第144話 祝勝会☆



 ※



 祝勝会は、大盛り上がりだった。


 場所こそ、殺風景で、使い古された道具の並ぶ、ギルドの素材解体用倉庫だったが、次々と出される料理が絶品で、誰もがその料理の素晴らしさに魅了された。


 参加者は、今回の殲滅作戦に参加した冒険者にスカウト、計百二十名強の人数に、作戦に協力したギルド職員約五十名の、大人数での祝宴だった。


 料理が行き渡り、酒が各所に樽で配られた後、ある程度時間が経ってから、フェルズのギルドマスターが、倉庫にあったボロ箱で作られた即席の段上に上がり、挨拶を始めた。


 会場は、自ら戦線におもむき、敵の長と思しき人物との一騎打ちを演じ、見事勝利をおさめたギルドの英雄の登場に、大きな歓声が巻き起こる。


 レフライアは、戦っている時に外していた眼帯(アイパッチ)をまた着けていたが、彼女の怪我の完治等は公表されていないので、何か訳があるのだろう、と察しのいい冒険者達は、その事を疑問に思っても口に出すような者はいなかった。


「今日、魔族の過激派組織『人間弱体党』の3つの施設への電撃作戦は、一人の死傷者もなく、見事に全ての作戦は成功をおさめました。


 それもこれも、忙しい最中、様々な場所、国々から募集に応じて参加してくれたA級の冒険者民さんのお陰です。フェルズのギルドマスターとして、感謝の意を述べさせて下さい。


 みんな、ありがとう!これで、フェルズは長年、知らずに縛られていた呪縛から解放されました。フェルズの危機を、皆が救ってくれたのです!


 組織の精神汚染の為に、こちらの冒険者はほぼ役には立たず、他のギルドの人材に頼り切りの作戦でしたが、よく生き残って、やり遂げてくれました。私は正直の所、かなりの犠牲を覚悟していたのですが、皆は、私の悪い予想等、軽く跳ね飛ばし、最高の成果を上げてくれました!


 本日は無礼講、誰もが同等の仲間です!思いっきり破目を外し、飲んで食べて騒いで下さい」


 会場の誰もが、杯をかかげ、フェルズ万歳!と叫び、杯をぶつけあった。


「尚、今日の料理の、主な食材は、今日討伐した魔獣達と、魔竜の肉です。ちゃんと浄化消毒は済んでいるので安心して下さい。魔竜は、普通の竜として見ると、真・竜クラスの竜です。


 中々そうは食べられない肉なので、充分味わって食べて下さい」


 会場が、今までとは意味合いの異なるお~~、と言う歓声とどよめきが漏れる。


 料理が上手い理由の一端が分かったからだ。


「それから、今回の報酬は、最初の契約よりも上乗せしてお支払いするつもりですが、多分それよりも嬉しいお知らせがあります。


 今回、魔竜を討伐したパーティーからの提供で、この作戦に参加した冒険者、スカウトも含めて全員に魔竜の浄化済みの鱗を1枚づつ、お配りします。


 その中でも、遊技場を襲撃した本隊で活躍した者、ブローウェン卿には竜の角と牙を、ロナッファ嬢と、レイナルド、グロウサス、イーガン、モリス、ランカ嬢に竜の爪と牙を別途、お渡しします。


 また、今夜の祝宴で、魔竜の肉が残るようでしたら、これは襲撃作戦に参加した冒険者を優先で、一塊配る事になるわ。食べ切れる様な量じゃないから、これも期待して。


 じゃあ、その提供パーティーからの話を……」


 ギルマスが段上を下り、代わりにゼンがそこに上がる。リュウが、口下手なので絶対嫌だ、と固辞した為だ。


「どうも、C級パーティー『西風旅団』のゼンと言います。うちのリーダーが、魔竜戦で衰弱していますので、代理で話させていただきます。


 皆さんにお配りする魔竜の素材なんですが、たまたま私達がとどめを刺し、所有権を得る事となりましたが、これはその場にいた、皆の援護があって成し遂げられた成果ですので、それをなるべく還元したい、とのリーダーの意志から、配布する事になりました。


 元々、この組織の事は、フェルズの問題ですので、本来はフェルズの冒険者で解決すべき問題でしたが、その冒険者を狙っての、犯罪でしたので、自分のパーティー他数名しか、フェルズの冒険者は参加出来ず、僅かな力にしかなれないで、心苦しい次第です」


 実際に作戦に参加した、誰もがそんな事ないだろ、と心の中で突っ込んでいた。


 酒場に行った第一部隊は、ゼンの従者、ガエイが敵の罠をほとんど解除、無力化し、狭い店内での戦闘は、ボンガが鉱物分解精製のスキルで無理矢理に戦場を広くし、ゾートはその大剣で大暴れをした。第一部隊は大助かりだった。


 そして遊技場を攻めた本隊である第二部隊は、言わずもがな。


 サリサの店内爆破、その後の瓦礫上での戦闘でも、『西風旅団』のメンバーは個々に目立った活躍をしていて、特に魔竜戦では、彼等こそが魔竜討伐の立役者と、誰もが認めていた。


 なので、ちょっと謙虚過ぎるゼンの話に、苦笑する者が多かった。


 実は、セン達の『西風旅団』がC級だとは知らなかった者がほとんどだったので、その点で驚愕する者が多かったりもした。


「C級?A級でも不思議じゃないぐらいだったが……」


 ブローウェンの隣りに座っていたロナッファが、それを聞いて、昇級試験の時にB級に上がれたのに、今のフェルズでクランを結成する難しさから、C級の仲間を募集してクラン参加候補とし、同じクラスから一緒に上級に上がる為にC級に留まったのだ、と理由を簡単に説明した。


「なるほどな……」


 難しい顔をするブローウェンとは関係なく、ゼンの話は続く。


「……なので、自分達がフェルズの冒険者の代表と言ってしまうのは、おこがましいのですが、フェルズの冒険者に成り代わり、今回の作戦参加の感謝とお礼を形にして、皆さんに魔竜の素材をお配りする事になりました。


 魔竜……真・竜の鱗は、物理耐性や術耐性が持っているだけで劇的に上がる、同種の護符(アミュレット)以上の性能がありますので、皆さんのこれからのお役に、きっと立つ物だと思います。勿論、売ればそれなりの金額がつく代物ですから、受け取った後、それをどうしようと皆さんの自由です。それでは、ご清聴ありがとうございました。



 ……ところで、俺の調理した、魔竜の料理、どうでしょうか?料理した身としては、皆さんの評価が気になるのですが……、あ、余談でした、すいません!」


 話が済んだ、一拍おいた後のゼンの料理の質問は、彼を知る者としては、微笑ましくて笑えるものだったが、そうでない者には、今食べている絶品料理が、『流水の弟子』の物、と知って目を白黒させて驚く者が大半であった。


「……つい余計な話、しちゃったなぁ……」


 西風旅団の集まる一角に戻ったゼンが、こぼす言葉に、皆は笑って暖かく迎える。


 ちなみに、料理は、ギルドの食堂の厨房で作られているが、料理人は、フェルズで美味いと評判の店の料理人を頼んで来てもらっていたのだが、メインの竜肉の料理を作るゼンの技術に、皆が魅せられて、料理の質問や味見、助言を求める者が相次ぎ、ついにはほとんどの料理に、ゼンが関わる事になってしまった。


 フェルズにはない香辛料等も貸して、味付けの手伝いをしたので、全ての料理が、ゼン風な感じになってしまった。


「なんか、竜の料理以外もゼンみたいな味付けだな。美味くていいけど」


 と呟くラルクの言葉は的を射ていた。


 その場には、ロナッファとブローウェンもいた。


「ゼン、君のクランの話を聞いたのだが、君は、俺が思っていたのと違い、色々な苦労を背負い込みながら、暮らしていたのだな」


「えーと、どういう事でしょうか?」


「いや、『流水の弟子』の名前はもう、冒険者の中では知らない者はいない、と言っていい程の有名人だからな。フェルズに戻ってから、周囲にチヤホヤされて、結構な待遇で暮らしているのじゃないかな、と邪推していたのだよ」


「確かに、そんな感じじゃないですね。主にあの精神汚染のせいだと、今になってみると分かりますが。


 でも、俺をチヤホヤしてくれる人はいましたから。義父や仲間達、ギルマス関連の人なんかも。だから、別段大した苦労でもありませんよ」


「君は、凄いな。強さに驕る事なく謙虚で控えめ、それでいて前向きで積極性もある。


 こんな逆境の中で、自分達だけでまともなクランを作ろうと思い立ち、それを実行に移せる胆力。そして、仲間を勧誘して、その理想を実現しつつある。普通なら、計画段階で挫折する者が多いだろうに。ギルド側が協力したにせよ、凄い事だ。


 師の教育が余程良かったのだろうか。『流水』のラザン。それ程の器か……」


 ブローウェンの話を聞いていた、西風旅団の面々は、ドッと爆笑する。


「ブローウェン卿、お言葉ですが、ゼンは昔からこんな感じで、多分性格面は全然変わっていませんよ。むしろ、師の影響を受けなくて良かったと、俺達はホっとしてます」


 リュウは、これでも遠慮した物言いで、ブローウェンの考えを否定した。


「ラザンは、剣は強いがそれ以外は何もしない男で、ゼンは弟子だけど、従者として完全に身の回りのお世話をするはおさんどん係の方が忙しいみたいだったそうですよ」


 ラルクも、彼はラザンが好きではないので、言葉に遠慮がない。


「そう、なのかね?」


「えっと、まあ、そんなところも、無きにしも非ずと言いますか……」


 師匠を尊敬するゼンでも、師匠を褒めるのに、剣の腕以外を、と問われると、絶句して困ってしまう。あのチャランポランな性格に、味がある、と言えなくもないのだが、それは果たして褒めている事になるのだろうか?と。


「で、でも、剣には厳しい人でしたから!」


 やはり剣しか褒める部分がないので、それを強調するしかないのだった。


「いや、分かった分かった。別に、冒険者が戦闘特化の専門馬鹿なのは、結構普通の事だからな。君のように、色々出来る方が珍しい」


「俺は、家事全般、必要だから出来るだけですよ。料理だって、自分ではこの程度でいいだろう、と思っている程度で、もっと上には上の人がいますし……たぶん」


「君は、面白いなぁ。その家事すら出来ないのが多いのが、この業界だ。それを誇っても、誰も文句を言わんと思うのだが」


 旅団のメンバー+ロナッファが、横でウンウン頷いている。


 そんな風に、宴会は和やかに、にぎやかに進んだ。



 ※



 ある程度の時間が過ぎた所で、パティー内での秘密の話合いをしたい、とブローウェンとロナッファには理由を説明して、席を離れてもらった。


 それから、サリサが遮音結界と、ついでに認識阻害の結界も合わせて、部外者が近づかないようにした。


 準備が済み、おもむろにゼンが話し出す。


「前置きで、別の話をします。後の話に関係あるので、聞いていて下さい。


 前に、『悪魔の壁デモンズ・ウォール』で使った、従魔との技に、同調(シンクロ)と言うのがあったのを、覚えてますか?」


「忘れる訳ないだろ。ゼンが二日も寝たきりになった技だからな」


 リュウが、あのゼンがボスを真っ二つに斬った後倒れ込んだ時の恐怖を思い出して、不機嫌になる。


「……あの技も、実はとても危険な面があって、うちの治療士であるリャンカには、なるべく使わない方がいい、と注意されていたんです」


「その、危険な面て言うのは?」


 サリサが、嫌な予感がしつつ尋ねる。


「あれは、二つの魂を一時的に重ねて、二人分以上の力をひねり出す技術ですが、魂と魂を重ね合わせるのは、下手をすると、魂が融合しかねない、とリャンカは言うんです」


「融合って、二つが一つになる?」


「そうです。それが、どういう意味か、分かりますか?」


「……正直よく解らん」


 ラルクは分からなかったが、女性陣が青い顔をしているので、そちらは分かっているようだ。


「結構、単純なんです。二つの魂が一つに溶けあう、つまり混ざり合ってしまうんです。その場合、多分、元の“個”は、残りません。新しい何か、に変化してしまいます」


「二重人格みたいに、二つの面が裏表で残るんじゃないのか?」


「あり得ません。俺とゾートが融合して溶けあったら、ゼントとかゾーン、みたいな存在になるのでしょう。それは、二人の記憶を持ってはいるかもしれませんが、俺でもゾートでもない、別人が生まれるんです」


「それって、大変な事じゃないか!」


 ようやく意味が分かったリュウとラルクが気色ばむ。


「はい。多分、だからあの技には時間制限があって、しかも使った後のデメリットもある。


 あれは、つまりそれ以上の時間、同調(シンクロ)していると、魂が融合してしまいかねないので、強制的に止めてくれる機能、みたいな物だと思うんです。


 デメリットの時間も、続けて使えばそれだけ融合しやすくなってしまうので、間の時間を強制的に作ってくれるものだと思うんです」


 聞いていて、ゾっと寒気のする話だった。ゼンがいなくなり、その記憶や知識がある別人が生まれる。それは決して、ゼンではない。


「ゼン、あの技もう二度と使うなよ!」


「なるべく、使いたいとは思わないです。その後が無防備になりますし、動けなくなる時間も長いですから」


「そういう理屈じゃない!俺達は、お前を失いたくないんだよ!」


「……はい」


 ゼンは嬉しくなって、素直に頷くが、この中の誰かが危ない時に、それを使えば助かるのなら、躊躇なく使うだろう。


「で、今回の話です。俺は、魔竜を倒す時、リュウさんの“気”の波長に合わせて、自分の“気”を調整してから、リュウさんの方に流しました。


 これは単に、リュウさんと俺の“気”を合わせて使えば、何とかあの魔竜を倒せるんじゃないか、とそれ以上の深い考えはなかったんですが、リュウさんは覚えてますか?あの時一瞬、俺達が、一つになったのを」


「あ、ああ。そう言えば、最後の瞬間、なんか別の何かになった様な感覚があるな」


「俺も、“気”の波長を同じにして流しただけで、そんな現象が起きるとは思ってもみなかったんですが、あれは多分、俺とリュウさんの魂が、一つになったんだと思います」


「え、それって―――」


 サリサは段々、この話を聞いているのが辛くなって来た。


「はい。さっき言った同調(シンクロ)の最悪の段階の話です」


「俺とゼンが、あの時一つに……?」


「そうです。俺は、その危険性をリャンカに、耳にタコが出来るぐらいう何度も聞かされて、注意されてたので、その瞬間、それが“そう”だと分かりました。


 だから、力を放出した後すぐに、リュウさんから自分を引きはがして、離れたんです」


 奇妙な沈黙が、旅団メンバー内に広がる。


「幸いな事に、融合は一時的な物だったようで、俺達はすぐ離れる事で、別々の自分に戻る事が出来ました」


 誰もが、ホーっと長い吐息を吐いた。


「だから、アリアは危なかった、と?」


「そーだよ!すっごい怖かったんだからね!」


 リュウを睨むアリシアはすでに涙目だ。


「大袈裟……では今回はないなぁ。死ぬわけではないが……」


「魂が一つ、身体は二つですから、どちらかは死んだも同然なんじゃ?」


 冷静に余計な事を言ったゼンの脇を、サリサがつねる。


「に、人間の学問でも、魂とは何か、まだ分かっていない、未知の話みたいですが、多分、融合した魂は、元に戻せないんじゃないかと思います。例え神だとしても」


「そうなのか?アリア」


「……私も、難しい事は分からないけど、あの凄く嫌な感覚は、ゼン君の言っている事が正しいからかも……」


 アリシアの勘や何かは、神に通じるものがある。つまりは―――


「例えば、果物のジュースに、色々な果物を混ぜた物がありますね」


「ああ」


「あれから、~~の果物だけ、分けて取り出せ、と言われて、果たして出来るでしょうか?」


「……少なくとも、俺等の知っている範囲の話では出来ないな」


「果物を混ぜた物すらそうなんです。魂、なんて物が一つになって、混ぜ合わさってしまったら、多分もう……」


「でも、神様なら、何だって出来るんじゃないのか?神嫌いなゼンには、承服出来ない話かもしれないが……」


 言っているラルクの言葉も力なく、途中で切れてしまう。


「神は、なんでも出来る訳じゃないと思うんです。だから、制約とかがあると思うので。


 輪廻転生って考えがありますけど、魂は、死んでも次の身体に、天国や地獄を経由して?生まれ変わる、というものですが、多分、融合してしまった魂は、もうそういう物だとして、生まれ変わるんじゃないかな、と俺は思います」


「死んだ時、神様が融合した魂を分けたりしてはくれない、と?」


 ラルクは、確かに人一人にそんな時間をかけたりはしないかもしれない、と自分でも思いながら言う。


「俺の勝手な予想ですが。だから同調(シンクロ)には、時間制限やデメリットがあって、そうさせない様にしているのかも、と」


 無論、今ゼンが話したのは、ゼンの推論であって、実際どうなのかは、その道の専門家や、それこそ神にでも聞かなければ分からないだろう。


「……答えの分からない、不毛な話は止めましょう。要は、そういう事態にならなければいいのよ。


 ゼンは、もうあの同調(シンクロ)という技を使わない。人と“気”の波長を合わせて触れ合うような技は使わない。そうすれば、最悪の事態は避けられるでしょう?」


 サリサが、全てに結論付けるように言う。


「……そうだな。今回は……いや、今回も、か。ゼンの技に救われておいて、こう言うのも何だが、もう余り危険な技は使うな。今回は、フェルズの全住民その物を救った、と言っても過言じゃない話だが、それでも、自分の身が危うくなる様な技は使わないでくれ」


 アリシアに片腕をガッチリ組まれた格好で、リュウはゼンに言い聞かせる。


「……分かりました」



 ※



 それから、ゼンとサリサは、少し仲間達から離れ、二人だけで話し合った。


「……私、怒ってはいないわよ。でも、悲しいのと、怖いの……」


「それって?」


「貴方は、自分の命を盾にしても、私達を護りそうだから。だから、悲しくて怖い……」


「……誰だって、自分の大切な物は、命がけで護りたいと思うんじゃないのかな」


「それでも!そんな事、安易にして欲しくないの!貴方には、私達がいて、従魔達だっていて、フェルゼンで待っているたくさんの子供達と、女の子達もいるわ」


「……最後は、言って欲しくなかったかな」


「ちゃかさないで!貴方には待っている人が沢山いて、その全員が、貴方にいなくなって欲しくなんてないの。その事をもっと自覚して……」


「うん……」


 ゼンはサリサを柔らかく抱きしめて、頭を優しく撫でる。


「……それだけじゃなく、ゼンはいつも、何処か遠くに一人で行ってしまいそうで、そんな予感がして、悲しくて、怖くなる……」


「俺は、何処にも行きたいと思ってないよ。ずっと、サリサの傍にいたいと思ってる」


「本当に?」


「本当に」


「本当の本当に?」


「本当の本当に。旅とかに出るなら、皆と一緒がいいよ」


「そうね……」



 祝勝会は夜通し続けられ、そのままその場でつぶれて眠ってしまう者も多かった。


 ギルドの職員達は、そんな者達に、毛布を持って来て、かけて回るのだった。


 リュウとアリシアは、リュウは荷物に背中を預け、あぐらをかいて眠っていた。その足を枕に、アリシアは眠っていた。


 ラルクは、途中から合流したスーリアと、肩を寄せ合って眠っていた。


 サリサは、一人眠っていた。


 その傍らに、ゼンの姿は見当たらなかったのであった……。







*******

オマケ


ゾ「という訳で、俺等も祝勝会参加だ」

ガ「ワクワク……」

ボ「ゼン様の料理、楽しみだね」

セ「ですね!ボクも出してもらえました!」

ル「るーも、わっくわっくだお!」


リ「と、二人が出ている代わりに、フェルゼンで夕食の準備を済ませた私達が主様の中にいる訳なんですが」

ミ「フギャー、差別ですの!」

リ「単に人数制限ですよ。主様、今回、疲れてますし、7人同時実体化なんて、やった事ない事、危なくて出来ませんよ」

ミ「……仕方ないですの」

リ「それに、ルフは時間制限有です。あの子、際限なく食べますから」

ミ「あの小さい身体のどこに、あんなに入るか分からないですの!」

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