山百合会の秘密
平 一
山百合会の秘密
(2007年頃に出したファンレターです)
「『リリアンかわら版』第4号は百合です! カーミラですっ(嬉涙)!
(以下、妄想の一人語り)
『祐巳……あなたは転化して間もないから、日光には気をつけて』
『もう大丈夫です。最初はカーテンの隙間からこぼれた光でもひどい日焼けのようになったけど、今はもう全然平気。お姉様のお血筋のおかげです』
『……可愛い、フランス人の女の子だったのよ。名前はジュヌヴィエーヴといっていたわ(ⓒキム・ニューマン)。でも本当は数百年も生きてきたんですって……さあ、お食事の時間よ。昨日は秋葉原というところで、オタクとかいう、空想物語マニアの人達からいただいてきたの。どちらかというと
『ああ……(アニメ『BLOOD+』でディーヴァに吸われるネイサンや、コミック『まじぼか』でパキラに吸われるりるのように恍惚として)赤ん坊にお乳を与える母親の気持ちって、こんなかしらね。でも祐巳、前歯をみんな牙に変えるのは、お行儀が悪いわね。犬歯だけなら頬が赤らむだけですむけど、全部使うと花粉症のお猿さんのように、顔も眼も真っ赤になってしまってよ』
『ご、ご免なさい……(泣)』
『いいのよ。そのかわり、私にもお返しをちょうだい』
『ああ……』
『……ほら、これで元に戻ったわ。けれど瞳は赤いままね。食事のときにはコンタクトを忘れないようにね。でもルビーみたいでとっても綺麗よ』
『それもお姉様と一緒です』」
「女吸血鬼が互いの血を啜り合う話にするな~っ(泣)!」(笑)「でも、この世界もなかなか奥が深いんですよ。『月詠』『トリ・ブラ』『BLOOD+』……作品数も多いでしょう? 今だって、『ネギま』のエヴァちゃんが活躍しています」「『ネギま』は、芸術的な構図や色彩が素晴らしいね。レンタル店に入荷したOVAは、最高のお年玉でした……(嬉)」
「『ネギま』はTVでもみんなが活躍できるといいね。変身はエネルギーを使うという設定からは、料理が得意な五月ちゃんが腕をふるえそうだし、運動部系の人達も絵になりそうだ。真名ちゃんも、魔法の力を借りれば『Hellsing』の中尉に先がけて、『魔弾の射手』ぶりを披露できるかもしれない」
「さよちゃんだって、TV『美夕』の終幕で傷ついた美夕が行った反撃ぐらいのことはできるかもしれないぞ。『ネギま』では、あんなに陰惨じゃなくてもいいけど」「『私はまだあの世に行けないの。私を生んだこの世の不幸がある限り』とか」「社会派なのか!?……しかも幽霊なのに強っ!」(笑)「そういえば、美夕の台詞にもある。『私は死んでいるから、生きているんだね……』」「ぴったりだあ(嬉涙)!」(笑)
「ザジの正体も興味あるよね」「『私の本名はアザゼル。
「でも、吸血鬼は血を吸うからなあ」「保存期限切れの輸血用血液を入手していることにする。それに、他の部分では通常人よりも優れているところがあるわけだから、科学的な手段によって、皆が吸血の必要なくその恩恵だけを受けられるようになれば、むしろ人類の画期的な健康水準の向上に寄与できるかもしれない。そうした技術につき、小笠原家の財力を生かして研究していることにすればいい」
(以下、再び一人語り)
「(明かりを消したホテルのベッドで、すやすや眠る男を前にして)
『離乳食の練習よ』
『ええっ? 今度は血液パックじゃなくて生身の人間……離乳食っていうより非常食ですね』(笑)
『そうね。万一のときには、自分で調達しなければならないこともあるわ。援助交際目当ての馬鹿な男を誘い込んで、昏睡強盗の手口で眠らせるの。なるべく跡が残らないようにいただいてから、物は盗らずに〝危ない遊びはやめなさい〟という書置きでも残しておけば、警察沙汰にはできないでしょう。私も最初は嫌でたまらなかったのだけれど、じきに慣れたわ。今夜は由乃ちゃんと志摩子ちゃんも呼んであるから……』
『(男が目覚める)う……あれっ、一体どうしたんだ? (暗い室内で、眼だけが爛々と真紅に輝く2つの人影を前にして)ひええっ!』
『大変! 薬が効かなかったのかしら』
『ごきげんよう、ロサ・キネンシス』
『お招き有難うございます』
(戸口の方向から声がしたので振り向く男。
利発で快活でお茶目で、すこしお転婆そうな声がしたのは、清楚な三つ編みでセーラー服姿の少女の影。
年に似合わず穏やかで落ちついた、そしてこんな状況下では恐ろしいほど優しい声がしたのは、美しく波うつ髪が印象的で、優雅に小首を傾げた、おとなしそうな少女の影。
しかし2つの影の中には、やはり夜行性の肉食獣のように輝く二対の瞳が、それぞれ黄金色と銀白色に光を放っていた)
『うわあああっ!』
『みんな急いで! いますぐいただいて静かにさせましょう。後のことは私が何とかするから』
『お、お姉様!』
『あら、何だか面白そう!』
『もう、由乃さんってば……それじゃあ、えいっ!』
『むむ……(背後から左首筋を祥子、前から右首筋を祐巳、抑えられた両手首を由乃と志摩子に吸われた男は気を失うが、窓の外で雲に隠れていた満月が姿を現すや、ぱっちりと目を開き、さらにはみるまに毛むくじゃらの獣人のような姿に変身する)』
『きゃあ!』『何これ!?』『あらあら』
『まあ……お仲間だったのね。 狼男が本当にいたなんて』
『肉、肉!……血が足りない……』
(〝カリオストロの城〟のルパンよろしく苦しむ男に、4人は何とか大量の生肉を調達して、意識を取り戻させる)
『これは失礼……僕はご覧の通りの体質なので、近所で探偵業を営んでいたのですが、近頃妙な事件があるというので調べておりまして』
『やっぱり、悪いことはできないものね』
『まさか、こんなに可愛いお嬢様方が集まって、こんなことをされていたとは……』
(4人が事情を説明すると)『……まあお互いこの現象はまだ公にはできませんし、生活上また守秘のためやむをえぬ部分もありましょう。ところで、私はこの体のせいで食費がかかる。貴女達は安全な供血者がほしい。そこで取引とはいかないでしょうか? 貴女達はもちろんすでに御存知かもしれませんが、吸血されるというのは私にとってもそう悪い感覚ではないというか、むしろその……』
『うえっ!』
『私達は別に、必ずしも必要というわけでは……」
『お姉様?』
『まあ、いざという時のために口がかたい協力者もいたほうが安心だし、研究にも役立つかもしれないわ。新鮮な血液が好きな人に、心当たりがなくもないし(祥子の脳裏に、広い額が愛らしく、変わった相手を見つけると周囲のものも見えず夢中になる、卒業生の姿が思い浮かぶ)。変な気さえ起こさなければ、狼男さんとも気が合うかもしれないわね(笑)』」
「……かくして、他の物語において不倶戴天の敵同志とされたこともある吸血鬼と狼男は、ここ極東の島国において、人類の未来のためにも有意義な協力関係を築くことに成功したのであった~(喜)!」
「紅薔薇・黄薔薇・白薔薇の意味って、そういうことだったのか……って、だから勝手に妖怪
山百合会の秘密 平 一 @tairahajime
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
文明のヒミツ!/平 一
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 6話
文明のひみつ/平 一
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 4話
AI文明論/平 一
★6 エッセイ・ノンフィクション 完結済 6話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます