第8話
車をすぐ降り、チケットで親たちより先に水族館に向かう。邪魔されたくないし、親たちはお話がメインで歩くのが遅い。
ベージュ色のロングスカートに上は腕が膨らんでる黒い服。
スカートは多くの波ができて流動的できれいに。当然、腰より高めで締めれば足が長く見えるし、締めるベルトを布のベージュにして少し流せば可愛く揺れる。
黒い服は細く見えるし、上からカーディガン羽織れば体温調節も色も華やかになる。
「久しぶりだー」
飼育員?係員?にチケットを渡し、ガチャンと鉄の棒を回して入る。
揺士はまだ魚も見ていないのに、○○展の看板を見るだけで興奮し始めている。ウッキウッキだ。
最初は上が透明なガラスになっていた。
海藻とホヤが吊るされていた。ホヤはここの海の特産で、海のパイナップルと呼ばれる珍味。海藻が揺れれば灯りも影も揺れる。波が再現され、私たちの高揚感も高まっていく。
ホヤを通り抜け、上からの明かりがなくなるとだんだんと仄暗くなり、一気に開けた場所に来た。
わぁ~。きれい。
水槽の大きさは目の前で大人が十数人並んでも十分楽しく見れるだろう。
深青色の水の中に大きな魚が悠々と泳いでいる。大きな魚の動きを見ながら揺士と一緒にガラスの目の前に立つ。
大きな魚は私たちの前に来たと思うと百八十度方向を変えて奥に泳いでいく。
近くで見ると岩礁や砂底を泳ぐ小さな魚たちがじゃれあっている。小さい魚は色とりどりだ。黒と青が印象的なナンヨウハギなど知っている魚もいる。
揺士も魚の目の前で指を動かし遊んでいる。
指を動かすのはやるけどほんとうに反応しているのかは怪しいのよね。
「全種類見つけて先にいきましょう」
「そうするかっ。俺たぶん得意!」
隣合わせで一緒に上に貼られている魚のビジュアルを見て、水槽と目を往復させる。
「いた、いた。あれでしょ!」
「次は、クロユリハゼだ!・・・いた!楽勝だぜ!」
図鑑のように魚の説明も乗っていて習性なども面白い。例えば、青魚は鳥から身を守るために青いとか。後、シラスとちりめんじゃこは水分量の違いで分けられているとか。
途中からどちらが先に見つけるかという白熱した競争になっていった。
「見つけた!あれでしょ!絶対!」
揺士が指を指してる所にお目当ての魚はいない。
「どこ?」
「あれだって」
視線を一致させるために体が近づく。
腕は私の前に、左目を輝かせながら息遣いも分かる距離まで近づく。これも幼馴染みの特権だ。
楽しいそうで何より。ふふ、かわいい。
私達の見る側の照明はなく、水槽の深青色だけで照らされていた揺士の横顔はとても楽しそうだった。
ヒラメのように砂に隠れる類に苦戦はしたけど、全てを見つけきり意気揚々と私たちは次のエリアに進んでいく。
私もそろそろ一肌脱いで勝負しなきゃ。
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