LOVE YOU ONLY(兄目線)
白白
1
初めてウチの親父さんに連れられてきたアイツに会ったのは、俺が高3の秋だった。
「マサヒコ。今度うちで預かる事になった、領君です。――領君、これがウチの長男のマサヒコ」
今度子供を預かると聞いていたけれど、ふーん?と鼻を鳴らす程度のいい加減さでしか聴いていなかったから、まさかこんな大きいコドモが来るなんて思ってなかった俺は。
「――…」
親父さんの隣で申し訳程度に下げた頭は、驚く程見事なブロンドで、しかも気合いの入ったドレッドヘアだったから思わずツッコミを入れた。
「なあ親父。コイツ日本人なのか?」
「領君の実家の小野家は竹丘とは遠縁にあたりますが…。他の国の方と縁があるとは聴いた事が無いですねえ」
俺が言いたいのはそう言う事じゃないんだけど、ウチの親父も大概に大真面目にボケをかましてくる。
「オイ。そんな金髪でも日本人なら喋れるだろ、挨拶くらいしろよ」
って促したら。
「成瀬領です。宜しく…お願いします…」
眼を合さずにまた頭を下げて聴こえるか聞こえないかという程度の挨拶をした。
「成瀬?御前小野じゃねえのか?」
「まあマサヒコ。それはおいおい話をするから。――じゃあ領君。部屋に案内しますからね」
親父が「おいおいする」と言ってたのは、連れてきた「成瀬領」が、小さい頃から何故か問題行動ばかり起こして、面倒を見られないと両親が放棄したのを皮切りに、長くても3~4年で里親になる遠縁の間をグルグルとたらいまわしにされてた挙句、ウチがどうやら4か所目だという話だった。
そりゃあ…見た目は女子か、ってくらい可愛い顔をしているのに、視線は常に殺気立っていて。ヘアスタイルは気合いの入った金髪ドレッドで中学2年生のする髪型とも思えない。
俺には無かった反抗期を地で行ってるのが面白くて、この預けられた大きなコドモを俺は何かと弄るようになった。
「オマエさあ。そんな気合い入れたカッコして良く怖い奴等に因縁つけられないよな」
朝は高校生の俺と同じくらいの時間に一緒に家を出るから。
多分中学校には毎日通ってるんだろうとは思うけど。
「知らない奴に――良く話しかけられるよ?」
いきなり周り囲まれて「名前は何だ」「どこ中だ」って聞かれる。なんて。
「成瀬オマエ…ソレを普通の奴は『因縁をつける』って言うんだよ」
「――そうなんだ」
ふにゃ。と少し口元を歪めて笑う成瀬はまだまだガキで、可愛い顔になるのを見るにつけ。
まあ親父が預かってるコドモだしそれなりに心配になる。
「大丈夫か成瀬オマエ。カツアゲとかされてんじゃないのか?」
登校は途中まで一緒だから、駅の方向に並んで歩いてるけど。
成瀬と同じ制服を着ててこんな姿の奴は近所で他に見かけたコトはない。
「かつあげ?――無いよ?」
まあ見た所痣や傷をこさえて帰ってきた事はないから、今のトコロは平気なんだろう。
中学校と駅との分岐点で別れ間際に。
「成瀬。知らない奴に話しかけられたら。取り敢えず全速力で走って逃げろよ?」
俺より20センチは低い処にある金髪ドレッドの頭に手を乗せて撫でたら。
凸凹の感触が髪とも思えない不思議な感じだけど。
成瀬はびっくりした顔で目を丸くして俺を見上げた後で。
「――解った。…行って、きます」
飛び退って。薄い鞄を肩に担いで俺から逃げるように駆け出して行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます