第51話乙女ゲーのヒロインは、ギャルゲーの主人公の手が握りたい。 その7
冷や汗ダラダラで、スマホの通話に出るゆるふわ宏美である。ソロソロと、非常階段の踊り場の扉を開こうとする美月の首根っこと捕まえて、引き寄せるゆるふわ宏美である。
「…もしもしです~」
「あ…宏美ちゃん、郁人君に何か用なのかなぁ? 要件なら、私が聞こうとおもってぇ」
「……あ…その…郁人様にお話がありましてですね~」
「ふ~ん…じゃあ、私も、そっちに行っていいかなぁ? いいよねぇ? ひ、ろ、み、ちゃん?」
恐怖で、ゆるふわ宏美のゆるふわ笑顔が、死を悟った笑みに変わるのである。そんな宏美を疑問顔で見た後、やはり、美月は、ソロソロと、この場を去ろうとするが、やはり、ゆるふわ宏美に首根っこを捕まえられるのである。
「えっと…そのですね~…ど、どうしてもですね~…郁人様だけにお話がありまして~」
「じゃあ、私は、聞かないようにするよぉ…それとも…私が、宏美ちゃんの所に行ったらダメな理由があるのかなぁ? ねぇ? 宏美ちゃん…どうなのぉ?」
「……あ…いえ~…その~…」
圧倒的圧を感じるヤンデレボイスに、ゆるふわ宏美も言葉を失うのである。そもそも、あまりに美月が、握手会に参加させろとうるさいので、では、わたしぃが何とかしますと安請け合いしたことが原因でもあるのである。
つまり、自業自得な部分もあるゆるふわ宏美である。しかし、さすがに、美月と梨緒を、会わせるのは、危険だと判断したゆるふわ宏美の考えは、間違ってはいないのである。
「ひろみん…さっきから誰と話してるのよ?」
「あ…いえいえ~…なんでもないですよ~!!」
美月が、宏美に話しかけてきたので、焦って、宏美は美月の口を塞ぐのである。美月はう~、う~とうなっている。
「…今…宏美ちゃん以外の女の子の声が聞こえた気がするなぁ…ねぇ…ひ、ろ、み、ちゃん…もう一度聞くねぇ…今、宏美ちゃんはお一人かなぁ? どうなのかなぁ?」
「…いやですね~…わたしぃ一人ですよ~…」
冷や汗ダラダラな宏美は、必死に誤魔化しにかかるのである。できる限り普段通りの口調で平常心を意識する宏美である。
「ひ、ろ、み、ちゅん…私は…嘘は嫌いだなぁ…嫌いだよぉ…ひ、ろ、み、ん」
恐怖に体が震えるゆるふわ宏美である。完全にバレていると悟ったゆるふわ宏美である。とりあえず、美月は、ゆるふわ宏美の拘束から逃れて、ゆるふわ宏美を見ると、恐怖の表情を浮かべているので、首を傾げる美月である。
「……あ…スマホの電池が切れそうです~」
サッとスマホの電源を落とすゆるふわ宏美である。冷や汗ダラダラで、ガクリとうなだれるゆるふわである。
「ど…どうしたの? ひろみん?」
「わたしぃ…明日死ぬかもしれません~」
「な、なにがあったの!? ひろみん!?」
うなだれるゆるふわ宏美を抱きかかえる美月である。宏美は、今にも死にそうな表情を浮かべている。
「美月さん…すみませんが~…わたしぃは、もう、ダメみたいです~」
「ひろみん!?」
「なので~…とりあえず~…握手会は諦めてくださいね~」
「それは嫌だよ!!」
気まずい沈黙が訪れる。ゆっくり立ち上がる宏美は、美月を見つめて、ニッコリ笑顔を浮かべる。
「美月さん…我儘言わないでくださいね~…そもそも、握手会はもう終わりましたからね~…いい加減諦めてくださいね~!!」
「嫌だよ!! ひろみん!! じゃあ、明日、明日また握手会しようよ」
「無理ですって~!! それに、やっぱり、後で、個人的に郁人様にお願いすればいいじゃないですか~!!」
「それが出来ないから、握手会なんだよ!!」
口論を始める美月とゆるふわ宏美である。やはり、どちらも譲らない口論はしばらく続くのである。
郁人は、冷や汗ダラダラで、梨緒と宏美の会話を聞いていた。ゆるふわ宏美に、南無~と合掌するのであった。
「フフフ、郁人君…宏美ちゃんの用事は大丈夫みたいだよぉ」
「そ…そうか…でも…あれじゃないか…迎いには、行った方がいいだろう…俺が行ってこようか?」
「必要ないよぉ…戻って来れるなら、勝手に戻て来るよぉ…戻って来れないならぁ…そういう事だよねぇ」
にっこりヤンデレ笑顔で郁人にそう言い放つ梨緒に、言葉を失う郁人である。とりあえず、貰った缶のお茶を飲む郁人である。
「フフフ…郁人君…そういえば、宏美ちゃんと…仲がいいよねぇ…なんで、仲が良くなったのかなぁ?」
「い、いや…仲良くなったつもりはないんだが…」
「そうなんだぁ…ふ~ん…最近…宏美ちゃんが…夜桜さんと仲がいいらしくてねぇ…ファンクラブの間で…よくない噂が流れてるんだよねぇ」
「そ…そうなのか?」
「その噂…聞きたいかなぁ?」
「あ…ああ」
圧倒的圧を放っている梨緒の問いに、ゴクリと唾をのみ込む郁人である。
「宏美ちゃんの…二股疑惑だよぉ…相手は、郁人君と夜桜さんだよぉ」
「ゲホッ、ゴホッ!! な…なんだそれ!?」
突拍子もない話を聞いて、飲んでいたお茶で咽る郁人である。ニコニコ笑顔の梨緒である。
「フフフ…冗談だよぉ…でも…宏美ちゃんは、夜桜さんと仲がいいからぁ…あまり、女子生徒達に良い印象はもたれないよねぇ…郁人君…それが、どういうことかぁ…わかるかなぁ」
梨緒は、ニッコリ笑顔で郁人に問いかける。その問いに、郁人は、視線を逸らして黙り込むのである。なんとなく梨緒が言いたいことを察した郁人は、梨緒の問いに、沈黙で答えるしかなかったのであった。
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