第13話 門前の小僧
「工房に買い付けに来る商人や貴族が増えたので、製品を陳列するお店を併設しようと思うの」
職人達が休憩中の工房内で、ローリーがそう言いだした。
「
「今までは保管場所にお客さんを案内していたけど、お貴族様も来るようになったから、失礼に成らないようにオモテナシもしたいしね」
「そうですね」
ローリーが、空いている敷地内でお店を作る場所を模索する。
「う~ん、チヨ、ここら辺がいいかしら?」
そこは、工房よりも街道側の草原だ。
「いいですね、街道を歩く人への宣伝効果もありそうですね」
「そうよね」
「馬車の停車場所や馬繋ぎ場を街道沿いに作って、その手前で街道に向けてお店の入り口を作りましょう」
千代はコンビニエンスストアーの店構えが頭の中に浮かんでいた。
「あら、良いわね。そのアイディアを採用させて貰うわね」
「取り敢えずインベントリを使って土台をならして、店の縄張りを引いてみましょうか?」
「うん、無理しないでね」
「は~い」
千代は草木は勿論の事、地面の下50センチぐらいの土を全て一遍にインベントリに収納する。
シュィイイイイインッ!
その時既に、千代の収納魔法は【インベントリⅢ】にスキルアップしていた。
「インベントリ内の草、木、石、土、砂を種類ごとに分類!」
シュインッ!
「インベントリ内の土を
シュィイイイイインッ!
「店舗建設予定地が綺麗に整地できました!」
「まぁ早い! ありがとうねチヨ。なんて便利な子なのかしら!」
ピンポロリン♪
【土属性魔法Ⅱ】に【整地Ⅰ】が加わった。
千代は何気なく整地した土地から土を拾い、軽く
ピンポロリン♪
【土属性魔法Ⅱ】に【土弾Ⅰ】が加わった。
千代は傍の木に向かって、覚えたばかりの土弾を撃ってみる。
「あの木に向かって【土弾Ⅰ】発射!」
ズドンッ!
「まぁ、凄い!」
千代は石を拾い、同じ木に投げてみた。
ヒュッ、コツン!
ピンポロリン♪
【土属性魔法Ⅱ】に【石弾Ⅰ】が加わった。
「チヨ、それって、魔物に襲われた時に使えるかもね」
「そうですね」
この時には、千代のスキル取得の異常さが、既にローリーには分かってしまっていた。
他の職人達にも、天才少女と呼ばれるように成っていたのである。
店の建設予定地を見に来ていた職人達に、ローリーが言った。
「貴方達、チヨのスキルに付いては内緒にしといてね。この子は内気なんだから、プレッシャーを与えないでね」
「「「は~い」」」
「チヨ、今日はこのぐらいにしておきましょうか? 私は店の間取りを考えとくから、後は図面ができてから建設に取り掛かりましょうね」
「はい」
ローリーは事務所の机で図面作りに悩み。千代は工房に戻って、夕方まで製品作りに
ピンポロリン♪
ガラス製品のグラスを作っていた時に、又音が鳴った。
【付与魔法Ⅰ】というものが加わった。
千代は日本にいた時に経験したネトゲを思い出した。
「そう言えばゲームでは、【錬金術】とか【付与魔法】ってのがあったわ!」
今出来たガラス製品を【鑑定】してみると【美+1】と表示された。
その後も、いつものルーチンワークで製品を作っていく。
グラス、ボトル、ピッチャー、タンブラー、ポット等、出来た物を次々に【鑑定】してみると。
『保存、保冷、保温、耐熱、新鮮、旨味、美、輝、光』等の+1効果が付いていた。
ローリーが店の間取りを考えながら、工房内を
「ローリーさん、どうしましょう。ガラス製品に勝手に付与効果が付いちゃうの!」
「う~ん……悪い物じゃ無いんだから、いいんじゃない」
「売れれば、いいですけどぅ……」
「大丈夫でしょっ。そもそも【鑑定】出来る人なんて少ないのだし、出来たとしても食器を【鑑定】なんてしないでしょうからね」
「そうなんですね」
千代はガラス細工を1人前に作れるようになったので、翌日から陶磁器製作も教えて貰う事にした。
「ローリーさん、陶磁器にも興味があるのです。教えて貰ってもいいですか?」
「いいわよ。ガラス細工は1人前の職人として認めましょうね。これからは製品の売り上げは6:4の歩合制だからね。勿論、チヨの取り分が6割よ!」
「はい、どうもありがとうございます」
「売れれば自分の収入になるんだから、マイペースで作ればいいのよ」
「そうなんですね。売れたら嬉しいな」
「大丈夫よ、売れるから」
「はい」
ピンポロリン♪
千代が
【陶磁器製作0】が【陶磁器製作Ⅰ】に上がった。
「もう、上がっちゃった!」
「え、な~に、どうしたの?」
「何でも無いです。ローリーさんは陶磁器も作れるのですね?」
千代はスグに話題を変えた。
「えぇ、子供の頃から見よう見まねで遊んでいたから、普通に作れるのよ。環境でそう成ったのね」
「ふ~ん、『門前の小僧』ってやつですね」
「あら、どういう意味なの?」
「工房の傍に住んでる子供が、勝手に見ているうちに技術を覚えてしまう。と言うような意味だったと思います」
「へぇぇ、私も子供の頃から、父や職人さんの仕事を見ていたからね」
「そうなんですね」
ピンポロリン♪
又、音が鳴った。
【門前の小僧Ⅰ】スキルがステータスに加わった。
チヨ15歳
種族 人族
職業 ガラス職人
陶磁器職人見習い
Lv5
HP50/50 MP999/999
【魔法スキル】
光属性魔法Ⅱ
浄化Ⅱ
回復Ⅰ
解毒Ⅰ
光の矢Ⅰ
闇属性魔法Ⅰ
火属性魔法Ⅱ
水属性魔法Ⅱ
風属性魔法Ⅱ
土属性魔法Ⅱ
整地Ⅰ
土弾Ⅰ
石弾Ⅰ
時空属性魔法Ⅱ
インベントリⅢ
転移Ⅰ
生活魔法Ⅲ
着火Ⅲ
洗浄Ⅲ
乾燥Ⅲ
付与魔法Ⅰ
保存Ⅰ
保冷Ⅰ
保温Ⅰ
耐熱Ⅰ
新鮮Ⅰ
旨味Ⅰ
美Ⅰ
輝Ⅰ
光Ⅰ
【生産スキル】
ガラス細工Ⅲ
陶磁器製作Ⅰ
採取Ⅲ
畜産Ⅱ
農業Ⅱ
裁縫Ⅱ
修復Ⅱ
【固有スキル】
鑑定Ⅱ
仕分けⅡ
調教Ⅱ
門前の小僧Ⅰ
千代は「スキルの取得と上昇が、やけに早いなぁ!?」と、思い悩むのであった。
【後書】
『門前の小僧習わぬ経を読む』
寺の門前に住んでいる子供や、いつも僧のそばにいる子供は、日頃から僧の読経を聞いているから、いつのまにか般若心経くらいは読めるようになるということから。 人は自分の置かれている環境によって、無意識に影響を受けているという意味だそうです。
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