第115話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、勉強が得意なのである。その15
美月と梨緒が一食触発ムードとは知らず、郁人はトイレに行く振りをして、リビングから廊下に逃げ出し、玄関前まで撤退するのである。
「郁人様……美月さんお怒りですよ~…どうするんですか~!?」
「もちろん…後で全力で謝るしかないだろ……とりあえず、土下座すれば許してくれると思うか?」
「し、知らないですよ~!? 今回の事は郁人様が全面的に悪いんですから~…どうにかしてくださいよね~」
「……じゃあ、とりあえず……美月に今から全力で謝りに行くか」
郁人が決意に満ちた表情で、そう言ってリビングに戻ろうとするため、ゆるふわ宏美は、郁人の上着を掴んで、必死に止めるのである。
「待ってください~!! それはダメですから~!! 美月さんがみんなから、さらに恨まれてしまいますよ~!!」
「……じゃあ、どうするんだ? とりあえず、まず、美月に謝らないと……美月のあんな冷たい表情そうそう見る機会ないぞ……そう言う意味ではレアだから、貴重な経験だな」
郁人は先ほどの美月の表情を腕を組んで思い出すと、美月のレアな表情が見れたので、これはこれでラッキーと前向きに考えだすのである。
「何言ってるんですか~!! わたしぃにとっては恐ろしいだけですから~…どうにかしてくださいよ~!!」
「……とりあえず……美月と二人きりになって、謝れればいいが……よし…ゆるふわ、俺はこのまま、トイレに籠ったことにして、美月をここに連れてきてくれないか?」
「な、何でわたしぃが~!? 嫌ですよ~!! 絶対梨緒さんに怒られますよ~!!」
郁人がドヤ顔でゆるふわ宏美にそう提案すると、絶対に嫌だと必死に拒否するゆるふわ宏美なのである。
「ゆるふわ……頼んだ…お前しか頼める奴はいない……美月をここに連れてきてくれるだけで大丈夫だ…ゆるふわ…お前ならできる!!」
「……わたしぃなら~……いやいや~!! 騙されませんよ~!! 絶対に嫌ですからね~!!」
一瞬納得しかけるゆるふわ宏美だが、ハッとなり、郁人の事を睨んで絶対嫌だとノーを突きつけるのである。
「ゆるふわ……お前だけが頼りなんだ…頼む……お前ならやってくれると信じている!!」
「い、郁人様……い、いえ~…騙されませんよ~!!」
「ゆるふわ……大丈夫だ…ただ、美月を廊下に誘導すればいいだけだ……美月だけが移動すれば誰も文句は言えないだろ?」
「……そ、それは~?」
郁人に両肩を掴まれて、必死に説得されるゆるふわ宏美の心が揺れるのである。
「……美月にさりげなく、伝えれば美月が勝手に廊下に移動する…後はゆるふわは、何事もなくその場に居座ればいいだけだ……な? 簡単だろ?」
「……そ、そうですね~…それなら~…なんとか~」
「よし、決定だな!! 頼んだぞ!! ゆるふわ!! じゃあ、俺はトイレで待ってるな!!」
郁人はそう言って、すぐにトイレに入って、ゆるふわ宏美に丸投げするのである。しまったと思ったゆるふわ宏美だが、もう郁人はトイレの中なのである。
「だ、騙されました~!! 郁人様!! まだ、わたしぃはやるとは言ってませんよ~!!」
「……」
トイレのドアを叩いて、郁人にそう言うゆるふわ宏美だが、完全にスルーする郁人なのである。困り果てたゆるふわ宏美は渋々リビングに戻って、郁人の考えた作戦を実行に移すのであった。
しかし、リビングに戻った瞬間にゆるふわ宏美は、後悔するのである。心の中で郁人を物凄く恨むゆるふわ宏美は、睨み合いを続けている美月と梨緒を見て、これは作戦は失敗ですね~と早々に諦めるのである。
「夜桜さん……何か気に食わないことでもあるのかなぁ?」
「……別に……何もないけど」
「じゃあ、なんで、そんな目でこっちを見てくるのかなぁ?」
「別に……見てないけど…自意識過剰なんじゃない?」
「それは夜桜さんの方なんじゃないかなぁ?」
バチバチな美月と梨緒なのである。挑発する梨緒に、睨みながらそう言う美月なのである。露骨に不満がありますと言う表情の美月を、笑顔で挑発する梨緒なのである。
「そっかぁ…じゃあ、美悠ちゃん…郁人君が戻るまで、私が勉強見てあげるからねぇ」
「あ……ありがとう」
美悠は、実の姉に睨まれて、冷や汗ダラダラながらも、梨緒にそう言われてお礼を言う美悠に、あからさまに不満気な美月なのである。
「夜桜さん? どうかしたのかなぁ?」
「別に……何でもないから……ただ、教えれるほど成績良いのかなって思っただけだけどね」
「……さすがに入試受けたばかりだから、問題ないけどねぇ」
「……そう」
あからさまに、美月の機嫌がみるみる悪くなり、怒りゲージマックス状態に、思考停止で、二人のやり取りを眺めていたゆるふわ宏美は、すぐに美月の隣に座ってフォローに入ろうとするのである。
「み、みなさん戻りましたよ~……さぁ、美月さん勉強教えてくださいね~!!」
「……ひろみん……郁人はどうしたの?」
「い、郁人様はトイレですよ~!!」
美月が不機嫌にそう聞いてくるので、ゆるふわ宏美は素直に言って、さぁ、美月さん廊下に行ってくださいと思うのである。
「……そう」
「……え? み、美月さん!? ど、どうかしたんですか~!?」
美月に郁人はトイレと言えば、廊下に向かうと思ったゆるふわ宏美は、素っ気なく返事を返して、不機嫌に勉強を再開する美月に疑問を口にするのである。
「別に……どうもしてないよ……ひろみん…じゃあ、勉強再開しようね」
「…………み、美月さん!! 郁人様はと、トイレですよ~」
美月がそう言って、数学の問題をゆるふわ宏美に解かせようとするので、勉強から逃げるため、否、郁人のために、再度美月に小声でそう言うゆるふわ宏美なのである。
「うん…それはさっき聞いたよ……ほら、ひろみん、勉強するよ」
「あ…あの~…美月さん!?」
なぜか、先ほどと違いやる気に満ちている美月に、無理やり勉強させられるゆるふわ宏美なのである。どうにかして、廊下に美月を向かわせなければと思うゆるふわ宏美なのだが、頑なに、勉強を教えてくる美月なのである。
「美悠ちゃん、何かわからないことがあったら、お姉さんに聞いてねぇ」
「う、うん……ありがとう…梨緒お姉ちゃん」
ニコニコ笑顔で美悠を見ながら、そう言う梨緒を、シャーペンがミシッと出してはいけない音が出るほどの力で握り締めて、ギロリと睨む美月なのである。
「ひろみん!! 何かわからないことがあったら聞いてね!! 私が何でも教えてあげるからね!!」
「あ…は、はい~…あ、ありがとうございます~」
美月は、ぎこちない笑みを浮かべながら、ゆるふわ宏美に優しく言うのである。これは、あからさまに梨緒への対抗心から、言っているのだと察したゆるふわ宏美は、なんとかしないと思うのだが、この状況ではどうすることもできないのである。しかも、この状況を一緒に何とかしてくれそうな相方の郁人はトイレで待っているのである。
(あ…あまり、トイレが長すぎるのもが、学園のアイドルとしてまずいですよ~!! わ、わたしぃが何とかしないといけません~!!)
この場では、郁人様ファンクラブの幹部メンバーが揃っているのである。学園のアイドルがトイレが長いなど幻滅モノである。郁人様ファンクラブ会長としてなんとしてでも、それは阻止しないといけないと思うゆるふわ宏美なのである。
そんな中、郁人は遅いなとトイレの中で呑気に美月が来るのを待っているのであった。
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