第220話 寝間着女子会と珍妙なる者

 お月様の眩い時刻、場所はウルリカ様の寝室。

 大満足の一日を過ごし、そろそろクッタリ疲れてきたころ。しかしまだまだ一日は終わらない、むしろ楽しい時間はこれからだ。


「さあ、ここからは女子会ですわよ!」


「わーいなのじゃ……女子会なのじゃ……」


 ゴロゴロ寝そべり女子会を楽しむ、ウルリカ様、オリヴィア、シャルロット、ナターシャ、そしてヴァーミリア。ただの女子会と思うなかれ、可愛らしい寝間着に身を包んでの寝間着女子会なのである。


「ウルリカ様の寝間着、とってもステキだわぁ!」


 ウルリカ様の寝間着は綿菓子そっくりフワフワの寝間着、お菓子大好きなウルリカ様にピッタリである。


「オリヴィアちゃんもステキ、パクッと食べたくなっちゃうわねぇ」


 オリヴィアの寝間着は焼き菓子色のモコモコした寝間着、ポテッと転がる姿はまるでシュークリームのよう。


「シャルロットちゃんはキレイねぇ、ずっと眺めていられるわぁ」


 シャルロットの寝間着はキラキラの刺繍に彩られた寝間着、半透明に輝く刺繍は飴細工を思わせる。


「ナターシャちゃんは……ちょっと眩しいわぁ」


「私は気に入りました!」


 ナターシャの寝間着は魔法の寝間着、色と模様を変化させながらピカピカと発光している。珍寝間着とでも呼ぶべきであろうか、なぜこんな寝間着を選んだのやら。


「ふふっ、ヴァーミリアも似合っていますわよ」


「ふふぅ、ありがとうシャルロットちゃん」


 最後にヴァーミリアの寝間着は黒を基調としたフサフサの寝間着。ヴァーミリアは寝間着にあわせ黒猫の耳と尻尾を生やしている、変幻自在なキマイラならではの着こなしである。


「昼間の寝間着選び、とっても楽しかったわねぇ」


「最高に楽しかったですわ、でも流石に疲れましたの」


「私もすっかりクタクタです、どこへいっても走り回るウルリカ様のお世話で……ふぁ」


「温泉あがりでポカポカします、なんだか眠たくなってしまいますね」


「羨ましいわぁ、私も一緒に温泉入りたかったわぁ」


 魔界へきてからというもの、ずっと遊びっぱなしなのである。疲れてしまうのも無理はない、しかし楽しい話は尽きない。


「こんなに楽しい一日は久しぶりでしたわ、魔界のことを大好きになりましたの」


「きっと明日も楽しいことで目白押しよぉ。ねえウルリカ様、明日は何をして遊ぶ予定なのかしらぁ?」


「ふむ……ふむむ……」


「あらあらぁ?」


「ウルリカはお休みの時間ですのね」


「眠ってしまいそうなウルリカ様も最高に可愛らしいわぁ」


 気づけばウルリカ様は、ヴァーミリアに抱っこされたままコクリコクリと船を漕いでいた。なんとも可愛らしいウルリカ様の寝顔にほっこり、とそこへ──。


「お待たせ、遅くなっちゃったわ!」


「「「「……は?」」」」


「あら、ウルリカ様は寝ちゃったのね」


「……もしかしてゼーファードかしらぁ?」


 現れたのは魔界の宰相ゼーファード、と思われる珍妙な存在。虹色に輝くド派手な寝間着を着込み、ベッタリと趣味の悪い化粧を施している。果たして本当にゼーファードなのであろうか。


「いいえ違うわ、私の名前はゼファ子よ! さあ私も女子会に参加させてね!」


「「「……」」」


 どうやらゼーファードは女子会に参加するため、珍妙な女装を自らに施してきた模様。よくよく思い返してみると、昼間は城下町で忽然と姿を消していた。寝間着女子会の話を聞き、乱入を企み準備をしていたのだろう。

 とにかく珍妙すぎるゼーファードの姿に、オリヴィア、シャルロット、ナターシャは絶句である。


「あら、黙っちゃってどうしたのかしら?」


 当然ながらゼーファードの珍行動は許されるものではない。


「はいはい、変態はご退場よぉ」


「変態って? ヴァーミリアは何を言ってるのかしら?」


「はいさようならぁ」


「ちょっと待──ぐはぁ!?」


 一切の手加減なし。

 ヴァーミリアの強烈な一撃で、ゼーファードあらためゼファ子は窓の外へと吹き飛ばされたのであった。

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