1999年の某日

八月には恐怖の大魔王が彗星に乗ってやって来て

人類はそこで死ぬんだとテレビでは討論していた

夏の晩 茶の間で輪を作り 

取っ組み合いになっているテレビ画面をスイカ食べながら見ていた

幼い私は 隣の兄に聞く癖がある

「この先はどうなるの」と私が言うと

「・・そうだな」話し始めたのだ


「世の中ってのは思っている程の最悪は起きないよ。」と兄は答えた。

当時の私は訊ねたくせに良く分からなかった


半開きの網戸だから虫が入らないように

蚊取り線香を焚いている

それでも狭い隙間から入り込んでくる虫に理由を考えた

でも答えなんて分からないし

虫の知らせでもなかった


あの時とは違く少しばかり違く

物事を理解できるようになった

兄の言葉だって分かるようになった

外国語も軽い挨拶やジェスチャー交じりでも

通じ合わす事が出来る様になった

そして等身大のような未来を見なくなり

今を見る様になった


テレビがニュースで今を放送している

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る