第206話乙女ゲーのヒロインは、ギャルゲの主人公に勝ちたいのです。その52
郁人がゆるふわ宏美をそう言って、庇うのだが、もはや、許す気はなさそうな郁人ファンクラブ幹部メンバーの殺気に、怯えるゆるふわ宏美なのである。
「大丈夫だから、とりあえず、ゆるふわ……ほら、そろそろ、席に戻ろうか」
「いやです~!! 郁人様、見捨てないでください~!!」
「ほら、もうチャイム鳴ってるから……みんなも、そんな目でゆるふわを見てやるな……怯えてるだろ」
怯えて、郁人の脚に必死にしがみついて、ここから離れないと言わんばかりのゆるふわ宏美に呆れる郁人なのである。そして、郁人の脚に必死にしがみつく、ゆるふわ宏美を殺意の波動を放ちながら、蔑む郁人様ファンクラブ幹部メンバーにそう注意する郁人なのである。
もはや、郁人はゆるふわ宏美の事を小動物か何かと同じような扱いをしているのである。
「郁人君、宏美ちゃんを甘やかしすぎだよぉ……宏美ちゃんは、私達より、元カレ選んだんだからぁ……その元カレさんと仲良くしていればいいんだよぉ」
「違いますから~!! 勘違いです~!!」
「でも、元、会長が裏切ったのは事実ですよね……これは、あからさまに私達に対する裏切り行為だと思いますが?」
「う、裏切ってはいませんから~!! 信じてください~!!」
梨緒とクラス委員長にそう冷たく言われるゆるふわ宏美は、必死に声をあげて反論するのである。
「元会長……言い訳は苦しいですよ……郁人様を裏切った罪は死で償いましょうよ」
「尊い郁人様を裏切った罪……償っていただきますわよ……死をもって」
「サヨウナラモトカイチョウ、イッショウイクトサマオシノ、ワタシガ、セキニンヲモッテ、アノヨニオクッテ、サシアゲマスカラネ」
「嫌です~!! 死にたくないです~!! 助けて~郁人様~!!」
今度は、郁人様親衛隊の三人娘に、絶対零度の視線を向けられて、死を迫られるゆるふわ宏美は、恐怖の涙目で郁人の脚が自分の命綱と言わんばかりに、必死にしがみついて、助けを乞うゆるふわ宏美に、頭を抱える郁人なのである。
「揶揄うのはやめてやってくれ……ゆるふわ、本気で怖がってるから……特に東雲さん……冗談でも怖いから……マジで」
そう言って、郁人様親衛隊の三人娘を窘める郁人に、え? 揶揄っていません、本気ですよと言う表情の三人娘に、冷や汗ダラダラな苦笑いの郁人と本気で怖がるゆるふわ宏美なのである。
「とりあえず、ホームルームが終わって、ゆるふわから俺が話を聞くから……その後の事は、また、後で話そう……ゆるふわもそれでいいだろ?」
「……は……い、いえ~!! ダメです~!! みなさん怒ってますよ~!! 殺されます~!! 助けて下さい~!! 郁人様~!!」
郁人がみんなに呆れながらそう言って、脚にしがみつくゆるふわ宏美にも安心するように言って聞かせると、郁人の方を見て納得しかけたゆるふわ宏美だが、納得のいかないと言う表情の梨緒と郁人様ファンクラブ幹部メンバーの方を見てしまい、放そうとした郁人の脚にまたも、しがみついて、恐怖の表情を浮かべながら、そう助けを求める声をあげるゆるふわ宏美に、本気で頭を抱える郁人なのである。
「ゆるふわ……もう、ホームルームで先生も来るから、自分の席に戻ろうな……ホームルームが終わったら、ちゃんと、話を聞いてやるから」
「だ、ダメですよ~!! い、今ここから離れたら~、私は死んでしまします~!! 殺されますよ~!!」
「いや、大丈夫だから、さすがに、みんな怒っても殺したりはしないからな……そうだろ?」
恐怖でパニクるゆるふわ宏美を落ち着かせようとする郁人は、そう優しく小動物に語り掛けるように言って、周りに同意を求めるのだが、何故か視線を逸らす梨緒と郁人様ファンクラブ幹部メンバーなのである。
「やっぱりです~!! やっぱりですよ~!! わたしぃはここから離れたら殺されます~!! 絶対に放しませんからね~!!」
「おい、お前等、ゆるふわが、完全に怯えてしまっただろ!! コイツこうなったら、もうどうしようもないんだぞ!!」
郁人は、例のゆるふわホラー怖い怖い事件を思い出して、疲れた表情を浮かべる郁人なのである。そして、ついに、1組担任の先生が教室の扉を開いて、教室に入ってくるのである。
そして、素早く席に戻る梨緒と郁人様ファンクラブ幹部メンバーなのである。
「朝宮君……細田さん……二人とも何をしているのですか?」
1組担任の女性教師は、こめかみを押さえながら、疲れた表情でそう言うのである。
「ほら、先生来たから……自分の席に戻れって!! ゆるふわ!!」
「絶対に離れませんからね~!! 放しませんからね~!!」
担任の先生にそう言われて、焦る郁人は必死にゆるふわ宏美を引き離そうとするが、絶対に離れないと、必死に郁人の脚にしがみつくゆるふわ宏美なのである。そんな光景を見ながら、先生は、頭を抱えながら、こう言うのである。
「また、問題ですか? 朝宮君……風紀委員会に入って、少しは大人しくなったと思えば……まったく、本当にあなたと言う生徒は……問題児なのですから」
「な……に……俺が悪いのか!?」
そう言って、完全に郁人とゆるふわ宏美の事を無視して、出席確認を取り始める先生に、驚愕の表情を浮かべる郁人は、そう呟くのであった。
そして、結局、しがみつくゆるふわ宏美をそのままにして、ホームルームを受けた郁人は、冷ややかな視線を向けられて、そのまま教室から出て行く担任の先生に、心の中で謝ると、ゆるふわ宏美を連れて、郁人様ファンクラブ部室に向かうことにしたのであった。
「ゆるふわ……いいから、離れろ……大丈夫だから……ほら……」
「嫌です~!! みんながわたしぃの命を狙ってるんです~!! ここだけが、わたしぃの安全地帯なんです~!!」
「いや……でもな……滅茶苦茶目立ってるから……本当に……」
今度は背後霊よろしくと言わんばかりに、郁人の背後から両手でがっちり制服を掴んでしがみついて、キョロキョロ辺りを警戒しながら歩いているのである。そんな、ゆるふわ宏美に呆れる郁人はもちろん、超目立っているのであった。
「おい……ゆるふわ……お前、こういうことするから、変な噂が流れるんだぞ……いいから、離れろって」
「絶対に嫌です~!! 放しませんからね~!! 絶対に離れたりしないんですからね~!!」
ゆるふわ宏美が、必死に郁人にそう大声で言うと、周りの生徒達がヒソヒソと話し出すのである。
「修羅場か!?」
「修羅場よ」
「修羅場だな」
そんな、生徒達の声が聞えてきて、郁人は、もうすべて諦めた表情を浮かべて、郁人様ファンクラブ部室までこのまま、ゆるふわ宏美にしがみつかれたまま、向かうことにしたのであった。
そして、部室にたどり着き、部室内に入って、内から鍵をかけて、二人きりになったことで、だんだんと落ち着きを取り戻してきた、ゆるふわ宏美は、部室の真ん中で、郁人に正座させられるのであった。
「さて、ゆるふわ……とりあえず、言いたいことは物凄く色々あるが……まずは、事の真相を聞こうか」
郁人は両手を組んで、眉間にシワを寄せて、怒った表情で、顔を真っ赤にして、冷静になって、今までの自分の行動を思い出して、恥ずかしさで、死ぬほど悶えているゆるふわ宏美にそう言うのである。
そして、ゆるふわ宏美は、深呼吸して、落ち着きを取り戻して、申し訳なさそうに郁人に全てを話し出すのである。7組リレーの話と、美月と政宗の事、最近、浩二に手を貸していることなど、包み隠さずに、すべてを話すゆるふわ宏美の話を真剣な表情で聞く郁人なのであった。
「なるほど……だいたい、事情はわかった……しかし、やはり、ゆるふわはバカだよな……もっと、上手くやれただろうに……」
「え!? い、郁人様に馬鹿って言われました~!?」
「いや……ゆるふわは、馬鹿だろ……出合ってから、今までの事を思い出してみろ……お前がどれだけ問題を起こしてきたと思っているんだ」
「そ、それ~!! 郁人様のせいですからね~!! わたしぃじゃなくて~!! 郁人様が問題を起こしているんですからね~!!」
話を聞いて、やれやれと呆れる郁人はゆるふわ宏美にそう言い放つと、納得がいかないと、猛反論するゆるふわ宏美なのである。
「いや……ゆるふわ……お前が馬鹿じゃなければ、こんな状況になってないからな……馬鹿じゃないって言うなら、自分で何とかするってことだな」
「すみませんでした~!! わたしぃが馬鹿でした~!! なので、見捨てないで助けてください~!! 郁人様~!!」
ゆるふわ宏美は、そう郁人に冷たく言われて、前言撤回、すぐに土下座を披露して、助けを求めるのであった。そんな、ゆるふわ宏美に呆れながらも、美月のために動いてくれたゆるふわ宏美を助けることを決めた郁人なのであった。
「まぁ、とりあえず、俺がみんなと話してみるから……ゆるふわは、とりあえず、何があっても、申し訳ありませんでした~、すみませんでした~と言っておいてくれ」
「い、郁人様~!! ありがとうございます~!!」
「おい、やめろ!! また、ひっつくな!! ゆるふわ!! ていうか、お前のせいで、ズボンも上着も、シワが寄っただろうが!!」
郁人は、仕方ないという諦めの表情でゆるふわ宏美にそう言うと、ゆるふわ宏美は、感激のあまり、膝をついたまま、郁人の脚に抱き着いて、涙ながらに感謝感激するのだが、郁人は、そんなゆるふわ宏美に怒鳴りながら、必死に引きはがしにかかるのであった。
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