第96話乙女ゲーのヒロインは、幼馴染と恋人同士になれたのに、よそよそしくなってしまうのである。 その21
ホームルームが終わり、いつも通り、郁人の所に来るゆるふわ宏美と梨緒なのである。
「宏美ちゃん…頑張ってねぇ…私は味方だからねぇ」
「いえ~…ですから~…それは誤解でして~」
「サポートは任せてねぇ!! 全力で応援するからねぇ!!」
超絶張り切る梨緒に、困り果てるゆるふわ宏美なのである。そんな会話をしていると、突然、梨緒がスマホを取り出して、画面を見ると険しい表情を浮かべるのである。
「ごめんねぇ…私、用事があるからぁ…二人はおとなしく教室にいてねぇ」
梨緒はそう言って、素早く、クラスの女子生徒達を引き連れて、教室の外に向かうのである。郁人とゆるふわ宏美は、疑問顔で首を傾げると、廊下から、美月、美月ちゃんとよく知る人物の叫び声が聞こえてくるんである。
「何かあったのか?」
「ですね~…わたしぃ達も行ってみますか~?」
さすがに、知っている人物が、美月の名前を叫んでいれば、気になる郁人とゆるふわ宏美なのである。
「郁人様と会長はここに居てくださいね」
「郁人様…本日も本当に尊いです」
「一生推しますね」
いつもの親衛隊の三人娘が、教室を出ようとするのを止めに入るのである。
「す、すまないがどいてくれないか?」
「それはできません」
ニコニコと笑みを浮かべて、通せんぼする三人娘に、渋々従う郁人なのである。問題を起こすのは、ゆるふわ宏美に止められているからである。
「ゆるふわ…悪いがお前が様子見てきてくれないか?」
「はい~…任せてくださいね~」
小声で、ゆるふわ宏美にお願いする郁人に、二つ返事で了承して教室を出ようとするゆるふ宏美に、やはり、立ちはだかる三人娘なのである。
「会長も、ここに居てくださいね」
「あの~…わたしぃは会長ですよ~…わたしぃも知る権利が~」
「いいから、会長は座ってて!!」
「会長は黙ってて」
ゆるふわ会長にアタリが強い三人娘なのである。あまりの、アタリの強さに、さすがのゆるふわ宏美のゆるふわ笑みも引きつり、おとなしくするのであった。
その頃、美月は、全力ダッシュで廊下を走るのでる。そんな美月を、全力ダッシュで、大声で美月の名前を呼びながら追いかけるイケメン二人は、物凄く目立ち、生徒達は何事かと、騒ぎ出し、野次馬が廊下に出てくるのである。
さすがに、7組の教室から、1組の教室までなら、美月の方が早く1組の教室にたどり着こうとするのだが、1組教室の前に立ちはだかるのは梨緒なのである。
「夜桜さん…廊下は、走ってはダメだってぇ…小学生の時習わなかったのかなぁ?」
梨緒率いる郁人のファンクラブメンバーの女子生徒達が1組教室までたどり着けないように、壁のように立ちはだかるのである。梨緒は、先ほど、7組クラスに潜ませている、郁人ファンクラブメンバーから、緊急事態宣言を受けて、素早く陣地を形成したのである。
その時間はわずか40秒である。仕方なく足を止めて、梨緒を睨みつける美月に、追いつく政宗と浩二なのである。
「……そこ…どいてくれないかな?」
「美月ちゃん…いいから、7組教室に戻ろうぜ」
「ああ…美月…さぁ…戻ろう」
さすがに、この異様な雰囲気に、引きつった表情の政宗と浩二は、梨緒と、ファンクラブメンバーの女子生徒達を睨みつけて、臨戦態勢な美月をなだめるが、完全スルーする美月なのである。
「ごめんねぇ…夜桜さん……それはできないんだけどぉ…えっとねぇ…よ、夜桜さんは…そのひ、宏美ちゃんの事はどう思っているのかなぁ?」
唐突に、顔を少し赤らめて、美月に対して、少し聞きづらそうに訊ねる梨緒に、疑問の表情を浮かべる美月なのである。
「なんでそんなことを、今聞くのよ?」
「あ…えっと…ふ、深い意味はないだけどねぇ…よ、よければ教えてくれないかなぁ?」
梨緒にしては、しどろもどろで、物凄く瞳が泳いでいるのである。美月の表情はみるみる険しくなるのである。
「ひろみんは大切な親友だよ…そんな事より、私、1組の教室に用事があるから…そこ、通してくれないかな?」
「えっとぉ…よ、夜桜さん…宏美ちゃんの親友としか思ってないのかなぁ? た、例えば…その……す、す、好きとか(異性として)」
「…好きだよ(親友として)そんなことより、そこ通してもらえないかな?」
美月のその発言に、ニッコリ清楚笑みを浮かべる梨緒に、さすがの美月も、気圧されるのである。
「そっかぁ…そうなんだねぇ…私は良いと思うよぉ…むしろ応援するよぉ!!」
梨緒は、そう言って、一人の女子生徒に何やら指示をして、教室に向かわせるのである。その様子に、見守っていた浩二と政宗が口を出すのである。
「美月…早く戻ろう……こんなところで騒ぎを起こすのはよくない」
「そうだぜ、美月ちゃん…戻ろうぜ」
「……じゃあ、勝手に二人で戻れば? 私は、1組に用があるのよ!!」
美月は、イケメン二人にそう冷たく言い放ち、梨緒と女子生徒達と対峙するのである。
「郁人様どうするんですか~!?」
「何がだ?」
「梨緒さん…完全に勘違いしてるじゃないですか~!!」
三人娘が監視する中で、梨緒が居ないので、郁人に小声で不満を言うゆるふわ宏美に、首を傾げる郁人なのである。
「何も問題ないだろ? 別に、ゆるふわが美月の事好きってだけだろ? 何が問題なんだ?」
「い、郁人様~!!本気で言ってるんですか~!?」
「ああ…というか…そんなことより…廊下から…美月の声がしないか?」
「そ、そうですね~…ま、まさか~」
ゆるふわ宏美は、嫌な予感がして、冷や汗が流れるのである。そんな、二人の元に、女子生徒が二人来て、ゆるふわ宏美の両サイドに立つと、がっしりと、二人に腕を掴まれるのである。
「な、なななな、なんですか~!?」
捕まるゆるふわ宏美は、有無を言わさず、連れていかれるである。
「た、助けてください~!! 郁人様~!!」
「ゆるふわ…頑張って、様子を見てきてくれ」
「い、いくとさま~!!!」
完全に、三人に包囲されている郁人は、連れていかれるゆるふわ宏美にそう言うと、恨めしい悲鳴あげるゆるふわ宏美なのであった。
「な、なんですか~!? わ、わたしぃに何させる気ですか~!!」
そして、1組教室から、ゆるふわ宏美が、二人の女子生徒に、両腕を掴まれて、連行されてくるのである。
「宏美ちゃん…ほらぁ…夜桜さんが遊びに来てくれたよぉ」
ゆるふわ宏美に、ドヤ顔で、サポートは任せてとアピールする梨緒に、まだ勘違いしているんですか~と悲鳴をあげるゆるふわ宏美なのである。
「ひろみん?」
グイグイと女子生徒達は、宏美を美月のところに押し出すのである。さすがに、警戒する政宗と浩二が、美月の前に出ようとするが、梨緒がキッと政宗と浩二を睨みつけるのである。
「二人とも、邪魔しないでもらえないかなぁ…夜桜さんは、宏美ちゃんに会いに来たんでしょ?」
「え? いや、私はいく…」
「美月さん!! 余計なことを言ってはいけませんよ~!!」
焦るゆるふわ宏美は、状況を理解したのである。美月が、郁人に会いに1組の教室に来たのだと、そのため、美月にダメですよ~と口を塞ぎにかかるのである。
そんなやり取りをしていると、ゾロゾロと、美月のファンクラブメンバーの男子生徒も集まって来るのである。もはや、廊下は、女子VS男子の構図ができているのである。その中心に居るゆるふわ宏美は、頭を抱えるのであった。
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