そのモノたちの意味

私は煙草を吸い終えたばかりだ

煙が私の動く時の小さな風を捕えて

密室から逃げようとしている


私は時として貴方に刃を向ける時が来るかも知れない

閉じていないナイフとは殺意の象徴

私には女神のような笑みがあって

必ず貴方に見せる時が来る

その時が来る前に

エイロニアなその思考を


渋谷のハチ公がお座りして眺めている先で殺人が起きたそうで

ハチ公はずっと動かないで傍観していた

怒り狂った親族がハチ公を金属バットで殴るけど

その時もぴくりともしなかった

偶然にも渋谷の雨の最初の一粒はハチ公の左目を流れた


私はその雨も含めて雨一粒一粒が何の意味を持つのか分からない

恵みのつもりでなのか

災いのつもりでなのか

それ以外の何かなのか

私はこの雨の中

傘も差さずに叫ぶ


「なんのいみがあるの」と


ただ雨は降り

排水口を目指し渋谷からの脱出を試みる

私は濡れる体を気にせず

煙草に火をつけた

煙は雨粒を受け取ろうと纏まるが構わず落ちていく

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