第143話 決戦・ギルマス編☆



 ※



 魔族の男は、茫然とした面持ちで、眼下で繰り広げられた、異常な戦闘の行く末に、瞠目していた。


 それは、有り得べからざる結末であった。


 ギゼオラが、切り札たる暗黒魔竜を解放してしまった。


 これは、どうしようもなかった。彼は追い詰められ、その命は風前の灯だった。


 最強の護衛たるロアから引き離された時点で、彼の運命は決まってしまった。


 だから、魔竜の解放は、せっかく犠牲を出してまで捕縛した魔竜の有効利用として、計画外の行動であっても容認出来る話だ。


 だが、その暗黒魔竜が、冒険者達やフェルズに、何の被害も出せぬままに、あっという間に倒される等、誰が予想し得ただろうか。


 しかもそれが、十代の少年少女からなるパーティー、『西風旅団』が主な戦力となって、なのだ。


 コキュートスの建物を内部爆破したのも、そのパーティーの魔術士だ。


「あれは、C級のパーティーでなかったのか?いや、この襲撃に参加している時点で、その実力は認められていたのだろうが……」


 一帯を見下ろせる建物の屋上で、男は一人愚痴り、この大敗した状況を受け入れがたく思っていた。


 これは、単なる悪夢ではないのか?ここまで我等が惨敗する要素等、なかった筈。


 それなのに現状では、瓦礫の下に大怪我をした同士が何人か、かろうじて生きているのみ、なのだ。自分一人では、それを助ける術もない。


「こんな事を、あの“お方”に、どう報告すればいいと言うのだ……」


「それが、組織の首魁なのかしら?じっくり聞きたいところね」


 突然、背後から声をかけられ、ギョっとして振り返るそこには、緋色の髪を風になびかせた、特徴的な眼帯(アイパッチ)をつけた、ギルドの最高権力者がいた。


「ギ、ギルドマスター!何故ここに?」


「それは、私が聞くべき質問でしょ?魔族のA級冒険者、フェルネウス・イレイザー。


 今日、上級の冒険者は、本部に召集命令がかけられているわよね?その場に、影で身代わり人形など残して、何故こんな場所にいるかしら?」


 レフライアは、その美貌の上に、酷薄な笑みを浮かべて問い詰めるのだった。



 ※



 ゼンはリュウに肩を貸し、ラルクも逆側から肩を貸して、アリシアのいる後衛の場所まで運んで来た。


 一番リュウの、衰弱の度合いが大きいからだ。


 ゼン自身も、ラルクも疲労しているが、歩けない程ではない。


<ゾート、ガエイ、ボンガ。そちらは終わったか?>


<おうさ。問題なく終了だ。怪我人が少々出たぐらいだ。店内は罠だらけだったが、全部ガエイが解除したからな。魔獣の出て来る魔具が設置されていたが、こちらも大した事ない敵で、他と協力して撃退済みだ>


<ガエイ、偉いな。ボンガは、いや、みんな、こちらに来てくれ。ほとんどの敵は倒したんだが、こちらは建物を爆破したから、瓦礫の下にまだ生きている敵がいるんだ。


 ボンガの鉱物分解で、そいつらを引きずり出してとどめを刺して欲しいんだ。怪我してるだろうから、大して手強いのは残っていないだろうが、一応注意して>


<御意に……>


<分かりました。3人でそちらに向かいます>


 ボンガの頼もしい声で、念話は終わった。


 最前線で戦っていた、ブローウェンやロナッファ、他の冒険者達も、多少の負傷を治癒してもらいにこちらにやって来た。


「大体は終わったが、瓦礫の下にいる奴等をどうにかせんといかんな」


 指揮官であるブローウェンも、同じことを考えていた様だ。


「ブローウェン卿、酒場に向かった隊も、戦闘を終えた様で、こちらに応援に来てもらいます。その中に、鉱物を分解精製出来る、俺の従者がいますので、敵を掘り出すのは簡単です」


「ほう、それは助かる。便利なスキルを持ってるな。で、向こうの被害は?」


「こちら同様に、軽傷ぐらいのようです。死傷者はゼロですね」


「おお、こういった街中の難しい作戦で、被害がないのは素晴らしいな。それもこれも、お前等があの魔竜を、早々にしとめてくれたお陰だよ」


 ブローウェンは、自分の指揮した隊で、死傷者が出なかった事を心底喜んでいた。


 戦場では、老人から先に死ぬべき、という持論を持つ彼は、自分がいつも生き残ってしまう事に罪悪感を感じていたから。


「ゼンもリュウも凄かったぞ!あれほどの大物を、たった二人で討伐するとは、勇者並なんじゃないか?」


 ロナッファは、まだ興奮がおさまらないのか、顔を紅潮させて、ゼンとリュウを褒めちぎる。


「いや、あれは本当に、援護してくれた皆のお陰ですよ。ラルクさんが、目を潰してくれたし。あいつが覚醒したてで、かなり悠然としてたせいもありますが、援護で気を散らしてくれなかったら、二人であの爪に薙ぎ払われてました」


「色々、ギリギリだったな……」


 疲労困憊のリュウが、しみじみと呟く。


「ゼン君は、後で反省会だよ。“あれ”、絶対、危なかったんだから」


 珍しく、アリシアが凄い真剣に怒った顔で、ゼンを見つめている。


(“あれ”の危なさに、アリシアだけ気づいたみたいだ……)


「何でか、シア、凄い怒ってるのよ。ゼン、意味が分かるの?」


 サリサは親友の怒りの意味が分からず、不思議顔だ。


「うん、分かってる。俺のせいだから。後で詳しく説明するよ。多分、サリサも怒ると思うから」


「そう、なの?」


 確かに、かなり危ない状況で、本来勝てない様な敵に、なんとか勝ったのだ。


 だがそこに、ゼンが悪い要素などあったのだろうか、とサリサは首をかしげるが、当の本人と、アリシアが分かっている様なので、説明を待つしかない。


「……まあ、とにかく、一段落で、戦闘はほぼおしまいだな」


 ラルクは、少し重苦しくなった雰囲気を和らげようと言ったが、それは否定される。


「まだだ。上でまだ戦っている。それが終わったら、真の作戦終了となるだろう……」


 ブローウェンがそう言って、上を見上げる。


 ゼンとロナッファの様に、闘気を遠くまで感知出来る者は、気が付いていた。


「あれは……ギルマスか!」


 皆に習い、上を見上げた目のいいラルクは、すぐ近くの建物の屋上に、ギルドマスターと魔族の男が対峙しているのを見つけた。


「あの空間術士は副指令、とか言ってたから、多分あいつが司令、ここの親玉なんじゃないかな」


 ゼンは、見上げながらも、リハビリの訓練につき合った彼には、不安は微塵も感じない。


 今のレフライアが、魔族に負けるとは思えないと、身をもって知っているから。



 ※



「な、何か誤解をされている様ですが、私は別に……」


 言い訳めいた話をしようとするフォルネウスを、レフライアは乱暴な仕草で手を振り、その言葉を中断させた。


「ごちゃごちゃと、貴方の腹芸につき合うつもりはないわ。『人間弱体党』の、支部長?司令?どういう名称使っているかは知らないけれど、貴方がこの組織の、フェルズでのトップなんでしょ?」


 指を突き付けて、決めつける。


 アルティエールの情報だ。間違ってなどいない。このチンケな小悪党にしか見えない魔族が、組織のトップというのには、むしろ驚かされたが。


「……何故そんな、大層な身に、この私がなるのですかな?3年前の事を思い出していただきたい。私は貴方様に、魔族の組織の情報提供をして、闘技会の感動的な演説でも、私の事を取り上げてくれたではないですか」


 フォルネウスは必死の形相だ。伊達男の欠片も見当たらない。


「確かに。あの時は驚いたは。何かボロを出すのでは、と期待した貴方が、ベラベラ魔族の過激派集団の話をしたから。でも今は、その意味が分かる。“自分”とは別組織の話だったんですものね。舌が軽くなるのも頷けるわ」


 レフライアがフォルネウスを見る目は冷たい。絶対零度の視線だった。


「闘技会の演説は、純粋に友和派の魔族に害が及ばない様に話しただけで、貴方の事を信用したから、その話を取り上げた訳じゃないわ」


「心外ですな。そして辛辣ですな」


 フォルネウスはそう言うと、建物の屋上の端に立っていると言うのに、またクルクル回りだした。


「……ハッキリ言うと、私のお前の印象は、初めて会った時から、徹頭徹尾、変わっていないわ。お前が何をしようと、いくら善行を積もうと変わらない。


 究極的に、胡散臭さいのよ!お前が何周まわろうと、胡散臭いまま!」


「それは、余りに酷いお言葉。」


 回りまがら、悲し気に顔を押さえる。いちいち大袈裟で芝居ががっていて、ともかく胡散臭い。


「だが、それもまた、お前等の手口だったのだな。余りに怪しいお前には、常に監視をつけていたが、お前は自身を囮として、組織との直接接触をしなかった。


 だが分かってみると、それも不自然。お前の様な貴族出の伊達男が、上級冒険者専用の高級店に、一度も足を踏み入れていない。それは、余りに不自然なんだ。自分で気が付かなかったの?」


 レフライアの指摘に、フォルネウスは虚を突かれた。


 確かに、組織の目が行かない様にする余り、不自然な行動を取ってしまっていた。


「組織の支部長が、自ら囮か。この組織の常套手段だな。暗殺に当て馬の弱い冒険者を殺し、“草”に洗脳した一般人を混ぜ、組織の系列店にもダミーを混ぜる。


 用意周到、と言えば聞こえはいいが、つまりは臆病で腰抜け、知略に長けているようで悪辣、慎重ではなく勇気の足りぬヘタレ。それが、貴様らの言う『あの方』の性質なのか?」


「……知りもしない癖に、あの方の事を、悪しざまに非難しないでいただきたい!」


 最早これまで、と開き直ったのか、主を悪く言われて黙っていられなくなったのか、フォルネウスは回転を止め、レフライアの言葉を肯定する形で、そのまま応じていた。


「大したカリスマだな。だが、前線で指揮も取らずに、こんな迂遠な作戦で、人間の冒険者を弱体させ、神への進化の邪魔をセコセコと気長にやる者が、神になる器であるものか!」


「貴様っ!」


 フォルネウスが剣を抜く。


 レフライアも応じて剣を抜いた。


「まだ『神の信望者』の方が、正面から戦いを挑むだけマシだったわね。寿命が長いせいなのか?こんなセコい作戦を、チマチマと年月をかけて、裏で続けて」


 フォルネウスの剣が唸りを上げ、目にも止まらぬ速さで連撃を繰り出す。


 伊達に、魔族の冒険者では最強の男と言われている訳ではない。その腕は、確かに一流のものだ。


 レフライアは、何とかギリギリ受けている感じで、攻勢には転じられない。


「その、呪いのかかったポンコツな身体で、現役のA級と渡り合えるとでも思っていたのですかな?」


「………」


 嵩にかかったフォルネウスは、力強い剣で、レフライアを押し、その背中の服が破れて、触手のような物が剣を持ち、レフライアの眼帯(アイパッチ)のある死角の方から剣を振るう。


 だがレフライアは、まるで見えている様にその剣をのけ反って躱し、逆に素早く回り込んで、フォルネウスの脇腹に一撃入れた。


「ああ、この眼を気遣ってくれるの。では私も、全力で戦わせてもらおうか」


 おもむろに眼帯(アイパッチ)を外すレフライア。


 その顔には、傷などなく、全てを見通すような、力強い瞳が、フォルネウスを睨んでいる。


「なっ?ば、馬鹿な!半神(デミゴッド)級のつけた呪いの傷を、癒せる者など、この人間界にいる訳が―――」


 驚愕するフォルネウスに、全力の一欠けらを出したレフライアの剣が迫る。


 先程までとはまるで違う、稲妻の如きレフライアの怒涛の攻撃は、立場を逆転させるものとなった。フォルネウスの方が、ギリギリ何とか剣を受けている形で、まるで攻撃が出来ない。


 フォルネウスの背中から、前に出たのと同じ触手が二本、三本と出て、それぞれが剣を持ち、様様な角度からレフライアを攻撃してくるが、それをまるで余裕で受け流し、レフライアの攻撃は、どんどんと苛烈さを増して行く。


「手を何本増やされようと物足りんな。今のA級とは、この程度なのか?」


 服はボロボロ、浅い傷を無数につけられ、背中の触手はまるで通じない。


「クッ……。この醜態、せめて、貴方の首だけでも持ち帰らなければ、面目が立ちません!」


 二人は、建物の屋上を走り、次の建物へと跳躍。切り結んでまた跳躍移動、と激しい攻防を演じていた。


 だが、誰がどう見ても、レフライアの力量が上で、フォルネウスに勝ち目は、万に一つもない様に思われた。


 全力全開で動く、レフライアの動きに、フォルネウス・イレイザーはまるでついて行けていなかった。


 “瞬動”がどうの、という問題ではない。レフライアはただ普通に動いているだけだ。小賢しい技術等、何一つ使ってはいなかった。


 それだけ、地力の差が圧倒的なのだ。


「こ、ここまでとは……。当時、S級に一番近い剣士と言われていたのは知っていましたが、ブランクがあって、これでは……」


 フォルネウス・イレイザーの身体は、すでに傷だらけで、満身創痍だ。


「仕方ありません!この姿を、見せたくはなかったのですが!」


 その時、フォルネウスの身体が光り、着ていた服が、音を立てて破れ、散った。


 身体がみるみる変化して、そこには、空中に浮かぶ、巨大なクラゲがいた。


「……なに、それ?これが、お前の本性、本体なの?それとも、スキルによる変化?」


 先程までの触手とは違い、数え切れない程の触手が、一部、武器を振り、大部分はそのまま触手で攻撃して来る。


 今や絶好調のレフライアは、それすらも軽々と躱し、その無数の攻撃を寄せ付けない。


 しかし、剣で触手を斬ろうと試みるが、勢いよく跳ね返る。


 どうやら、物理耐性に加えて、クラゲの触手としての柔軟性を併せ持つ、斬りにくい性質の身体のようだ。


「確かに、多少は斬りにくくなったようだけど、これが何だと言うの?」


「剣士が物理的に斬れぬ敵には、絶対的な優位性があるのが、お分かりいただけませんか?」


 また、四方八方からの、触手攻撃。


「なら、もう少し力を入れるか」


 周囲に迫る触手に、レフライアは剣で応酬した。


 見事に、スパスパと斬り刻まれる触手達。


「少し“気”を込めただけで、このザマ。お前の大道芸は、見飽きたわ。


 私の首だけでも持ち帰るんじゃなかったのかしら?これでも、リハビリ訓練はしっかりやってるのよ。私も現役当時、あんなに強い子はいなかったから助かったわ」


 真夜中の訓練に、無理矢理つき合わせた少年の事を思う。


「……そうですか。そこでもあの、『流水の弟子』が出て来るのですね」


 フォルネウス・クラゲは、ふわふわと頼りない動きで空中を浮かび移動しているが、その動きは見た目に反して結構速い。レフライアから逃れる様に、大通りを隔てた建物の上に移るが、レフライアもすぐに跳躍して来るので、まるで逃げられない。


「私の愛しい人の、義息子ですもの」


 こんな時でもノロケている、ギルドマスターは困り者。


「確か、あの乗っ取りが失敗したのも……。参りましたね。『流水の弟子』が来てから、全ての流れが変わったとでも言うのですか?」


「その口ぶりだと、あの商会乗っ取り騒ぎに、お前達の組織が一枚噛んでいたのか?」


「ええ、ご明察です。ギルマスに突如訪れる、伴侶の不幸。貴方には孤独になって、呪いにむしばまれ、弱っていって欲しかったのですよ」


 暗い悪意の込められた呟き。


「そんな下らない事の為に、ゴウセルを巻き込んだのか!」


 レフライアは激昂して、フォルネウスに斬りかかった。


 フォルネウスはレフライアをわざと怒らせ、その隙をついて逃走を試みようとしたのだが、全ては逆効果だった。


 憤怒の化身と化したレフライアに隙などなく、フォルネウスには一撃、と見える、十の連撃に、フォルネウスの、物理に対しての耐性が強い、クラゲの柔軟な身体、触手は全て見事に斬り散らかされた。


 レフライアの“闘気”、“怒気”の込められた剣は、フェルネウスの物理耐性など無き者のごとく、微塵に切り裂いたのだ。


「……あちゃ、やり過ぎちゃった……」


 一応、この組織のこの支部のトップである。脳は持ち帰って、記憶抽出が出来るか試さなければいけなかったのだが、そもそもクラゲの脳ってどこかしら?とレフライアは困惑する。


<ギルマス、ギルマス。水筒を開けて下さい>


<その声は……マルセナ?>


 マルセナは、近くの水を媒介にして念話を繋げる事が出来る。


<そうです。クラゲの身体は、そのほとんどが水分です。死体である今なら、私の液体操作が効きます。全部、まとめて持ち帰りましょう。それで、記憶が取り出せるかは分かりませんけど>


<そうね。お願いするわ>


 レフライアが腰の収納具から水筒を出し、開けると、その水は小さな妖精の様なサイズで、マルセナの形を取る。


 マルセナの分体だ。何かの役に立つかも、と持たせてくれていたようだ。


 その小マルセナが、フォルネウスのグチャグチャになった遺体を、まとめて一つの球体にしてしまう。


<このまま、収納具に入れて下さい。水は洩れないようにしましたから、他の荷物が濡れたりもしません>


<ありがとう。今回は大活躍ね>


 レフライアはその、巨大な水球を収納具に仕舞いながら言う。


<私の方には、あんな魔竜の様な、超絶的な化物はいませんでしたから、それ程でもないですよ>


 確かに、あの魔竜に比べたら、全てがかすむ。


 彼等は、それ程の偉業を成し遂げたのだ。


 レフライアは、マルセナの分体に水筒に戻ってもらって、地上の、今日大活躍だった本隊のところに舞い降りる。


「ご苦労様です、ギルドマスター」


 ブローウェンがそつなくギルマスをねぎらう。


「貴方もお疲れ様、ブローウェン卿。作戦は大成功。貴方の指揮のお陰よ」


「いやいや、今日ほど自分が歳をとったと、実感した戦いはありませんよ。老骨の成せた事など、わずかばかりの事。若者の時代が、来たのかもしれませんな」


 彼が頼もしそうに目を細めて見るのは、西風旅団の面々と、楽し気に話すロナッファの方だ。


「少し戦力不足かと思ったけど、結果的には何とかなったわね」


 成功を祝うべきだろう。魔竜が出現した時、加勢に向かうか、組織のトップであるフォルネウスの動向を見張り続けるかで迷ったが、驚くべき事に、加勢の必要はなかった。


 『流水の弟子』のゼンは勿論の事、他の旅団メンバーの活躍も素晴らしかった。


 成長著しい、とはまさに彼等を指す言葉のようだ。


「生き残りがいないか、確認が終わったら引き上げましょう。ここら辺一帯は、ギルドで一時的に封鎖するわ。何か危ない物が残っていないか、確認したいから」


「そうですな。魔物や魔獣を出す魔具等が残っていたら、厄介ですし」


「ええ。でも貴方達は、祝勝会を心おきなく楽しんで欲しいわ。人数が多いから、場所は解体倉庫になってしまうけど」


「訓練場は使えんのですか?」


「……今、フェルズの上級冒険者の、治療場所になっているのよ」


「ああ、そちらの件もありましたか。お役目、大変ですな」


「これも、私がギルマスとしての役目を、全う出来なかった、ツケの様な物ですから」


「……貴方は最善を尽くされた。余り、ご自分を責めませんように」


「ええ。むしろ、今回で、綺麗サッパリ片付けられた事を、喜ぶべきなのよね……」


 失われた犠牲者が戻って来る事はないが、今日の作戦では、こちら側に死傷者は出なかった。


 ある程度の犠牲を覚悟していたのだが、想定以上の敵(魔竜)が現れたというのに、結果は最良以上、と言ってもいいものだ。


(頼り過ぎてはいけない、と思っているのに、あの子に負担をかけてしまっている。困ったわね……)


 困ったと思いつつ、思わず笑みがこぼれるレフライアだった……。








*******

オマケ


ゾ「うっし。任務完了。完全勝利だな」

ボ「味方にも被害なくて良かったね」

ガ「任務達成。祝……」

ゾ「いやいや、お前さん、もっと普通に喜べよ。罠を潰して大活躍だったんだし」

ガ「普通……。ワーイ、ウレシイ」

ゾ「棒読みかよ」

セ「ガエイさんは、それで充分喜んでますよ。感情表現は人それぞれ」

ガ「同意」

ボ「うん。ゼン様にも褒められてたし、かなり喜んでるよ」

ゾ「そうなのか……」

ル「るーも、ほめられること、したいお?」

リ「はいはい。大きくなったらね」

ミ「役目は適材適所ですの」


ゾ「あの二人が、普通な事言ってると、落ち着かんな……」

ミ「忠犬パンチ!」ドゴォ!

リ「呪符・激痛!」ぎゃあ!


セ「余計な事、言わなきゃいいのに……」

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