時空間を操れるだけの能力者

HIKI

第1話 チートを得た代わりに性欲喪失 独白1

 時間を止めたいと思ったことはないだろうか。


 瞬間移動したいと思ったことはないだろうか。


 ええ、勿論僕にもそんな時期がありました。


 そんな能力があればヤりたい放題出来ると思っていたからです。


 しかしそんな願いも僕が中学2年生の頃突然失われました。


 僕に異能が芽生えたのです。それも《時空間操作》という超強力な異能です。


 きっかけは体育の時間のことです。


 僕たちのクラスは野球をしていたのですが、僕に打順が回ってきた時僕の顔目掛けてボールが飛んできたのです。


 ヤバい!と思い目を瞑ったのですが一向に痛みは襲ってきませんでした。


 おかしいと思いそっと片目を開けてみたところ目の前にボールが止まっているではありませんか!


 周囲を見回しても誰も彼もが驚いたように口を開けて固まっているではありませんか!


 ボールをツンツンしてもクラスメイトをツンツンしてもどちらも全く動かない状況に僕は歓喜しました。


 あ、これ時間止まってるんじゃね?


 と。


 そうなればすることは勿論一つです。


 クラスメイト女子教師女性を脱がせるのです!


 何となく忍び足で女子生徒や女教師に近寄り、クラスで一番可愛いと名高い女子生徒の衣服に手を掛けました。


 ゴクリ、と知らず知らずのうちに喉が鳴ってしまったのも仕方がないでしょう。


 せーの!という掛け声とともに一気に件の女子生徒の体操服を捲り上げました。


 絹のように真っ白でシミや傷一つない綺麗な裸体が現れました。


 普通の男子中学生ならこれだけで勃起モンですよね。


 しかし僕のナニは勃ち上がる気配がありませんでした。


 僕は焦りました。そして次々に女子生徒や女教師、果ては学校の近所に居た人妻を剥いていきました。


 しかしそれでも僕のナニは勃ち上がる気配はありませんでした。


 どんどんと女性や女子を剥いているうちに気分が落ち着き、仕方ないなという気分に落ち着きました。


 家に帰って思い出しながら抜こうと思い直した僕は取り敢えずこの惨状をビデオに収めようと家に帰ろうとしました。


 しかしどうにも気分が乗らず、一瞬で家に帰れないかなと考えたその瞬間、


 僕は家に居ました。


 さっきまで家とは反対方向の道路の上に居たはずでしたが何故だか家に居る。


 もしや瞬間移動!?と玄関で喜びの舞を踊ってしまったのも無理はないでしょう。


 今思えば、時間停止に瞬間移動という神かエロアニメやエロゲーの主人公でしか使えない能力を手にした僕は調子に乗っていたのでしょう。


 だからこそ僕は重大な問題から目を背けていた事実すら忘れてしまっていたのです。


 家からカメラを取ってきた僕は再び瞬間移動で学校に戻りました。


 そして女体を収めんと早速カメラの電源をつけました。


 がボタンを押し込むことが出来ませんでした。そんなわけで僕はカメラを断念しました。


 ならば絵に描いてやろうと思い紙と鉛筆を用意し、紙上に何度も筆を走らせました。


 が一向に描き出される筈の黒線は現れませんでした。そして思い返せば僕は絵心が無かったのもあり、僕は絵を断念しました。


 仕方ないので記憶に留めておくことにしました。匂いも形も覚えていられるように近くによって匂いを嗅いだり揉んでみたり、ここだけの秘密ですが……ちょろっと先っちょだけ舐めてみたりもしました。


 そうして全ての女体を記憶に封じ込めた後、服も元通りに戻し、カメラと紙と鉛筆を僕の部屋へと置いた僕は再びバッターボックスに立ち時間を動かしました。


 そして、


 ゴンッ


 という衝撃を頭に受け倒れたのでした。


 野球ボールのことをすっかり忘れていました。


 気絶していた僕は保健室で目を覚ましました。


 辺りはすっかり夕暮れ模様。保健室のベッドで寝ている人は僕一人、そして保健室の中に居るのも僕一人でした。


 少し呆けた後、時間停止や瞬間移動は夢だったのかと落胆した僕でしたが何とはなしに『瞬間移動』と念じてみました。


 すると、景色は一転し僕は保健室のベッドから自室のベッドの上に瞬間移動してました。


 驚愕と歓喜のダブルの感情が押し寄せてきました。


 これで僕のエロエロライフが始まる!


 そう思ったのでした。


 そして自分の荷物を学校に忘れたままだったことを思い出し、すぐさま瞬間移動で保健室に戻りました。


 保健室を出た僕は自分の教室へ行き荷物を持ち、職員室で保健室の先生に目覚めたことを報告しに行きました。


 学校でするべきことを終えた僕はそのままいつも通りに下校しました。


 確かに興奮状態でしたが、一部の冷静な部分ゴーストがバレたらマズイことになるぞと囁いていたのです。ということで何食わぬ顔で下校したのです。


 家に帰り自分の部屋へと戻った僕は早速とばかりに女子生徒や女教師の裸を思い出す作業に移りました。


 案外あっさりと思い出せたのですが全く興奮していない自分に気付きました。


 あれ、と思いいつも読んでいるエロマンガやAVを観たりもしましたが全く勃ち上がる気配がありませんでした。


 しかもナニからナニを出したわけでもないのに言いえぬ虚無感に襲われていることに気付きました。


 まるで賢者タイムです。


 そして僕は気付きました。


 これは等価交換なのだと。


 僕は強力無比な異能を手に入れる代わりに性欲を失っていたのです。


 その日から僕は無気力になりました。勉強も部活も何一つとしてやる気が起きず、学校に行っては家に帰って寝、学校に行っては家に帰って寝る。


 そのサイクルが1年も続いた頃、僕は悟りを開きました。


 ぶっちゃけこのまま年食っても僕は童貞のままだったんだろうから、寧ろオ〇ニーする無駄な時間が減ってラッキーじゃないか!


 と。


 それから僕は食と道楽の道を究めることに決めました。


 まあ食といっても単に性欲が無くなった代わりに食欲が増しただけなのですがね。

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