泥水

 知り合いがCDを出していた。

 プロではないが、人気はある。一定のファンが付き、持て囃され、笑っている。奴は望んでいた姿となり事で金を稼いでいる。今まで描いてきた夢を現実にし、人生の春を感じている。


 胸に、言いようのない嫌悪が渦巻く。嫉妬、或いは羨望の気持ちが強く浮かぶ。


 俺は奴が一曲書き上げるまでにどれだけの言葉を覚えた。奴が歌を吹き込む間にどれだけの表現を生んだ。微々たるものだ。俺は何もできない。惨めだ。ただただ惨めだ。


 俺は何をしているのだろう。滅入る。死にたい。

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