DIVE

ある日、空き地に僕は穴を掘る。

底に僕は潜り込んで、自ら世界を狭めた。

空を見上げて思うのは、この辺では僕だけが違う空を見ている。」

優越感にも似た虚しい気持ちに包まれていった。

久しぶりの雨に体を洗っていると

近所の子供がロープを垂らしていた。

僕は知らぬ間に行方不明になっていたらしくて

今此処で見つかったんだそうだ。

僕はそれを遠い目で見ていた。

外が騒がしくて、聞いてられなくて

声もロープも光も届かない底へと更に僕は埋まった。

一眠りして起きたら何だかまた空を見たくなって

時間を掛けて外に出ると蝶なんかになってなくて

幼虫のまま汚いままの僕の顔が水溜りに写る。

今じゃ穴の方がすっかり広くなってしまっていた。

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