世界

ひかげ

とある字の中の世界


南に広がる、青々しい昼空。

北に広がる、寒々しい冬空。

西に広がる、赤々しい夕空。

東に広がる、清々しい朝空。

その空の合間合間に、ベールのようにひらひらと揺れる、赤、青、灰、白、黄色のダイヤを散りばめたように光るカーテン。

それはまるで、オーロラのよう。


大地は緑の溢れる山々に、空を写す鏡のような湖。人々の暮らす、街や国。

木には重そうなほど実がなっていて、野原には赤青黄色、白に紫、桃色。色とりどりの花が咲き乱れている。

蝶々がひらひらと舞い、野原を飛ぶ。

白、黄色、青。様々なドレスを纏った蝶々たち。ペアになり、ひらひら、ゆらゆら、ワルツを踊る。

リスもウサギも、恵みを求めて原っぱへ。

人の子も遊びに原っぱへ。

女の子は花かんむりを作り、木の実を使ってままごと遊び。男の子は小枝を杖や剣のように振っては、林の探検。ついでに野原を風のように駆け回り、鬼ごっこ。

ここは春だろか。夏だろか。秋だろか。

冬じゃない?そうとも言い切れない。

小川はちょろちょろと流れ、小さな池を作る。

小魚が泳ぎ、子供達にとっては天然プール。


日が暮れ始めると、キラキラ光るカーテンは、風に揺られてひらりひらりと波を打つ。

届かないほど遠いのに、近くに見える、不思議だな。

夕暮れに染まる街も森も、全てが溶けて消えてしまいそう。

家からは煙が見え、それと一緒にいい匂いがする。子供達は口々に、あーでもないこーでもないと夕飯の当てっこをしている。


そんな、街を溶かしそうな太陽が沈めば夜が来る。星々と月の秘密のお茶会。

ガラスのティーカップとティーポット。カップにお茶を注いで、そこにちょこんと金平糖を入れれば、月に照らされて、夜の青に染まって、夜のお茶の出来上がり。

ついでにお菓子も星型さ。クッキー、マカロン、カップケーキ。

月夜のお茶会は、まだまだ始まったばかり。


月も真上に来る頃は、シーンと静まり返って、月と星だけがおしゃべりする時間。

きらきら、ころころ、ぴかぴか、ぽろぽろ。

みんなでおしゃべり。秘密のおしゃべり。


月が下に来る頃は、白いお日様がやってくる。空は白に黄色、上の方は水色、青色。

星もそろそろ眠い頃。太陽におやすみと言い、ポツポツ消えて寝てしまう。


空が青色染まる頃。みんな起き出す朝の時間。

ご飯を食べて、学校行って、今日は何して遊ぼうか。




_______


これは、とある字の中のおはなし。

誰とも一緒の絵には、想像にはならない世界。

あなたは何を想像した?あなたは何を想像できた?あなたは頭の中に何を思い浮かべた?


それはねきっと、あなたの中にしかない世界。


あなただけの、たった一つの世界。


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世界 ひかげ @0208hina

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