第191話乙女ゲーのヒロインは、ギャルゲの主人公に勝ちたいのです。その36
いつも通り、校門で待っていた浩二は、美月とゆるふわ宏美に朝の挨拶をすると、顔をしかめて、不機嫌ながらも挨拶を返す美月なのである。そんな美月に対して、ゆるふわ苦笑いのゆるふわ宏美と、喜びの表情の強面浩二なのである。
「では~、美月さん、永田さん……あの件は任せてくださいね~……はぁ~」
「え? うん?」
「細田……さすがは、細田だぜ!! やっぱり、頼りになるぜ!!」
「……もう二度とお願いは聞きませんからね」
そして、7組教室前に着くと、なぜか、絶望のゆるふわ笑みを浮かべながらそう言うゆるふわ宏美に、疑問顔の美月と、喜ぶ強面の浩二なのである。さすゆると、ゆるふわ宏美を持ち上げる強面浩二をジト目のゆるふわ笑みで、見つめながら、冷たくそう言い放つゆるふわ宏美は、ため息をつきながら、1組教室にトボトボと歩いて行くのであった。
「いや~、美月ちゃん本当に助かったぜ!!」
「?」
浩二がなぜか、嬉しそうに両手を合わせてすまんのポーズをしながら、美月にお礼を言うと、疑問顔で顔をしかめる美月は、相変わらずよくわからない人と思いながら、無視して教室に入って、自分の席に向かう美月なのであった。
「美月ちゃん、体育祭まで、もう時間ないからよ、今日から放課後リレーのバトン渡しの練習しようと思ってるけどよ……美月ちゃんは大丈夫か?」
「生徒会で体育祭実行委員の手伝いがあるから、少ししか時間できないけど、大丈夫だと思うよ」
「わかったぜ!! 他の奴らは僕から、声をかけておくぜ!!」
席に座って、鞄から教科書やノートを取り出して、机の引き出しに仕舞う美月の所にすぐに鞄を自分の机に放り投げてやって来た浩二はそう言うのである。
(大丈夫……この勝負は絶対に負けられないけど、運は私に味方してくれてる……さすがに、郁人一人でも、この戦力差を覆すのは無理なはずだよ)
美月は、自分にそう言い聞かせて、バトンの受け渡しさえ練習すれば、郁人達1組に負けることはないと放課後の練習に対してやる気を出すのであった。
しかし、放課後に、わざわざ、体操服に着替えて、運動場に向かった美月を待っていたのは、爽やかイケメンスマイルを浮かべている政宗と、浩二の二人なのであった。
「えっと……他の三人は?」
美月が率直に疑問を口にすると、浩二が申し訳なさそうに頬を掻きながら、美月にこう言うのである。
「すまねーぜ!! 美月ちゃん……他の奴らは部活に行っちまったぜ……陸上部だからバトンの受け渡し何て練習しなくても大丈夫って言って聞かねーんだよ」
「まぁ、浩二……彼らは陸上部だ……練習など普段しているし、彼らの言う通り、部活で走る練習をした方が効率もいいだろう……そもそも、練習などしなくても、1組には余裕で勝てるさ」
謝る浩二に対して、余裕の表情の政宗は、美月と浩二に対して、心配性だなと呆れているのである。
「とりあえず、今日は三人で練習しようぜ……明日は必ず、他の三人も連れて来るぜ!!」
「……では、さっそく……俺と美月でバトンの受け渡しの練習をしようか」
浩二が美月に頭を下げている様子を、やれやれというポーズで呆れながら、政宗は美月にそう言うのである。
「……そうだね」
露骨に嫌そうな美月だが、これも、郁人に勝つ為と、我慢して政宗とバトンの受け渡しの練習を始めるのである。
しかし、最初の一回から、美月と政宗の息が合わず、バトンの受け渡しが上手くいかないのである。二回、三回と繰り返すが、一向に上達しないのである。
「美月……大丈夫だから、安心してしっかりバトンを受け取ってくれないかい?」
「ご、ごめんなさい」
四回目はついに、バトンを落としてしまう美月に、爽やかイケメンスマイルでそう言う政宗に、謝る美月は、どこか居心地が悪そうなのである。
そして、五回目も同じように美月は、バトンを落としてしまうのである。
「政宗……お前、もう少し、美月ちゃんが受け取りやすいよーに出来ねーのか?」
「……どういうことだい? 浩二……俺が悪いって言うのかい?」
浩二は、険しい表情で、そう政宗に注意するが、不満そうな政宗なのである。
「いや、まずバトンは端っこ持てよ……そんな、バトンの中央を持ってたら、美月ちゃんだって受け取りにくいだろーが…あと、バトンは手を伸ばして渡すだろーが……なんで、わざわざ、自分体に引き寄せて渡そうとするんだよ!! おかしいだろーが!!」
「この方は、美月も俺もやりやすいからさ」
あからさまに、美月に触れたくて、ワザとやっていると感じた浩二が政宗にそう注意するのだが、やれやれと呆れる政宗にイラっとする浩二なのである。
「とりあえず、僕と代われ……手本を見せてやるぜ!! 美月ちゃん…わりぃけど、付き合ってくれねーか」
「う、うん……わかった」
そう言って配置につく美月と浩二を険しい表情で見つめる政宗なのである。
「じゃあ、行くぜ!!」
「うん」
そう掛け声を発して、浩二は走り始め、美月との距離が近づくと、美月がバトンを受け取る姿勢を取り、後方に手を伸ばすと、バトンの端を持って、美月の手に、バトンの端の部分を置くようにスムーズに渡す浩二なのである。そのため、美月もスムーズにバトンを受け取り、スムーズに走り始めることができたのである。
「美月ちゃん……どうだった?」
「うん……受け取りやすかったよ」
「だろ!! 政宗、今のが手本だぜ!!」
美月にが素直にそう言うと、鼻を右手で触りながらドヤ顔の浩二は、政宗にそう言うのである。
「本番はきちんとやるさ……さぁ、美月……練習を再開しようか」
「……うん」
美月も浩二も、政宗の発言に不安を感じると、案の定、バトンの受け渡しを直す気はなく、美月に無駄に触れようとする政宗なのである。
「おい!! 政宗!! いい加減にしろ!! 真面目に練習しろって!!」
そんなことを何回か繰り返すと、露骨に美月は嫌がって、バトンを変な姿勢で受け取ったり、スタートが露骨に早かったりと、全く練習にならないのである。そんな、ふざける政宗に浩二がついに怒るのだが、政宗は気にも留めてない様子なのである。
「大丈夫さ……余裕で7組が一位を取るさ……美月も結構バトンの受け渡しには慣れてきたみたいだしね」
「慣れてきたって!? 露骨にダメになってるだろーが!! 美月ちゃんが怖がってるのわからねーのか!? 完全に委縮してダメになってるだろーが!!」
「そうならないための練習なんじゃないのかい? さて、そろそろ、時間だし、美月…生徒会に行こうか」
浩二が本気で怒っても、イケメンスマイルを浮かべてそう言う政宗に呆れ果てる浩二に、美月は露骨に嫌そうな表情を浮かべながら、政宗を無視して、更衣室に向かうのである。そんな、美月の後を嬉しそうについて行く政宗に、どうしようかと頭を悩ませる浩二なのであった。
「で……わたしぃにそれを何とかする方法を考えて欲しいってことですか~?」
「細田なら、完璧に解決できると思ってよ!!」
この間まで、敵視していたはずのゆるふわ宏美に対して180度態度を変えた浩二は、バトン練習を終えて、またも、郁人ファンクラブを訪れ、ゆるふわ宏美に先ほどの練習内容の愚痴を言う浩二なのである。
もちろん、浩二は、案の定、またも、堂々と郁人様ファンクラブを訪れたところを郁人様ファンクラブメンバーに取り押さえられ、部室に拉致られ、部室の中央に正座させられて、ファンクラブメンバーの女子生徒に囲まれていたのであった。
そして、1組のリレーの練習から帰ってきたゆるふわ宏美が部室に来て、その光景を見て呆れながら他のメンバーを退出させて、仕方なく助けてあげて、浩二の話を聞く優しいゆるふわ宏美なのでる。
「さすがにあそこまで、露骨に美月ちゃんにセクハラする政宗をどうするべきかと悩んでるんだぜ……美月ちゃんも、嫌がってる様子だけど……朝宮に勝つ為に我慢してるみてーで……細田なら、何とかしてくれるって思ってよ!!」
「……永田さん……わたしぃの事~、便利なお助けキャラか何かと思ってませんか~?」
強面な瞳をキラキラさせながら、ゆるふわ宏美に助けを求める浩二に、ジト目なゆるふわ笑みでそう言うゆるふわ宏美なのである。
「ああ、細田なら、僕を助けてくれるって信じてるぜ!!」
「ドヤ顔で~、そんなこと言わないでくださいよ~!! 前まで~、あんなにわたしぃの事嫌ってたくせに~」
「そんな、昔の事は忘れたぜ!! それに、元々、僕は美月ちゃんを悪い男から守るために、学園のアイドルになってもらった訳なんだぜ!! 今、美月ちゃんのために動かないでどうするってやつだぜ!!」
「前まで~、その悪い男の一人だったくせに~、何言ってるんですか~」
親指を立てて、ドヤ顔でそう言い放つ浩二に、呆れたゆるふわ笑みを浮かべるゆるふわ宏美に、やはり、最高のドヤ顔でそう言い放つ浩二に、呆れ果てたゆるふわ笑みで、ぼそりとそう言うゆるふわ宏美なのである。
「細田のお陰で、僕は正気に戻ったんだぜ!! だからこそ、細田……僕はお前を信じてるぜ!!」
「絶対、正気に戻ってない人の台詞じゃないですか~!! でも、確かに~、覇道さんの行動は~、同じファンクラブを運営するものとしては~、許せませんね~……まぁ、簡単な方法は~、リレーの順番を変える事じゃないですか~」
「……そんな手が!? 流石、細田だぜ!!」
「……永田さん……わたしぃの事馬鹿にしてますか~?」
至極当たり前の意見を述べるゆるふわ宏美に、さすゆると褒め称える浩二に、イライラゆるふわ笑みを浮かべて、怒るゆるふわ宏美なのである。
「いや、マジで思いつかなかったぜ!! 細田!! サンキューな!!」
「……もう二度と~、相談しに来ないでくださいね~」
もう用事は済んだとばかりに、勢いよくそう言って、郁人様ファンクラブ部室から出て行く浩二に、冷たくそう言い放つゆるふわ宏美なのであった。
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