朝日と街と地平線

360words (あいだ れい)

第1話

 長い夢を見ていた。

 いや、見ていた気になっていたのかもしれない。


 頭が痛い。

 寝返りを打って、時計を見る。

 短い針は3を少し過ぎたくらいだった。

 身体を起こし、枕元に置いておいたメガネを手に取り、着ける。

 ぐにゃぐにゃしていた視界がだんだんと真っすぐになって行く。

 あぁ、頭痛ぇ。


 気が付いてから30分ほど経って、やっと、立ち上がる。

 部屋の電気を付けると、やっと部屋が明るくなる。

「ぅ……」

 まぶしくて、うめき声が漏れる。

 ブルーライトの見すぎか、明るい光に目が弱くなった。

 スマホをローテーブルの上から持ち上げ、ロック画面に表示された時計と日付けを確認する。

 1月13日。

 よかった。

 今日はまともなようだ。


 冷蔵庫の中から冷凍ご飯を取り出して、レンジに入れる。

 温めること2分。

 ホカホカごはんのできあがりだ。

 ラップを外して、ごはんを取り出し、お茶碗の中によそう。


 温めている間に冷蔵庫から取り出したたくあんを白米の上にのせて、完成。

 朝ご飯だ。

 質素かもしれないが、この状況で贅沢を言っていられない。

「いただきます」


 食器を洗い終わったら、歯磨きをして、身支度を始める。

 もうすぐ朝5時。

 パジャマを脱ぎ、下着も脱ぐ。

 それらをまとめて洗濯機の中に入れて、下着を付けて、Tシャツを着る。

 さらにその上から作業着を着る。

 準備完了。


 玄関のドアを、内側から6回ノックする。

「……交代の時間だ」

 ガチャ、とドアが開き、外から人が入ってくる。

「……うい、おやすみ」

「おう、おつかれ」

 短い会話を交わし、交代を行う。


 ドアを出ると、目の前に広がる景色は、見慣れた景色。

 夜空によって、かろうじて向こう側にある、山の輪郭が見える。

 少しすると、空の向こうが、少しだけ明るくなってきただろうか。

 夜明けだ。

 だんだんと地平線から光が差してくるのと同時に、街にも光が当たり、全体が見えるようになる。


 街。

 そこには今、でかい蛙がいる。

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朝日と街と地平線 360words (あいだ れい) @aidarei

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