第4話 ウルリカ様、ピンチ!?

 場所は移って、ここはロームルス城の中庭テラス。

 柔らかな日差しが差し込む中、豪華なティーテーブルに座るウルリカ様。

 そばにはメイド服を着た少女が立っている。


「初めまして! 本日からウルリカ様のお世話係を任されました、オリヴィアと申します。今年で十四歳です。一生懸命頑張ります、よろしくお願いします!」


 元気いっぱいに挨拶をする、お世話係のオリヴィア。

 茶色の瞳と髪がよく似合う、可愛らしい女の子だ。


「ウルリカ・デモニカ・ヴァニラクロスじゃ。ゼノンの友達で魔王でもある、よろしくの!」


「魔王ですか……国王陛下のおっしゃっていたことは本当なのですね……」


「ん? どうかしたのか?」


「いえ、なんでもありません。お茶を用意するので少々お待ちくださいね」


 手際よく準備をするオリヴィア。

 すぐに湯気のたつティーカップと、色とりどりのお茶菓子が運ばれてくる。


「おお! 美味しそうじゃ!」


「ハーブティーとクッキーです、お口に合えばよいのですが……」


「早速いただくのじゃ!」


 ポリポリ……ポリポリ……。


「美味しいのじゃ! オリヴィア……は少し長いの。リヴィはお菓子選びのセンスがあるのう!」


「ありがとうございます! ちなみにそのクッキーは選んだのではなく、私が焼いたんですよ」


「ほお! 素晴らしい腕なのじゃ、これは才能じゃな」


 足をパタパタとさせながらクッキーをほおばるウルリカ様。

 クッキーを飲み込み、ハーブティを飲んだところでオリヴィアに質問をする。


「ところでゼノンから聞いたが、リヴィは学校に詳しいそうじゃな?」


「そうですね、私も以前は学園に通っていましたから」


「そうなのか! 学校はどんな場所なのじゃ? 詳しく教えてほしいのじゃ」


「はい、ウルリカ様が学校と呼んでいる場所は、正しくはロームルス学園という名前です。五百年前から続く、ロムルス王国で最も歴史のある学園です」


「ふむふむ……ポリポリ……」


「生徒の年齢は十歳から十五歳で、学年は一学年から三学年まで。沢山の生徒が、歴史や教養、剣術、魔法と幅広く学んでおります」


「ほうほう……ポリポリ……」


「生徒のほとんどは貴族や商人、司祭様などの有力者のお子様で、将来ロムルス王国を担うであろう方々です。そういった方々が学生の間から交流を深める、学園は社交の場でもあります」


「つまり、色々な学生がおって楽しく過ごしているというわけじゃな。リヴィのおかげでよく分かったのじゃ! 早く学校にいきたいのう、楽しみじゃのう!!」


 オリヴィアの説明を聞いて、嬉しそうにはしゃぐウルリカ様。

 そんなウルリカ様の様子を見て、オリヴィアも嬉しそうに笑顔を浮かべる。


 穏やかな空気に包まれる中庭テラス。

 パクパクとクッキーを食べていたウルリカ様だったが、ふいに中庭の先へと目を向ける。


「おや? 誰かこっちに来るのじゃ」


「あれは……シャルロット王女様……」


 中庭の反対側から、豪華な衣装に身を包んだ集団がウルリカ様に近付いてくる。

 よく見ると皆、オリヴィアと同じ歳くらいの若い子女達だ。


 あっという間にウルリカ様とオリヴィアを囲む子女の集団。

 キョトンとするウルリカ様の前に、ピンク色のドレスを着た美しい少女が歩み出る。


「へえ……これがうわさの魔王様? ずいぶん可愛らしい魔王様ね」


 ポリポリ……ポリポリ……。


「興味本位で見にきてみたけど、ただの小さな子供じゃない」


 ポリポリ……ポリポリ……。


「ずっとクッキーを食べているわね……まあいいわ、立ちなさい」


「なぜじゃ?」


「なぜって……第三王女であるワタクシを前に、座ったままでいいと思っているのかしら?」


「そう言われてものう……お主のことなど知らぬからのう……ポリポリ……」


「なっ!? ワタクシのことを知らない? 第三王女であるこのワタクシを?」


「うむ、全く知らぬ!」


 きっぱりと言い切ったウルリカ様。

 次の瞬間、取り囲んでいた子女達が一斉に剣や杖を取り出す。


「ひいぃっ!? ウルリカ様~」


「おぉ! 妾に勝負を挑む気かの?」


 殺気と共に突きつけられる剣や杖。

 ウルリカ様、ピンチ!?

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