毒林檎

「夢を見たくないか?この世の終わりが来るまで。」

お伽話で聞いた事の有る様な台詞を口にする老婆

「口付さえすれば目を覚ますのだから」

何故そこまでして食べさせたい


それから暫くして

どうやら一目惚れをしてしまった

彼女はこの坂に住まいがあるようで

その上の果物屋からの帰りだった

茶色の紙袋にいっぱいの林檎を入れて

飛び出すように転んだ


沢山の林檎が転がる

ふと老婆の言葉が浮かぶ

気にせずリンゴを集める

「ありがとうございます。よろしかったら…」

袋の中に残っていた林檎をくれた

ありがたく頂こう

けど食べない


彼女は老婆だった

飼い犬に食べさせたら

眠りについた

彼女は老婆だ

けど彼女に会いたい

純粋な彼女に会いたい

僕は林檎を口にした

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