勇者がはやすぎる
月島真昼
第1話 RTAは遊びやない
うち、故郷で魔法の基礎だけ覚えてきて、ついに都会出てきて酒場で登録した。ここはうちと一緒に冒険したい仲間おったら、人を紹介してくれるらしい。うちレベル1やし初級火炎呪文しか使われへんけど、才能だけはあるから誰かうちと組みたい人がそのうち来るやろ。まったりまっとこ。
なんかこの街に昔オルレガさんいうごっつうつよいおっちゃんがおったらしい。おっちゃんは魔王倒すために出かけたそうや。えらい人やな。今日はその息子さんが旅に出る日なんやって。うちにもお呼びかかるかな? ちょっとドキドキする。
息子さんが酒場きた。二階上がってなんかやってる。戦士と盗賊、それから魔法使い探してるらしい。うちも呼ばれたから言ってみたら「“か”か?」って聞かれた。息子さんなんかめっちゃ顔恐い。剣幕強い。圧ある。やめてほしい。ビビッて頷いてしもたら今度は変な種を五個も口に突っ込まれた。なにこれ、めっちゃ苦い。しんどい。「“鉄人”か?」ちゃう言いたかったのに口動けへん。この人、こんなに可憐なうちのどこみたら鉄人やと思うんやろ。
なんか納得いったみたいで、うち、息子さんについていくことなった。
波乱の予感しかせん。
泣きそう。
自己紹介することになった。
「“あ”」
息子さん歩きながらめっちゃイライラした調子で言う。
「“も”です。よろしくお願いします」
戦士さん顔恐いけど物腰やわらかい。いい人そう。
「“い”だ」
盗賊さん、あんまりしゃべらへん。つまらん。
うち、自分のちゃんとした名前言おうとしたら「テキストの無駄だから喋るな」言われた。こわい。なんなん。
「RTA(リアルタイムアタック)は遊びじゃねえんだよ」
ときどき息子さんの言うてることわかれへん。
息子さんは王様からもろたこんぼうとか服とか装備品を盗賊さんと戦士さんに配る。
うちにはなんもくれへん。
「あの、うちは」
無視された。
こわい。
帰りたい。
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