第49話 迎賓館内の戦い

 間もなくして、魔法少女勇者ブリリアント☆ルミナに変身してる千代と、ミルキーハムス姿の護衛ゴーレムアダモにより、外の魔物は全滅した。


 あとは1階に侵入してる魔物だけで、生き残ってるだけあってかなり強く。それらはデュラハン、ギガントス、ケルベロス、ミノタウロスだった。


 宮廷騎士団と共にドニロとカシオが、ここでも善戦している。


 死霊系の魔物は、ルミナの範囲浄化魔法【レンジピュリフィケーション】で、既に浄化されていた。


 千代は残った魔物達を排除する為に、アダモと共に迎賓館内に入っていった。



 1階隅の柱の陰から、ランセロ(魔王)がケルベロスに命令した。


「大鼠(アダモ)など、獄炎で焼き殺してしまえ!」


 ケルベロスがミルキーハムス姿のアダモに、火炎噴射を吹き付ける。


 ゴォオオオオオッ!



 火達磨ひだるまになったハムスだが、炎と煙が収まるとクルスタルシルバーカラーのセクシーアンドロイド姿のアダモが、腰に手を当て仁王立ちで現われた。


「モォォォッ! 御嬢様に頂いた御洋服と衣装が焼けちゃったでしょうがぁっ! プンプンッ!

 アダモ、キィックゥゥゥッ!」


 ドガガァアアアアアンッ!


 アダモが回し蹴りで、ケルベロスの2つ頭を1度に蹴り飛ばして壁に叩き付けた。



 更にケルベロスが倒れ伏してるところを、


「アダモ、チョォォォップゥゥゥッ!」


 グッサァアアアアアッ!


 手刀でケルベロスの腹を深くえぐった。


「「キャィンッ……」」




「ええいっ、雑魚は放って置いて王族を殺せ。ラフラン王国の王族を真っ先に倒すのだ!」


 生き残った魔物達が階段から2階へ昇ろうとする。いずれの魔物も巨体の為に、2階からでも頭が見えている。



 ズズズンッ、ズズズンッ、ズズズンッ……、


「「「キャァアアアアアッ!」」」


 貴族女性達から悲鳴が上がったその時、階段の上にジャンヌが立ち塞がった。

 手にはブロードソードと、レイピアを下げている、いずれも千代が作ったミスリル装備だ。



「フゴォオオオッ!」


 巨体のミノタウロスがジャンヌに巨斧を振り下ろす。


 ガッキィイイインッ! 

 ブッシュゥウウウウウッ!


 ジャンヌはブロードソードで巨斧を受け止めると同時に、レイピアでミノタウロスの心臓を突き刺した。


「ブガッ……」


 ミノタウロスは絶命して床に崩れ落ちてしまった。



 一方でデュラハンには、ラルーシアの魔法が突き刺さる。


「清らかなる天の裁きよ【ホーリーランス】!」


 シュリィンッ!

 グッサァアアアアアッ!


「ゥガァアアアアアッ!」


 光の槍がデュラハンの体を突き抜けてその魂を浄化すると。空っぽに成った鎧と兜が、ガラガラと虚しく転がった。



「ギガントス、ジャンヌを叩き潰せ!」


「ウガァアアアアアッ!」



 ジャンヌは頭上で両刀をクロスして、ギガントスの巨大な棍棒を受け止める。


 ガッシィンッ!


 ミシミシッ、バリバリバリッ!


 と床が割れて、ジャンヌはギガントスと共に1階に落ちてしまった。


 ガラガラガラガラッ……、ズズゥウウウウウンッ!



 ギガントスにマウントされたジャンヌが、興奮して激高してしまう。


「ゥオォオオオオオッ!」



 ジャンヌの体がムクムクと盛り上がると、巨熊に変身してギガントスをけた!


 ドドォオオオオオンッ!


「ゥガァアアアアアッ!」



「凄い、まるで3Dの怪獣映画みたいだ!」


 と、1階の端で見ていた勇者見習いのキョウヤが呟く。


「良いぞぅ、デカ熊。メンタマ大男をヤッチマエエエッ!」



 ランセロ(魔王)は公爵の跡取りなので、当然ながら護衛騎士が2人付いている。が、勿論それらは人間では無かった。

 ゴシルシャは牛頭獄卒ごずごくそつ、アシュヴァシルシャは馬頭羅刹めずらせつという地獄の鬼番人だ。


「ゴシルシャ、アシュヴァシルシャ、今のうちに王族達を殺してしまえ!」


「「はっ」」



 シュィイイイイインッ、ズズズズズゥゥゥ!


 ゴシルシャは牛頭の鬼に、アシュヴァシルシャは馬頭の鬼に変身する。

 どちらも3メートル大の化け物だ。


 ゴシルシャとアシュヴァシルシャは、2階に上がり奥1か所に纏まっている王族達を見つけて迫っていく。


 千代は1階から急いで【転移】して、その2頭の前に立ちはだかった。 



「炎や雷は密集している人族を巻き込んでしまいそうだから!【アイスジャベリン】!」


 パリパリッ、キィィィンッ、ダァアンッ!

 グッサッ……!


「フハハハハ、地の底の番人に氷魔法では、効果が薄いのぅ!」


 氷の槍が僅かに地獄の鬼番人2頭の腹に刺さったが、軽く払い除けられてしまった。



 2頭の魔物の口が開き、赤黒い炎が大きく成っていくと。


 ゴォオオオオオッ!


 と、バレーボール大の火の玉が飛んで来た。



「【リフレクションシールド】!」


 バィイイインッ!


 千代は火の玉を跳ね返したが、それが壁にぶつかり燃え上がってしまう。


 ボワッ、メラメラメラメラッ!



「お師匠様、火を消してください。お願いします」


「分かっておる。水の精霊よ、天地の恵みを!【ウオーターシュート】!」


 ラルーシアが燃えてる壁を消化をして回った。



「こうなったらワシが、直接王族を始末してくれようぞ!」


 ゴゴゴゴゴォオオオオオッ!


 黒煙と稲光の中から2メートル越えの身の丈で、ダークカラーの鎧の上に深紅のマントを羽織った魔王が現われた。



 ジャンヌは1階でギガントスと、チヨとアダモは2階の片隅で鬼番人と戦い、ラルーシアは消火活動をしているところで、魔王が王族の前に迫りくる。


 ルイ国王、フィリップ王子、ヴィクトリア王太后、ペネロペ王姉、ジェルソミーナ公爵令嬢が、壁際の一角に固まっていた。

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