第205話乙女ゲーのヒロインは、ギャルゲの主人公に勝ちたいのです。その51

「い、いや……さすがに、いきなり、泣きながら土下座されても困るんだが……」

「ゆ。ゆるしてぐだざい~!! いぐどじゃま~!!」

「お、おい、ゆるふわ、泣きながらしがみついてくるな……いいから、何があったか話せって……」


 郁人様親衛隊に囲まれて、恐怖で泣きじゃくるゆるふわ宏美は、必死に許してもらおうと、自分の席に座っている郁人の足にしがみつくのである。


「会長……裏切りモノには…死ですよね!!」

「まさか、会長が裏切り者とは……尊い郁人様の信頼を裏切るなど……死ですわね」

「会長……一生郁人様推しの同志と信じていたのに……こんな結果になって、残念ですが、安心してくださいね……滅茶苦茶苦しめてからあの世に送って差し上げます!!」

「い、いやです~!! いぐどざぁまぁ~!! だずげでくださぁい~!! わだじぃはわるくないんですぅ~!!」


 郁人様親衛隊が、殺意の波動を放ちながら、泣きじゃくるゆるふわ宏美の死を望むと、ゆるふわ宏美は、恐怖の表情で怯えながら三人娘を見て、郁人の足に必死に、しがみついて助けを求めるのである。


「とりあえず、落ち着け……ゆるふわも、大丈夫だから……」

「いぐどさまぁ~!!」


 ゆるふわ宏美は、優しい笑みで、そう言われて、希望に満ちたキラキラの表情で郁人を見るのである。


「まぁ、今のところはな」

「いぐどさま!?」


 郁人はそう邪悪な笑みを浮かべて、ゆるふわ宏美にそう言い放つと、今度は絶望の表情を浮かべるゆるふわ宏美なのであった。


「そうですね……会長……辞任準備はよろしいですか? とりあえず、代理として、私が郁人様ファンクラブ会長という事で、話を進めておきますのでご安心を……い、郁人様も、わ、私が今後は、せ、誠心誠意……さ、サポートさせていただきますので、よ、よろしくお願いします!!」


 そして、いつの間にか、スッと現れるクラス委員長で郁人様ファンクラブ副会長が、冷たくゆるふわ宏美にそう言って、顔を真っ赤にして、テンパりながら、郁人に頭を下げて会長就任宣言をするのである。


「ま、待ってくださいよ~!! 会長はわたしぃですから~!! い、郁人様!! 助けてください~!!」


 必死に見捨てないでと郁人の足にしがみついて、助けを乞うゆるふわ宏美に冷たい視線を向ける郁人様ファンクラブ幹部メンバーなのである。


「とりあえず、ゆるふわから、話を聞いて、それから、対応は決めればいいだろ……な?」


 もはや、許す気はないとばかりの郁人様親衛隊の三人娘とクラス委員長の副会長にそう言う郁人は、涙目で足にしがみつくゆるふわ宏美を見てため息をつくのである。


「そ、そのですね~……う、噂自体はわたしぃのせいではないんですが~……れ、練習の映像をですね~……その~」


 郁人の方を見ながら、気まずそうに話しだすゆるふわ宏美だが、もはや、罪人を裁くとばかりの表情で、傍聴人となっている郁人様親衛隊三人娘と、クラス委員長で、未来の会長予定の副会長の方を見て、恐怖の表情を浮かべるゆるふわ宏美は、視線を泳がせながら、言葉に詰まるのである。


「練習の映像をどうしたんだ? ゆるふわ」

「えっと~、その……り、理由があって~……な、永田さんにお渡ししまして~……そ、それがたぶん、噂の原因になったのかと~……ほ、本当にすみません~!!」


 そう言って、誠意の土下座を披露するゆるふわ宏美は、涙目で許しを乞うのである。その姿を見て、ため息をつく郁人だが、郁人様親衛隊の三人娘と、クラス委員長の未来の会長予定の副会長は怒りの表情を浮かべているのである。


「会長……ギルティですね……では、本日をもって、会長を辞任してもらうという事でよろしいですね?」

「ま、待ってください~!! 郁人様ファンクラブ会長はわたしぃですから~!! それに、これには深い事情がありまして~」

「へぇ~……宏美ちゃん……郁人君やクラスの皆を裏切るほどの事情って何かなぁ? 聞かせてくれないかなぁ……ひ、ろ、み、ち、ゃ、ん」


 ついに、クラス委員長の本日から会長予定の副会長にそう宣告されて、涙目で必死にそう言うゆるふわ宏美は、やはり、郁人の足にしがみついて、イヤイヤしているのだが、そんなやり取りを、登校してきた梨緒は、一部始終を見ており、静かに近づいてきて、にっこり、ヤンデレ笑みを浮かべて、ゆるふわ宏美にそう言い放つのである。


「ひぃ~!! り、梨緒さん…ち、ちがうんです~!! う、裏切ったんじゃないんです~!! こ、これには非常に、複雑で~、止むに止まれない事情がありまして~」

「梨緒さん……おはようございます……あれですよ……たぶん、会長の噂のことですよ」

「噂ってなにかなぁ?」


 梨緒のヤンデレ圧に、ビビりまくるゆるふわ宏美は郁人の足にさらに必死にしがみついて、必死にごにょごにょと言い訳を並べると、とりあえず、離れて欲しい郁人が、ゆるふわ、離れろと、引き離そうとすると、必死にしがみついて放さないゆるふわ宏美にため息をつくのである。


 そして、ゆるふわ宏美の言い訳に心当たりがあるのか、クラス委員長で今から会長予定がそう言うと、なるほどと納得の郁人様親衛隊の三人娘と違って、心当たりがない梨緒なのである。


「梨緒さんは知らないのですか? あれですよ……永田さんでしたか……我らの聖域である部室に最近よく顔を出していまして……怪しいと思っていたのです……最初は何か、悪意があって訪れていると思っていた私達ですが……日が経つにつれて、衝撃の事実がわかってしまいました」

「そうなんだぁ? それで、何が分かったのかなぁ?」

「それは……永田さんが会長の元カレだという事ですよ!!」


 クラス委員長の本日から会長予定が、梨緒にそう説明して、うんうんと頷く親衛隊三人娘に、疑問顔の郁人と、涙目で郁人の足にしがみついて、話を聞いているゆるふわ宏美なのである。


 そして、梨緒も疑問顔でそう尋ねると、衝撃的な発言をするクラス委員長の本日から会長予定なのである。


「な、何言ってるんですか~!! そ、そんな訳ないじゃないですか~!!」


 事実無根の発言に、必死に否定の声をあげるゆるふわ宏美なのである。


「いえ……証拠は揃っていますよ……元会長……最近、部室から聞こえる永田さんの叫び声……最初は許してくれとか、助けてくれって聞こえていて、それが日にちが経つにつれて、もう一度チャンスをくれなど、私達も、最初は永田さんが元会長に愛の告白に来ていたのかと思っていたのですが……その発言から疑問を感じ、最終的には……愛しているぜ細田と叫ぶ永田さんの声を聞いて確信しました……永田さんは、この数日、元会長に復縁を迫っていて……そして、元会長がそれに同意した……そういうことですね!! 元会長!!」

「全然違いますから~!! あと、わたしぃは会長ですから~!! 元じゃないですからね~!!」


 早口で。ゆるふわ宏美にそう説明するクラス委員長の今日から会長予定に、必死に否定の声をあげるゆるふわ宏美なのである。そんな、ゆるふわ宏美に呆れながら声をかける郁人なのである。


「そうか……永田と……ゆるふわ……男は選んだ方が良いぞ」

「い、郁人様!? ち、違いますからね~!! わたしぃはあんな人付き合ったりしませんから~!! 信じてください~!!」

「……まぁ、冗談だ」


 そう、足にしがみつくゆるふわ宏美の肩を叩いて、同情の声をあげる郁人に、涙目で必死に否定の声をあげるゆるふわ宏美に、笑いながらそう言う郁人に、唖然となるゆるふわ宏美なのである。


「つまり、郁人様を裏切って、元カレと復縁した元会長が、元……いえ、彼氏のために、映像をリークしたという訳ですね……元会長に死を……」

「尊い郁人様を裏切って、元カレのために……元会長……元会長の言い訳は理解いたしましたわ……死しかありませんわね」

「一生郁人様推しの同志と信じていたのに……すでに、元会長は永田派とか言う訳のわからない派閥のスパイだったなんて……元会長……私は、私の罪を償うために……会長を〇るしかありません」


 恐ろしい発言をする郁人様親衛隊にマジでビビるゆるふわ宏美は、郁人の足に必死にしがみついて、恐怖の表情を浮かべているのである。


「みんな、とりあえず、落ち着け……俺がゆるふわから、後で二人きりで事情を聞くから、その後、ゆるふわをどうするかは決めてもらってもいいか?」


 もはや、元会長許すマジという郁人様幹部メンバーと、宏美ちゃん悪趣味とドン引き顔の梨緒にそう言う郁人に、郁人様と感激の声をあげるゆるふわ宏美なのであった。

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