くと外はもう暗くなって居た

結局上手く乗れないまま終ってしまった

勘太郎は風に乗って

何処かへ行ってしまった

僕は布団の中でひっそりと泣いていた


翌日

何事もなかった様な学校がそこにはあった

勘太郎が座っていた席は無くて

本来そこにいた子が居た

それでも初めからそうだった様に

違和感を感じなかった

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