よく晴れた日に
Yinghui
第1話雨の日に
あれは土砂降りの雨の日だった。
好きな小説の発売日で外に出たが生憎の雨とずきずき痛む頭痛で気分は最悪だった。
雨は止んだのにこの頭痛が3日ほど続いたので、近くの病院で検査を受けた。
すると「もっと大きな病院で再検査してください。」
そう医師に言われ、改めて大きな病院で再検査を受けた。
医師は真っ直ぐ僕をみてゆっくりと告げた。
「落ち着いて聞いてください。残念ですが、癌です。佐藤 俊介さん、若いですが、佐藤さんの余命はもって約一年です。」
正直、夢かと思った。突然のことで口をパクパクしてしまって上手く話せなかった。癌?余命ってなんだ。俺、まだ二十歳だぞ。いやいや、やっと二十歳なんだぞ、頭がグルグル回るだけでその後の医師が話す内容が全く入ってこなかった。
心配で付き添った母は泣くばっかりで声を上げないだけで精いっぱいだった。
うちに帰っても頭はぐるぐる回るばかりで冷静になんてなれなかった。いつもより早く帰宅した父に皆んなで話そうと言われたがそんな気にもなれなかった。
だいたい2日が経ったのだろうか余命宣告を受けてから何に対してもやる気が出なかった。両親には一緒に戦おうと入院を促されたが
それはどうしても嫌だった。副作用に苦しんで余命を待ちながら刻々と過ごすくらいなら少し早く死んだって変わらないじゃないか…たとえそれで少し時間が延長できたとしても薬を飲んで苦しむなんて俺には出来ない。出来なかった。
ただ夜中になると母さんのすすり声と父さんの慰める声が微かに聞こえてくるのは心がグッと痛かった。
翌朝、ふと目が覚めた、まだ窓は薄暗くて再び目を閉じたが眠れなかった。静かな明け方の中にカラカララと自転車の音が気になって窓を開けた。新聞配達だった。なんだか気になってそのまま朝刊を取りに行った。
初めて自分でとった朝刊は特別な気がしてバサバサと読み始めてしまった。いつも見るのはだいたい番組表とコボちゃんの4コマ漫画くらいだな小説は好きだけどあんまり新聞は見ないよな。そう思いながら誌面をめくると一つの連載小説に目が止まった。小説というとこにも興味が湧いたが何よりタイトルに惹かれた。
「第1回 病気の僕と幽霊の君」
内容はタイトル通りで病気の少年が幽霊の少年と出会い控えめで弱気な病気の少年を幽霊の少年が元気づけながら病院で起こる問題を2人で解決していく物語だ。
なんだか心が久しぶりに動いた気がした。幽霊の楽しいキャラや病院の問題も面白くて読んでいてハマった点もあるが何より病気の少年の性格や発言がどこか僕に似ていていや、まるで僕をみているようだった。
その日から朝、いや正確には早朝、新聞配達を玄関先で待つ生活が始まった。毎朝、俺はあの連載小説を待っていた。朝イチということに特別意味はないが何だかこれが大学もバイトも全てやめた俺の中で唯一の日課で生きがいになるような気がした。
3日目の早朝、今日も薄暗い明け方に玄関先で俺は新聞配達を待っていた。
カラカララ
「あ、来た。」
いつもの自転車の音が聞こえた
ガコン
新聞がポストに入ってから俺は表に顔を出してポストから新聞を出した。
「おお!三日坊主はクリアじゃん!」
突然の声にビクッと驚いた。
声の主は新聞配達の人だった。
「あ、ごめんごめん!驚いた?ごめんね!
君、早起きしてるんでしょ?今日はギブなんじゃないかなって思ってたから私もびっくりしちゃって」
「ああ、いえ違います。早起きはしてるけどそれじゃないです…。」
俺に話しかけた彼女はいつも帽子を被っていて気づかなかったけど顔は小さいのに目も口も大きくて透き通った目のまつ毛が長くて
いわゆる美少女って子だった。
これが僕らの出会いだった。
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