第13話

女子のバレーはひどいものだった。


体育祭なので所属している部活に出ることは禁止されている。そんなことしたら惨敗か楽勝の二択になるのは目に見えている。


それがいい方向に働くのは男子だけだったようで・・・。


サーブを入れるだけで、みんながみんなボールから離れていく。ボールがゴキブリみたいな扱いをされていた。


何人積極的に動いて、ボールを打てるかが鍵だったみたい。


私たちのクラス、二年三組の女子バレーは三年生も含めて、三位!


まぁまぁいい結果だったわね。ボールを取れたのだって私と烏谷ぐらいだったし。


「揺士頑張れー」


ボールを求めて走り回っている合計二十二人の男たち。秋に近づいているとは言っても、炎天下で走り回るサッカー競技は確実に外れ競技だ。


揺士はしっかりとジャンケンで負けてその権利を得ていた。


揺士は存外運動神経はいい。定番の野球や水泳を習い事としてやっていたからだろう。二、三か月持てばいいという飽き性だったけれど。


「うちのクラスは勝ってますか?」


「い~や、0-0。真ん中でわちゃわちゃしてるだけよ」


烏谷は私の隣に顔を出してそのまま座っていく。なんで?と言う言葉は飲み込み二人で汗を流している揺士を見守る。どっか違うところで見てるもんだと思ってたけど、彼女だし!


好きな人が真剣に頑張っているのだから、女の醜い戦いは控えさせていたただきましょう。


「お、抜け出たっ。やるじゃん、揺士」


コートのギリギリを走っていく揺士。人をうまく躱して相手ゴール付近に持ってこれている。


相手もただで走らせるわけでは無く、ゴール前へのコースを消している。そのまま揺士との距離は詰まっていき、体がぶつかり合う。


「あ、負けた」


「惜しかったです。ボールは相手ゴール近くで出たので良いじゃないですか」


体幹の差がもろに出ていた。やっぱり、引きこもりに運動部は重かったみたい。相手もボールを弾き飛ばし、ラインを割ったので結果よかっただろう。


「私たちはそろそろドッチボールの時間です」


「あ、忘れてたわ。ありがと」


まだ見たかったが、揺士たちが勝ち上がればまた見れる。心の中で声援を送りながら体育館に私たちは向かった。


ドッチボールでは楽しそうな声が上がった。


容赦なく弱いものからじわりじわりと当てていく。女子とは思えないほど様になっているフォームからボールは繰り出される。


敵が全滅するまでに三分もいらなかった。


・・・良かったね、三鷹。楽しめたみたいね。


キャキャじゃなくて、キャーだったけどね、響いたのは・・・。


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