2度目の人生ならキミを守れるだろうか?
抹茶風味
第1部 隣にあった日々
第1話 僕の友達
周囲の喧騒すら耳に入らず、緊張した面持ちで廊下に張られた掲示を見つめる。
「手ごたえはあったんだ・・・こんどこそっ!!」
第一学期 期末試験結果
1位、
2位、
・
・
・
「今回も2位か・・・」
ギリっ!!と歯を食いしばる。何度経験しても敗北の苦みには慣れることがない。
「よ、鏡也。今回も俺の勝ちだな」
後ろから不意に肩を抱かれる。今一番合いたくないやつだった。
「大地・・・やっぱおまえすごいわ。次こそ勝つけどな。」
「言ってろ。次も俺が勝つ」
くかか、と笑うスポーツ刈りの僕よりでかい男は日向 大地。
中学からの付き合いでスポーツ万能、頭脳明晰で常に僕の一歩先を行く。
僕、水野 鏡也は小学生のころは常に何でも一番だった。
中学でこいつと出会い、初めて負け、自分が天狗だったことを知った。
負けず嫌いだった僕は宣戦布告をしに行き、そのあとなんやかんやで仲良くなって親友兼ライバルとしてこうして今でもしのぎを削っている。一度も勝ったことはないが。
腕を振り払い、その勢いで指をつきつけた。
「次は夏休み明けのテストだな!次こそ俺が勝つ!」
僕のほうが身長が低いのがカッコつかないが、それは置いておく。
ニヤリと笑ってやつは言う。
「いいね、受けて立つ!それでこそライバルってもんだぜ!まあ今んとこ俺の全勝だがな」
無言で肩パンを食らわせてやった。
教室に入ると奥から声がかかった。
「鏡也、大地、あんたらなに入り口で騒いでるのよ」
声をかけてきたのは肩までのびる薄い茶色の緩くウェーブがかかった髪と好奇心旺盛な茶色い瞳が印象的な女の子、
「英梨、いや鏡也のやつが懲りずに宣戦布告なんかしてくるもんだからつい盛り上がっちゃってさ」
「そういえばあなた達また1位2位だったわね。おめでとう。」
英梨が意味ありげな目線をこちらに向ける。
いたたまれずに視線をそらしていると大地が答える。
「サンキュー。今回も俺の勝ちってことで今日の昼飯のジュースは鏡也のおごりな。」
「それいいわね。私の分もよろしく。」
間違いなく今僕はとても嫌そうな顔をしている。
「わかったよ…ただし何を買ってきても文句言うなよ」
「そんなこと言っても鏡也は変なもの買ってこないでしょ。大地じゃないんだから」
英梨はクスクス笑いながら僕に優しそうな視線を向ける。
「っ!?」
不意に鼓動が跳ね上がりとっさに視線をそらす・・・。
僕今赤くなってないよな?
「いつ俺が変なもの買ってきたって?」
「ちょっ!?まっっ!!やめっ!!見てないで鏡也も止めてよ!
これ地味に痛いんだから!!」
大地が英梨のこめかみをグリグリと締め上げるさまを横目に見つつ、鼓動を落ち着かせていた僕は、そろそろ大丈夫そうだと判断し止めに入ることにした。
「大地・・・その辺にしとけよ~。お前が新商品につられて度々変なものを買ってくるのは・・・事実だ。こないだ水筒に詰めてきたぶどうの麦茶、あれはひどかった。。。」
「そうよっ!!いい加減おもしろそう!って買ってきて私たちまで毒見に突き合わせるのはやめなさい!」
ガタッと音を立てて席を立ち、少し涙目になった彼女が大地を振り払い、僕の後ろに隠れる。
やめてっ!?急に近寄られてバクバクしている心臓を必死に抑える。
「わーったよ。姫様が騎士に助けを求めちゃ敵わねぇ。次回は黙って食わせてやるよ」
大地がおどけた様子で肩をすくめる。
姫と騎士か・・・
苦笑いを浮かべていたら横から負のオーラが吹き出してくる・・・
「次ッ!私のことを姫って呼んだら・・・蹴飛ばすわよ!」
英梨の周囲には黒い靄が可視化されてる。大地は定期的にこの地雷をわざと踏むのだ。
「昨年の坂江高校ミスコンを一年生にして制し、姫!とか天使!とか呼ばれてるのはそちらにおわします伊佐木 英梨さんじゃないですかぁ~」
ニヤつく大地に対し一瞬で沸騰した彼女は無言で蹴りを放つ。
「いっっっっ!!!!!!」
脛を抱えてうずくまる大地に対し英梨は冷たく言い放つ。
「警告はしたわよ。」
まったく。小さいころからすぐカッとなるところは変わらないな。
とても美人になったのに。
僕が横にいることに気後れするくらいに。
「そこまで!大地あんまりからかうなよ~。すねると長いぞー。」
「鏡也・・・?あんたも同じ目に遭いたいのかしら?」
にっこりと笑う顔はかわいらしいがたまったものではない。
彼女のつま先は的確に脛を抉ってくるのだ・・・
首を横に振りながら大地に手を貸してやる。
「ほれ、さっさと謝っとけ。」
渋い顔をしながら大地が口を開く。
「イテテ・・・蹴られたの俺なんだけど、、、ふざけすぎたよ、悪いな。」
英梨も渋面を作りながらうなずく。
「ちょっと強く蹴りすぎたわ。ごめんなさい。」
満足げにうなずく僕を見て二人の頬がゆるむ。
「ところで・・・二人とも今夜はどうするの?予定は開けておいてくれたのかしら・・・」
「もちろん。祭りのことでしょ?英梨の晴れ舞台だもの、見逃すわけないでしょ!?」
と僕。幼馴染の彼女は近所にある由緒正しい神社の跡継ぎで巫女さんである。
「すまん。ちょっと部活のほうに顔出さないといけないからギリギリになるわ。必ず行くから心配しないでくれ!」
「大地は剣道部のエースだからね。練習をさぼれないのはしかたないよ」
頭だけでなく運動神経もいい彼は一年生でレギュラーを獲得し、全国大会でもいいところまで勝ち進んでいた。
大地は僕のほうに悩ましそうな視線を向けて
「鏡也もなにか部活入ればよかったのによ。。。今からでも遅くないから剣道部一緒に入ろうぜ!お前ならすぐレギュラーに
「やめろ!!!! やめてくれ、僕は大地ほど運動神経がよくないんだ、、、今から入っても迷惑になるだけだよ。。。それに僕は勉強だけで手いっぱいさ」
自嘲気味につぶやく僕に一瞬なにかを堪えるようにしてから彼は破顔して僕の肩をバンバン叩く。スキンシップの多いやつだ。
「まあいい。その気になったらいつでも言えよ?俺が全部叩き込んでやるからな!!
とりあえず夜は俺は後から合流だ。場所取りよろしくな?」
一連のやり取りを複雑な表情で見守っていた英梨が口をはさむ。
「そ?それなら鏡也は私と一緒に帰りましょ?穴場スポットに案内するわ。後で大地にも教えてあげて」
穴場スポット?何か所か過去に彼女と巫女舞を眺めた場所を思い浮かべるが他にもあるのだろうか?
首をひねりつつ、彼女と帰れるのは素直にうれしい。彼女も所属するコーラス部の活動があって最近は一緒に帰れることも少なくなってきたのだ。
「・・・いいよ。打ち上げとかの話は帰りにしよっか!大地には連絡入れるよ。」
解散!!と手を振って席に戻る。
忘れんなよ~と投げられた大地の声に適当に返事をしつつ、僕の意識は帰り道でどんな話をしようかなと英梨のことで占められていった。
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