第4話
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
軽く無駄口を叩きながら俺と楓は夕食を食べ、揃って食べ終えたのは午後の七時を回ったくらいだった。
俺は二人分の食器を持ってキッチンへ。
「あ、洗い物も私するよ?」
「いや、流石に作ってもらっておいてさらに洗い物をさせるのはダメだろ。俺がやる」
「でも………」
「できないと思うか?」
「そうじゃないけど」
「俺だって一人暮らしは覚悟してたんだよ。最低限の家事ぐらいはする」
「そう?じゃあお願いしようかな」
そう言って楓は半分上がっていた腰を再び落とす。
「…………」
「…………」
「何だよ」
実際に見ているわけじゃないが背後に視線を感じそう言った。
「ううん。相変わらず優しいんだなって」
「お前な………」
相変わらずと言われても分からんだろうが。
「素直に喜べばいいのに」
「絶対に嫌だ」
喜んだら何だか負けたような気がする。
俺はとりあえずその場をごまかすために食器を洗い始める。
そして食器を洗いながら、
「なあ、楓」
「ん?」
「俺とお前ってどうやって出会ったんだ?」
楓と俺が結婚することは分かった。でも俺はもう高校一年生だ。未来と言ってももう十年後とかそこらの話だと思う。だとするなら俺と楓はもしかして既に出会っているのかもしれない………というのは推測だけど。
「うーん。それは言えないかな」
「言えない?」
「うん。だって未来変わっちゃうかもでしょ?」
「お前がここにいる時点で未来が変わるような気がするんだが?」
「………そこはアレだよ。タイムリープ系によくある暗黙の了解みたいな?」
「お前、単に話したくないだけか?」
「…………」
どうやら図星らしい。
案外完璧そうに見えて抜けているところあるな。
「いいもの見たって顔やめてよ」
「あ、顔に出てたか?」
「凄く」
「いや、でもいいもの見たのは確かだな」
「そんなこと言ったらさっき私は一斗くんの泣き顔を見たけど?」
「…………」
「これでおあいこだね」
クソ。楓に口喧嘩で勝てるビジョンが見えない。
「まあ、そんなことよりもお風呂入ったら?明日も学校あるでしょ?」
「あーそうだな」
俺は食器を洗い終えてから風呂場へ。
「楓、タオルどこだ?」
「洗面台の下の棚」
「あ、本当だ」
俺は制服をハンガーにかけてつるしてから浴室へ。
シャンプーとボディーソープまで準備されているあたり、用意周到過ぎて怖い。
「あ、お風呂に一緒に入るっているお決まりみたいなパターンは流石に無いからね?」
部屋から楓のそんな声が聞こえた。
「べ、別に期待してない!」
俺の声が狭い風呂内に反響する。
「あ、期待してた?」
「してない」
「うそだー」
「それよりもどんどん声が近付いてきてないか?」
「あ、背中でも流してあげようかなって」
「お前、言っていることとやっていることがメチャクチャだぞ?」
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