だから僕は制服を捨てた

♯1

春の撫でる風に見惚れていて 坂の途中を降りる

桜の花弁が浮いている 浮いてる 落ちぬと必死に

学校に行くのである 今 川は透き通り 空は雲を運んでいた

目覚めの蛙はこれから田を目指す 筑紫と蒲公英は顔を出すしかないみたいだ

遠き人は髪を染めていて 拘束の青春に春は静かに歪む

教師が窓から侵入する光に 欠伸をして生徒を待っている

どうして春は略奪し 立ち止まらせるのだ

春一番の風は 僕の背中を押してくれる事は無かった

曝け出せずに皆が沈黙に体育館に集まる


#2

熱いのは季節だけじゃない 周りもそんな気分である

激しく燃えているのは 太陽だけじゃない

今に忙しい人たちは行事に盛り上がる

無断で彼らは計画を進めて 私たちは同意をしているのだと決めつける

違うのです それは反対の意味なのです 教師は微笑ましくそれを見る

忙しい日々にアイスを咥えたいけど 教師は冷房をかけてはくれないのだ

職員室はアイスコーヒーがブームというのに不満を持って 怒られた同級生がいた

僕もその通りである 膨大な可能性を青春の為に削ぎ落とし 道を絞る若い季節

決まって生徒は 学校に従う さぁカキ氷食べに駄菓子屋に行こう

この時もそうだった 昼休みの終り頃玄関では教師が腕を組んで待っていて

僕は正座をさせられながら

置かれたアイスが温く溶けるまで眺めさせられるのだった


#3

文化を見せる祭りがやって来た

僕たちは合唱に苦悩する

変声期が男児を悩ませて 張り切り過ぎた女児が勘違いして泣く

教師は頑張ろうなと男児を励ますも

それはあちらの方を持つようにしか思われていないのだった

この時から異性の憧れを持っていたのかも知れない

去年は散々盛り上がったのに 思い出は作れそうにない

自分たちの事だけを考えていれば良いのに

他人の事考えて祭りは行われたんだから

幅広く支持は貰えず つまらなかったと言葉を漏らされていた

どうして哲学演劇を演じなければならなかったのだろう

誰ひとりが理解できず台詞を吐いていた

かき鳴らす筈だったギターはステージに来る事は無くなった

愛やら平和を歌うのに 好きでも無い校歌をカヴァーするのに下品だからと

老いた葉から殺されていく


#4

その時が来るのは知っていた 日付が大きく変わろうとしている

年賀状は気軽なメールにさせてもらいます

川が氷 木が砕ける そんなとき 嫌でも虚しさは形に出て降り積もって来る

この夜が明け 数ヵ月後 僕は新しい学校になんて行かないよ

社会は回っている 僕たちは縛られている

多くの可能性を削ぎ落とした 所になんて行きたくないんだ

馬鹿でも構いません 悔しくなるころ ライ麦畑で捕まえてごらんなさい

幸せそうな顔をしているのはどちらでしょうか

全ては僕が僕であり生きるため

旅になんか行かせて貰いますよ

学問とかよりも大切で

学校なんかよりも自由なところ



だから僕は制服を捨てた

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