あの子は文章が上手い

たまたま見かけた

見知らぬあの人は

驚くほど

文章が上手い


誰もが身につける

技能や技法は

遠くに置き去りにされている


あの人の言葉には

力がある

流れるような文章は

全てを引きずり込む


あの人の夜は

僕の夜になり

あの人の悲しみや絶望は

やはり

僕の悲しみとして

僕の心を引き裂き

僕の絶望として

世界を闇の中に閉ざす


何があの人の思考を

鋭く

眩しいほどに

研ぎ澄ませたのだろう


才能や経験を

遥かに超越した

神々しいほどの

表現


羨ましい


しかしそれは

どこか悪魔めいている


羨ましいけれど

僕は怖くて

尻込みしている


何も怖くないはずなのに

あの人の言葉は

背筋を凍らせる

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