平気だよ

友人の背中に

風船の幽霊が

取り憑いていた

月面歩行みたいに

不安でなぎこちない

歩き方をしていた

道の途中

友人は足を止めて

「何処に居たって

角は有るじゃないか」

と顔真っ赤に膨ましていた

やがてフワフワと

宙に体が浮いていき

途中で割れた



友人には

魚の幽霊が

取り憑いていた

口をパクパクさせて

必死に地面を蹴っていた

私は水を掛けながら

水槽へと入れた

水槽を優雅に

泳いでみせて

ガラス越し

ピースサインをくれた

大人になったからそろそろ

放さなきゃならない

川へ友人を放した

水面から

少しだけ顔出して

嬉しそうに奥へ行きました

見えない約束は

春に果たされます様にと

胸に手を当てたのです



友人に

鳩の幽霊が

取り憑いていた

追いかけ回すと

暫く飛ばないで

慌て逃げている

時計が鳴る度

友人は唄い出した

不幸とか

かき消す様な大声で

やがて唄は

伝染していき

一つの声になった

だから

落ちた物しか食べない

乞食みたいな行動止してよ

誰もが友人を

平和の象徴と

崇めていたけど

逃げ遅れて

トラックに跳ねられて

死んでしまったよ

運転手さん友人の事

好きだったから

自殺をしちゃった

周りの鳩は知らん顔して

餌を摘んでいた



皆 変わって

居なくなっちゃうけど

私は平気だよ

ちゃんと自分持ってるよ

亡くさない様に

抱えているよ


平気だよ

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