第22話 デューク、調査団に同行する(後編その2)
メタの変化は既に始まっていた。休憩を取ってからメタは御愛用の鞄の中に入り込みジッとしていた。64階に差し掛かった時にミレーヌが異変に気が付いた。
「ねぇ、メタちゃんから魔素が噴き出してるみたいなんだけど…」
「えっ?ホントですか?そう言えば大人しいな…」
デュークはメタの様子を見るとメタの体中にひび割れが入っている!!
「メタ!?どうしたの??」
するとメタはそのまま鞄から出て来てプルプルと全身を震わせると突然ひび割れが弾けて破片が飛び出す!すると中から青白い光が輝き出し目が眩む!光が治まると其処に居たのは青白い色をしたメタである。
【ミスリルメタルスライム(希少種)】に進化しました。
スキル上限が三倍になりました。
ファイヤーブレス獲得。
《エクストラスキル魔槍変形》を獲得しました。
《スキル超弾性変形》が
《スキル狩人の眼》と《スキル野生の勘》が統合され《ユニークスキル深淵の魔眼》を獲得しました。
《スキル魔法防御》が
「オイオイ!メタ公が進化しちまったぞ!」
「あら!色が変わったのね!可愛い!」
ナガトは驚き、ラフレシアはメタの色合いが気に入ったらしい。
「この色は…ミスリルか?…あっ、そう言えばミスリルの結晶食ってたよな?」
メノスはミスリルゴーレムの部屋でメタがミスリルの結晶を吸収してたのを思い出していた。
「何かもう他の事で驚くのが馬鹿馬鹿しく感じる程のレア度だな…いや、マジで…」
グレードマンもこの進化には驚きを隠せない。
「こりゃまた硬くなったんじゃないか?」
ジーザーは流石に防御力が気になるようだ。
「新しいスキルやスキル進化が沢山起こりましたね…内容がイマイチですけど…」
デュークは鑑定持ちでは無いのでスキルの効果まではハッキリと分からない。ただ漠然と分かるだけである。
「メタ!魔槍!」
デュークが叫ぶとメタの身体が槍状に変化した。その「硬さ」を攻撃力に活かす為に形状変化を獲得した様だ。
「コレなら硬い敵にも通用しそうだなぁ~。メタ、戻って」
メタは通常形態に戻る。
「メタのメタモルフォーゼってか…」
とナガトが全員を凍らせていた。
メタのファイヤーブレスが昆虫類によく効くのでラフレシアはご満悦だった。わざわざ頭の上に乗せて火を吹かせまくる。昆虫類は流石に寄って来ない。
「フハハハ!!虫どもがゴミの様だ!!」
ラフレシアはここぞとばかりにキライな虫どもを攻撃させる。他の皆はそれを見て呆れていた…
そして70階のフロアボスの部屋に到着である。
「恐らくは此処が中層最後のフロアボスだな。って事は皆んな分かってるよな?」
グレードマンが全員に語りかけた。
「何が出て来ても冷静にな…行くぞ!!」
扉を開けると物凄い魔力と覇気が全員に伝わる。間違いなく今までの魔獣とはレベルが違う。其処に居たのはタイラントドラゴン(上位種)であった。タイラントドラゴンは全てのステータスがダントツに高く、力の無い冒険者は見ただけで死を直感する魔獣である。
『黄昏旅団』のメンバーも迷宮では何度か戦ってはいるが、あくまでも『黄昏旅団』フルメンバーの時だけである。
(くっ…まさかのタイラントかよ…最低でも2枚は足りないか…)
グレードマンだけで無く『黄昏旅団』メンバーが直ぐに頭に浮かぶ最悪の状況である。
ジーザーはヘイトを掛けて完全防御態勢スキルイージスも最初から使って行く。メノスはジーザーのフォローのみに集中する。支援魔法やスキルは全部掛けてバックアップだ。この二人が抜かれたらパーティーは全滅なのを良く理解している。
ラフレシアは支援魔法を使いながら前の二人の回復。グレードマンとナガトとミレーヌは攻撃に集中する。
タイラントドラゴンはブレスからの尻尾を振り抜く。ジーザーはガッチリブロックしているがかなり無理はしている。
三人の攻撃に合わせながらメタの攻撃も加えている。デュークはミレーヌとラフレシアの専属ブロッカーで動いている。ジーザーとメノスのブロックの穴を埋めるように動き回っている。
グレードマンとナガトとメタは微量ではあるがタイラントの体力を削り続けている。時々クリティカルが入り少し大き目にダメージは入る。タイラントは意外と速さも持っているので攻撃を喰らわない様、慎重に攻撃も行わなければならない。焦りは禁物である。
そしてメタは攻撃も加えながら二人への攻撃を逸らす動きもしていた。牙や爪、尻尾の攻撃に体当たりをしながら軌道を逸しているのである。
ミレーヌは支援魔法を掛けながら攻撃魔法をやはり軌道を逸すように二人のカバーだ。魔法の耐性も強いタイラントには攻撃も中々通用しない。二人がタイラントの額に攻撃を集中してダメージが広がれば、極大の攻撃魔法をそこにぶち込むのだ。
一進一退の攻防が長く続いている。根負けしないで辛抱強く守りながら削り続けるのが今のパーティーでは勝つ為の一番の方法である。コレだけの攻撃を長く浴びせなからグレードマンとナガトの速さは更に上がっていく。《スキル修羅の円舞》に依るものである。このスキルはノーダメージが続いている間はスピード限界を突破し加速し続けるという効果のスキルだ。その為に戦闘時間が長くなればなるほど相手は攻撃を更に当てられなくなるのだ。
その二人にメタはスピードで付いて来ていた。と言うよりも余裕が有った。メタの素早さは現在3,257PTであるが《スキル瞬歩》により戦闘中は5倍なので16,285PTまで上昇、更にデュークの《エクストラスキル神速》の効果により2倍の速さを得るので32,570PTまで上昇するのである。グレードマンの素早さは24,690PT、ナガトの素早さは19,734PTでそれぞれ《スキル修羅の円舞》の補正が掛かってもまだメタの速さには及ばないのである。
そして遂にタイラントの額に大きな傷が付いた。ナガトのクリティカルである。この瞬間をデュークは見逃さない!
「メタ!!魔炎魔槍!!」
瞬間、槍状のメタが額の傷に突き刺さる!!タイラントは激しい痛みに暴れている!まだ浅いのだ。
「ミレーヌさん!メタに向かってデカい魔法を!!」
ミレーヌは一瞬大丈夫かとの思いが過ぎったがデュークの自信有り気な頷きに躊躇無く極大魔法を使う。
「喰らえ!雷極大魔法雷神の斧!!!」
メタに向かってミレーヌ渾身の一撃が入るとメタを通り抜けた雷撃がタイラントの頭蓋に直撃しタイラントの脳が破壊された。そしてタイラントドラゴンはその場に倒れたのである。
「ヨッシャア!!やったぜ!」
ナガトが大声で叫ぶ。
メタは槍状から元の姿に戻りデュークの側にやってくる。すると隣に居たミレーヌがメタにこう言った。
「メタちゃん!凄い!アタシの魔法と相性バッチリね!アタシの使役魔獣にならない??」
『う~ん。メタはあるじのものなの…』
いきなり心の中に声が聞こえて皆が凍りつく!!
『あるじ~おなかすいた、ませきたべたいの』
「め、メタ…喋れてるね…」
『あ~ほんとだ!やったあ!』
メタは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねている。
タイラントを倒した瞬間にメタはスキルを獲得していたのである。
《ユニークスキル魔伝通話》を獲得しました。
『あのねメタね、ずーっとあるじとおしゃべりしたかったの』
メタのデュークと喋りたいという意志とミスリルが魔法を通しやすい素材である事もスキル獲得の要因なのだろう。
デュークは早速鞄の中の魔石をメタに与えた後でタイラントを【キューブ】に収納する。
「メタには驚かされっ放しだ。まさか喋るとか…魔獣が喋るって聞いた事ないが…」
「たまに居るけど…ゴースト系でさ…」
ジーザーはメノスと話している。
「さて、タイラントが出た訳だから間違いなく此処から下が下層になるのは間違い無い。とりあえず此処で戻るか下を調査するか決めよう」
とグレードマンが皆に意見を乞う。すると魔石を食べ終えたメタがグレードマンにこう言ったのだ。
『あのね、したのおへやはここよりひろくないの』
「えっ!!メタは下の階の様子が分かるの??」
『あるじはメタにさわるとみれるの』
デュークはメタを触ってみる。するとダンジョンの画像が飛び込んで来た!《ユニークスキル深淵の魔眼》の下階探知能力である。
デュークはその画像を地図にして描きながら…
「徘徊している魔獣はダークサラマンダーとレッドドラゴンです。ココとココに罠が有って宝箱は…」
とグレードマンに説明した。グレードマンはハイスティールの上位クラスのグランドスティールが使うスキルに似ていると判断。
透明結界を使いナガトと二人で隠密行動をして調査をして来る事にした。
他のメンバーはこのフロアボスの部屋で待つ事にした。フロアボスは部屋から出て半日しないと復活しないし部屋に倒した者達がいる間は何日あっても復活出来ないからだ。
待ってる間、二人の心配をしているラフレシアにメタがこう言ったのだ。
『メタがみててあげるの。あるじ~』
デュークがメタに触ると探知のイメージが出て来た。
「あーコレがグレードマンさんとナガトさんかあ。二人は左右に別れて調査してますね~。魔獣は全然気付いてないですよ!直ぐ隣を歩いてるのに…凄いなぁ〜流石だなあ!!」
デュークの言葉にホッとしたメンバー達であったが、ジーザーはデュークとメタのこのスキルに舌を巻いていた…
(オイオイ…リーダー達は隠密行動取っているのにそれごと探知してるって事なのだぞ…信じられん…どんだけチートなんだ…)
3時間程で隠密行動から帰って来たグレードマンとナガトはマップの調査を終えていた。
「確かにデュークの描いたマップ通りの内容だった。フロアボスは確認出来ないがヤバそうな匂いしかしねぇ。他はキッチリ調べられた。短時間で出来たのはデュークとメタのお陰だな」
「そうそう。罠や宝箱の位置も数もバッチリだったぜ!お宝もチョイとゲットだ」
グレードマンもナガトも感心しきりだ。
『メタがやくにたったの?』
「おう!メタ公エライぜ!!大したんだ!!」
ナガトがメタを褒めるとメタは嬉しそうにナガトの肩で跳ねていた。
(こりゃスゲえルーキーが出て来たな…こんな怪物を推薦してくるとは…流石はゼノの旦那だぜ。ウチの専属にスカウトするか…イヤイヤ流石に『白猫』と事を構えたくねぇしな…とりあえず次の調査は必ずまた連れて行こう…)
グレードマンは心の中で次の調査でもデュークを連れて行こうと決めていた。
「さあ、帰るぜ!!仕度しな!!」
そして全員、ダンジョン【ディスティニー】から無事に帰還したのである。
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