第13話 オーブを集める
嫌やいうたやん。
嫌やいうたやん。
うちはめっちゃブルーになった。なんでそんなブルーかていうと、魔法使いから戦士に転職させられた。息子さんが言うには加撃呪文さえとったらあと魔法使いで習得できる呪文には大したもんはないらしい。それから魔法使いはどうしても体力が低いからラスボスのめっちゃ強い攻撃に耐えられへんくて、これ以上魔法使いのままでうちを連れていくんはマイナスしかないんやそうや。おまけに盗賊さんが賢者になったからだいたいの魔法使いの役割は賢者さんが代用できて、魔法使いのままやったらうちは完全にいらん子らしい。かなしい。
うちやっぱついてきたん間違ってたような気ぃする。
もっと魔法使いやってたかった。
すごい呪文使ってドヤ顔してたかった。
戦士さんが「お揃いやね」て慰めてくれた。
余計なお世話やったけど、気ぃ使ってくれたことは嬉しかった。
うちらは船に乗って東のほうへ向かう。
すると海賊の隠れ家があった。息子さんはえらい手慣れた様子で建物の東側の隠し倉庫に入ってそこから赤いオーブを盗み出す。
あんまり簡単に隠し倉庫を見つけたから、うちはピンときた。
息子さんはきっと以前にここの海賊団に所属してたんやろう。
それから今度は西の方に向かって、エアーズロック言う場所まで行く。
エアーズロックは勇気が試される試練の場所で、一人しか奥まで行かれへんらしい。
「“い”、いけ」
勇者さんが言うて、賢者さんを一人で送り出す。
うちと戦士さんと息子さんは珍しく暇になる。
「ここにはなにがあるんですか?」
「オーブ」
さっきの赤いやつと同じようなもんやろか。
「オーブ? 首長国連邦?」
「あんなに一緒だったのに?」
「盗賊さんはもう違う場所やね」
「言葉一つ届けへんなぁ」
「大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だろ。あそこ敵弱いから」
息子さんはなんでも知ってるなぁ。
「これからはどうするんです?」
「オーブ集める」
「ありふれた優しさは君を遠ざけるだけなんですか?」
息子さんはうんざりした顔で舌打ちした。
天丼はお気に召さへんかったらしい。
「全部で六個ある。それを祭壇に捧げてラ・ルミアを復活させる」
「ルミアを?」
ルミア言うんは、この世界を守ってくれてる精霊さんの名前や。「魔王」に負けて世界のどっかで石にされてしもたらしい。だからうちらの世界には、いま精霊の加護が失われて、魔物がはびこっとる。
けどルミアさんは、石になる寸前に自分の肉体と魂を幾つかに分けて、魔物に立ち向かうための武器として残してくれたんやそうや。
例えば、
サ・ルミアは、魔を射竦めるあなたの眼(まなこ)――閃光の玉。
タ・ルミアは闇を引き裂くあなたの腕(かいな)――勇者の剣。
ナ・ルミアは世界支えるあなたの背骨——螺命の聖樹。
そして「ラ・ルミア」は大空を駆けるあなたの翼――虹の不死鳥のことや。
魔王倒すには散ったしもうたルミアの力を集める必要があるて、息子さんは言う。
どうでもええけど、うちは息子さんが「魔王を倒す」いう目的意識をちゃんと持って旅してたことにちょっとびっくりした。だってほんまにうちら、いままで盗みしかしてこーへんかったから。
「全部、全部必要なことなんですね?」
うちは訊く。
「ああ、“無駄なこと(タイムロス)”なんざしねーよ」
息子さんは言う。
うちは頷く。
これからどんな残虐非道な真似をしても、“これは魔王を倒すためなんや”て唱えて誤魔化そ思う。
賢者さんが青いオーブと大陸の鎧いうアイテムを盗って戻ってきた。
「いくぞ」
息子さんがキメイラの翼を使う。
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