第194話乙女ゲーのヒロインは、ギャルゲの主人公に勝ちたいのです。その39

 ゆるふわ宏美は、練習が終わると、更衣室に女性陣達と一緒に行って着替えるのだが、先ほどの梨緒に言われたことをまだ気にしているのである。梨緒と郁人様親衛隊の三人娘が談笑しながら仲良く堂々と体操服から制服に着替えるのに対して、ゆるふわ宏美は、こっそり端っこで、素肌(主に胸)を隠すようにひっそり着替えるのである。


「宏美ちゃん……また、そうやって一人で居るから、ボッチって言われるんだよぉ」


 コソコソ一人で着替えるゆるふわ宏美に、羽織ったシャツのボタンを留めながら堂々と自慢の谷間を見せつけながらそう言い放つ梨緒に、自分の絶壁を見て、絶望の表情を浮かべながら、嫉妬の眼差しで梨緒を見るゆるふわ宏美は、必死の強がりゆるふわ笑みを浮かべるのである。


「わ、わたしぃは一人で着替えるのが好きなんですよ~」

「全く……郁人君にアドバイスする前に、宏美ちゃんもそう言うとこ直さないとだよぉ」


 清楚笑みを浮かべながらそう言い放つ梨緒に、少しムッとなるゆるふわ宏美なのである。


「そうですよ!! ファンクラブのみんな、会長がお友達いないから、仕方なく、いつも郁人様と一緒に居る事、黙認してるんですよ!!」

「尊い郁人様が、ボッチで可哀想な会長と仲良くして差し上げていることは、ファンクラブの皆も理解していますわ」

「会長……一生郁人様推しの同志として、渋々、皆も納得してるけど……本当は……いえ、会長何でもないよ!!」


 ゆるふわ宏美は、そう郁人様ファンクラブ親衛隊の三人娘に言われて、驚愕の表情を浮かべるのである。しかも、おかっぱ娘の不穏な発言に恐怖するゆるふわ宏美なのである。


「まぁ、宏美ちゃんも郁人君も今のままでいいけどぉ……あまり、周りを挑発するようなことしたらダメだよぉ……男子生徒の間とかだと……宏美ちゃん、郁人君の恋人って噂されてるんだよぉ……まぁ、私や小鳥遊さん達も噂されたことあるけどねぇ……噂をわざわざ、私達が否定してるのに、会長である宏美ちゃんが郁人君にべったりだと、私達も庇えなくなるんだからねぇ!! 私達は、ファンクラブ幹部メンバーとして注意しないとダメなんだよぉ」

「梨緒さんの言う通りですよ!! 会長!!」


 ゆるふわ宏美は、梨緒と郁人様親衛隊の三人娘にそう言われて、さらに驚きの表情を浮かべるのである。そう言う噂があるのは知っていたけど、まさか、郁人様ファンクラブの皆が火消ししているとは知らなかったゆるふわ宏美なのである。


「……って~!! なんでわたしぃに報告しないんですか~!! わたしぃ、ファンクラブ会長ですよ~!!」

「え? だって、宏美ちゃん……交友関係ないんだからぁ……噂を否定する人っていないでしょ? 否定してくれる人もいないよねぇ? だから、言わなかったんだよぉ」

「そうですよ……会長……梨緒さんと副会長の優しさですよ」

「会長に話して、尊い郁人様を頼られても困りますもの」

「会長……すぐに郁人様に頼るから……一生郁人様を推す身としては許せないかな」


 そう梨緒達に言われて、何も言えなくなるゆるふわ宏美は、着替えが終わると、トボトボ一人更衣室から出て、郁人様ファンクラブ部室に向かうのである。


(そ、そんな優しさいらないんですよ~!! わたしぃだって~、美月さんっていう親友が居るんですからね~!! ボッチではないんですよ~!! それに、郁人様がわたしぃを頼ってるのであって~!! わたしぃは郁人様を頼ったりなんてしてないですよ~!!)


 そして、心の中で梨緒達に猛反論するゆるふわ宏美なのであった。







「……で~、何でまた居るんですか~!! わたしぃは二度と来ないように言いましたよね~!!」

「……」


 また、郁人様ファンクラブ部室の扉を開くと、ファンクラブメンバーの女子生徒と副会長に囲まれて、正座させられている浩二なのである。しかし、今回は、正座させられて、女子生徒達に威圧されても、何故か深刻そうな表情の浩二なのである。


 ゆるふわ宏美は、呆れながらも、深刻そうな表情で、ゆるふわ宏美と見ている浩二をまた、助けて、申し訳なさそうにファンクラブの部員たちを外に追い出すゆるふわ宏美に、副会長はこう言うのである。


「か、会長……今度から、愛の告白を受ける場所は変えて頂けると助かります」


 そう言って出て行く副会長とファンクラブメンバーに疑問顔のゆるふわ宏美なのであった。そして誰も居なくなると、未だに正座して深刻そうな表情の浩二に呆れながら何があったのかを聞くゆるふわ宏美なのである。


「なるほどですね~……それは~……大変ですね~」

「ああ……細田の提案は却下されちまったぜ……力づくでやめさせようとしても、美月ちゃんが止めるからよ……どうすればいいかと細田に相談しておこうと思ってよ」

「……あまり良くないですね~……それに、郁人様が知ったら~……ど、どうなる事やらですよ~!!」


 ゆるふわ宏美の表情から血の気が失せるのである。もはや、ゆるふわ宏美の中では、郁人は美月のためなら何をしでかすかわからないほど、危ない人認定されているのである。


「朝宮には言っておいた方が良いんじゃねーのか? いちよ美月ちゃんの彼氏なんだしよ」

「絶対ダメですよ~!! 覇道さん消されますよ~!! と、とにかくですね~……ま、真面目に取り組ませるしかないですよ~!!」


 ゆるふわ宏美は、郁人が美月のためだけに、学校という狭い世界だけど、その世界を変えようとしていることを知っているため、郁人が政宗に何かするかもと危機感を感じるが、何も知らない浩二は、何を言ってるんだと言う表情なのである。


「い、いえ~……でも、郁人様のことですから~……もしかしてこれも、予想しての事だとしたら~……た、確かに1組にも勝機があるのかもしれませんが~……い、いえ~、でも~、郁人様……基本バカですから~……そこまで考えますかね~」


 ゆるふわ宏美は、ゆるふわ考えるポーズを取りながら、失礼な独り言をボソボソ呟きながら、浩二の方を見て、あることを思いつくのである。


「では~、永田さん……7組がやる気になれば~、すべての問題は解決するんじゃないですか~? さすがに、本気で練習に取り組めば~、覇道さんも真面目に練習するんじゃないですか~?」

「いや……それはそうかもだけどよ……アイツ、僕の話なんて聞きやしねーぜ!!」

「フフフフ、わたしぃに任せてください~……わたしぃはとても優秀ですからね~」


 未だに、ボッチでコミュ障と言われたことを根に持っているゆるふわ宏美は、悪いゆるふわ笑みを浮かべて、そう言うと、浩二にある提案と、あるものをあげるのであった。


「細田……やっぱ、お前は天才だぜ!! これからも、困ったら僕は、細田を頼るぜ!!」

「わたしぃは天才ですからね~!! でも~、出来るならもう、二度とわたしぃには頼ってこないでくださいね~!!」


 さすゆると褒め称える浩二に、ドヤ顔で無い胸を張るゆるふわ宏美だが、出来るなら、もう二度と浩二の相談には乗りたくないので、誤魔化されずに、浩二に厳しくそう言い放つゆるふわ宏美なのであった。

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