第14話
「んー」
俺は机に広げた教科書を見ながら唸る。
「さ、夕食だから机の上片付けて」
「んー」
最後にこの問題を解こうと思ったのだが、やはり俺は読解というものは苦手らしい。
「勉強?」
「ああ、テストが近いから」
この時期に始まるのは中間テスト。そこまで重要かどうかと言われるとそうでもない。だが高校になって初めてのテスト。先生に対する印象操作含め、交友関係の少ない俺は勉強で頑張ろうというわけだ。
「………英語と現代文?」
楓が開いていた教科書を覗き込む。
「さっぱり分からん」
「英語はまだしも現代文が分からないの?」
「中学の時から国語とかそのへんが苦手なんだよ」
「ああ、通りで」
「おい、何一人で納得してる?」
世間の国語が苦手な陽の側の人間に謝れ。
誰しもがコミュニケーションが苦手だからといってそれに比例して現代文が苦手なわけじゃないんだよ。
「ううん、こっちの話」
「少なくともそっちの話には俺も関係してるよな?」
「まあ、そうだね。………それよりもとりあえず今は机の上片付けて。終わったら教えてあげるから」
「得意なのか?」
「こう見えてもね」
「別に疑っては無いけど」
夕食を食べ終え、ひと段落してから俺と楓は向かい合って勉強を始める。
「んー現代文って理屈じゃないんだよね」
「だから無理なんだよ」
「一斗くんは機会なのかな?」
「そうだな」
「…………」
「………冗談だ」
あれ?何だか今日の楓怖くない?
「あのー楓、さん?」
「真剣モード」
「はい?」
「どうやって教えてあげようか考えてるんだよ。勉強はできないと困るからね」
「それはどうも」
「んー」
楓は暫く教科書を眺めている。
まあ、現代文のテストは長文の読解。漢字、古文の三つだ。漢字と古文に関しては覚えるだけでいい。ただ読解問題となると暗記というわけにはいかない。
「そうだなー。一斗くんは何がどう分からないの?」
「筆者の考え、登場人物の気持ち…………。問題文に答えが書いてあるって言うけどそれを見つけ出すのが無理なんだよ」
「根本的問題………」
「自覚はしてる」
「性格がひねくれてるからかな」
「サラッと貶すのはやめような」
「じゃあこの問題は?『この時の筆者の考えを次の記号の中から二つ選びなさい』」
「………BとD」
「AとCだね」
「…………」
「…………ぷ」
「おい」
こっちは真剣に答えて間違ったのにそれを笑うか?
「わざとでしょ?」
「わざとじゃない」
「やっぱり相変わらずだなー」
「そう言われても」
「こればっかりは近道もないよ。どれだけ文章に慣れるかだし………登場人物の気持ちは………あ」
「ん?」
楓がニヤリと笑う。
「ねえ」
「嫌だ」
「まだ何も言ってないけど」
「どうせろくでもないことでも思いついたんだろ?」
「そんなことないよ。ゲームだよ、ゲーム」
ほらな。ろくでもないだろ?
「ゲーム?」
とか言って興味を持つ俺もどうかしているけど。
「感情当てゲーム」
「明らかにとっさに思い付いたみたいな感じだな」
「だって今思いついたんだもん」
「それで?」
「私の表情を読んで今何を考えているか当てるの」
「無理ゲーだろ」
「だからこそだよ」
俺は首を傾げる。
「無理ゲーを攻略すれば答えがあらかじめ書いてある現代文のテストは凄く簡単になるでしょ?」
「まあ、そうかもしれないけど」
「じゃあ決まりだね」
そんなわけで謎の感情当てゲームとやらが始まった。
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