第134話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、幼馴染で恋人なので、ずっと一緒に居たいのです。その6

 美月は、昼休みに入り、一人で風紀委員会室に向かおうとするが、一緒に呼び出された政宗と浩二がすぐに、美月の後をついてくるのである。


「なんで俺達が呼び出されないといけないのだか…」

「だな…これも全部朝宮の野郎のせいだぜ」

「……」


 不満を言うイケメン男子生徒二人を無視して、美月は風紀委員会室に着くと、ドアをノックするのである。


「1年7組の夜桜美月です」

「……入れ」


 扉の向こう側から、不機嫌そうな風紀委員長の声が聞こえて、美月は、失礼しますと言って、緊張しながら扉を開いて風紀委員会室に入ると、その後ろをムスッと不機嫌そうについてくる政宗と浩二なのである。


「さて、なぜ呼び出されたかはわかるな?」

「え、えっと……な、何でですかね?」


 入室すると、数名の風紀委員の女子生徒達に睨まれて、タジタジな美月は、腕を組み不機嫌そうに椅子に座りながらそう風紀委員長にそう言われるのだが、美月は呼び出された理由に心当たりはないのであった。


「……ほお、なるほど……まぁ、最近は、おとなしくしていたみたいだから、何も言うまいと思っていたのだが……郁人様に……いや、朝宮に迷惑をかけるとなると話は別だ」

「……郁人の事。今、郁人様って言いましたか? 風紀委員長?」

「……言ったな」

「……確かにそう言ったぜ」


 郁人様と言った風紀委員長は、顔を赤くして、そっぽを向いて、誤魔化しながらそう言うのだが、美月と政宗と浩二はスルーせずに突っ込むのである。


「……気のせいだ……そんな事よりもだ!! 貴様等、自分達がなぜここに呼び出されたのか本当にわかってないようだな!!」


 あからさまに、怒り出した風紀委員長に、しまったという表情を浮かべる政宗と浩二なのだが、美月はまだ、風紀委員長に、郁人様って言いましたかと疑問顔のジト目なのであった。


「えっと…つまり、あれですかね……郁人の事で私に話があるんですかね?」

「美月!?」

「美月ちゃん!?」


 美月は、風紀委員長の様子から、全てを悟ったのである。美月は昔から、郁人の事でよく同性に呼び出されていた過去があり、嫌味や文句を言われるのだろうと警戒する美月に対して、焦る政宗と浩二なのである。


「……夜桜……貴様、今、郁人様の名前を呼び捨てに!? あ…いや…なんでもないぞ…それもあるが、今回はその件ではなく…夜桜…貴様は学園の風紀を乱している…いいか、今日で貴様のファンクラブは解散して、風紀を守り、男子生徒達とは一定の距離を保って生活しろ」

「え? あ……わかりました」

「おお、そうか…わかってくれるのか? なんだ、夜桜…話せばわかるじゃないか……そこの男子共もいいな…夜桜とは一定の距離を保って生活するようにな」


 厳しい表情で美月にそう言うと、意外と素直にわかりましたと言う美月に、機嫌をよくする風紀委員長は、今度は、不満そうな表情のイケメン二人に対してそう言うのである。


「いや…それは無理っす…風紀委員長……美月ちゃんは学園のアイドルなんだぜ……今更ファンクラブを解散なんてできねーぜ」

「そうだな…そもそも、俺は美月の幼馴染だから……離れるつもりはない」

「なんだと!? 貴様等」


 そう言う政宗と浩二を、鋭い眼光で睨みつける風紀委員長を、負けずと、睨み返す浩二と政宗になのであった。


「ならば、こちらも、実力行使しかあるまいな……夜桜……貴様は話の分かる奴だと思ったんだがな……やはり、話し合いでは解決せんか」

「え!?」

「いいぜ…風紀委員長……望むところだぜ…美月ちゃんのファンクラブの結束力を見せてやるぜ」

「そうだな……風紀委員の横暴には、俺達は決して屈しない…そうだろ? 美月?」

「え!?」

「そうか…ならば仕方ない……こちらも、今度から厳しく取り締まらせてもらうからな…覚悟しろ…夜桜美月!!」

「え!? なんで私!?」


 勝手に話が進み、勝手に風紀委員長から悪者認定される美月は、結局、よくわからないままに、風紀委員会室から出て、教室に戻る美月の後ろで、絶対に風紀委員の横暴には屈しないとやる気に満ちている政宗と浩二なのであった。






生徒会室を後にした郁人とゆるふわ宏美は、今現在、お昼を食べるために屋上に向かっているのである。


「納得いきません~!! どうするんですか~!?」

「まぁ、ファンクラブ解散するしかないだろ」

「それはダメですって~!!」

「そうは言ってもどうせ、メンバーだって、1組の子達だけだろ…創立記念祭でクラス代表で俺を応援するために作った部活なら、もう必要ないだろ」

「……あの~、郁人様……それは違いますって~」


 相も変わらず勘違いしている郁人に、呆れるゆるふわ宏美なのである。生徒会長に抗議したゆるふわ宏美だが、決定事項ですと嫌な笑みで返され続けて、さすがのゆるふわ宏美も怒りの表情なのである。


「しかし、もう屋上も使えなくなるんだろ……まぁ、俺は教室で食べた方が楽だからいいけどな」

「そうらしいですね~……郁人様が教室で昼食を食べられると~、教室が大変なことになるので~…ご遠慮願いたいのですけど~……しかし、あの生徒会長……本当にどうにかしないといけませんね~」


 ゆるふわ宏美は、郁人が教室で食べることにより、何かトラブルが起きないように屋上で、ファンクラブ幹部メンバーと選ばれた抽選メンバーで昼食会をしているわけで、屋上が使えなくなると困るゆるふわ宏美なのである。


「まぁ、創立記念祭はなんとかなるだろ…ゆるふわ…ファンクラブなくても、俺頑張るからな」

「……郁人様…だからですね~郁人様はもう、学園の人気者でトップなんですって~」

「ああ…ゆるふわ……お前の期待に頑張って答えて見せるからな…クラスのみんなの期待を裏切る訳にはいかないしな」

「……もう、それでいいですよ~…でも、ファンクラブ解散はどうにかしないといけませんよ~!!」

「でも、どうにもできないだろ?」

「……そ、それは~……な、何とかしてみますからね~!!」


 もはや、郁人の勘違いの鈍感さに呆れ果てるゆるふわ宏美は、郁人に真実を伝えることを諦め、郁人様ファンクラブを存続するために気合を入れるゆるふわ宏美に、そうか、頑張ってくれと、どうでもいい感じの郁人なのであった。

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