就労
転職サイトを見ると死に損ねた時の事を思い出す。
学生時分の就職活動の際、確か60社ばかり受け、いずれも落ちた。己の非常識かつ無能に起因する結果であったが、心底悲しみ、落ちていった。これは恐らく面接で不合格を言い渡された者が等しく抱く思いであろうが、自分が無価値で必要とされない、生きるに値しない人間であるように感じられるのだ。そしてとうとう卒業までに職を得られなかった俺は首を括ったが、縄を括り付けていた支柱が折れ、幸か不幸か生き延びてしまった。
あれから10年が経ち、再び同じ苦痛が、心臓が絞られるような、重力が何倍もかかっているような感覚に陥っている。仕事がないのだ。俺を受け入れてくれる場所がまったくの無であるのだ。
今の仕事は辛い。安い金で、どうしても無理をしてしまう。それは俺が無能だからでもあるし性分でもある。やらなければ、役に立たなければ焦り、疲弊する。
職が変わって好転するとも限らないが、少なくとも変化は望めるであろうと求人を見る。しかしないのだ。俺を雇い入れてくれる会社が。
そんな中でも何社か面接を受けたが駄目だった。受付のゴミを見るような目が、未だに俺を惨めにさせる。
辞めたい。金がほしい。休みがほしい。楽になりたい。そんな思いが腹に居座り、喉を縮めて息苦しい。
死にたい。
そう考える。
自分は社会不適合社であるから、死ななければ生涯辛苦に溺れると、そんな風に考えてしまう。
最近、有名な俳優が首を吊った。
俺より遥かに優れた人間が自殺した。
俺は死なないのか。何故。どうして。
考えると恐怖で竦む。しかし、それは、生きていても……
俺は死なないのか。何故、どうして。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます