賞味期限

 年越し目前に明日も仕事かとため息を吐く。

 この一年で少しばかり蓄えはできたがまだまだ憂慮は消えない。不安定な生活と命を維持する金のなさと、年末年始も盆も休まずに働かなくてはならない現状が苦しい。

 覚悟していたのにも関わらず、自身の無能に起因する事象であるのを分かっていながらどうして嘆くのか。恥ずかしい話だが、疲れてしまったのだ。何もかもがつらい。酒を飲むのも苦痛を伴う。


 日々書いている小説。これもそうだ。俺は何をやっているのかと。その時間を資格の勉強にでも用いればまだ未来が明るくなるだろうと思っているのに、書かずにはいられない。これが辛い。もう辞めたいと思うも、すぐに書きたい。書かなければという気持ちになる。金にもならない馬鹿の妄想にどれだけの価値があるのか。考えるだけで心臓が縮み吐きそうになる。それでも俺は、書く事を辞められない。


 来年こそは正社員になりたい。金をもらって、ちゃんと休めて、安定した生活を、将来を手に入れたい。


だが、その代償に筆を折るとしたら……


 ただただ無力。

 俺はもう賞味期限が切れている。腐っていながら、処分はまだ……

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