第127話 ゼンの憂鬱☆



 ※



 今現在、ゼンを取り巻く状況は、おおむね上手く進行している。


 クランの宿舎となる“小城”の改修工事は終わり、皆、そこに移り住んでいる。


 当初勧誘予定のパーティーは、初めの勧誘会で、どうにか合意に達し、全てのパーティーは小城で共同生活を送り、B級を目指しての訓練を始めている。


 中級迷宮(ミドル・ダンジョン)を攻略(クリア)可能な強さまで達したら、パーティー毎に、攻略に向いている迷宮(ダンジョン)に挑戦してもらう。


 そこら辺の、パーティーの強化訓練の進行の度合い、そして中級迷宮(ミドル・ダンジョン)の情報等を、補佐してくれるエリンと調べ、確認して送り出す事になるだろう。


 西風旅団とクラン参加予定のチームに関しては、問題はほぼない。


 一つだけ、懸案事項なアルティエールの件については、サリサ達の話合いで、何らかの妥協にまで話は進んでいるだろう。


 もし、こじれる様なら、対策を考えなければいけないが、多分、大丈夫な筈だ。


 そして、1カ月間、ギルドに拘束されていた従魔術の育成研究も、この戦闘演習で終り、晴れてゼンは自由の身になれる。


 まだ、フェルズに巣食っていた組織の殲滅作戦が残ってはいるが、それはそれとして、もしその問題も無事に解決したら、フェルズの正常化が叶う。


 フェルズという、迷宮都市の冒険者特有の問題かと思い、ゼン自身は放置するつもりだった問題が、根本からゴッソリと取り除けるのだ。


 勿論それは、上手く行けば、の話で、半ば洗脳状態の上級冒険者達の治療は、それなりに時間がかかる。それを告知された時、自尊心が肥大し切った者達には、すぐには信じられない、悪夢のような話になるだろう。


 術での治療や、従魔による正常化の効果があっても、これは自意識や考え方の問題だ。


 長年それに染まった冒険者達には、入念なリハビリやケアが必要だろう。


 症状の軽い、従魔術の被験者三名は、1か月間の従魔育成が、彼等の本来の姿を取り戻し、精神汚染から脱せた、丁度いい治療期間にもなったのだ。


 それでも治ったのは、あくまで彼等の汚染が軽症だったからに過ぎない。他の、重度の冒険者達では、こう上手く治療する事は叶わない。難しい事になるだろう。


 だがそこら辺は、冒険者ギルドが……ギルマスが考え、対処するべき問題だ。


 ゼンが関与する話ではないし、関わるつもりも毛頭ない。


 ついつい先々の事を考え、常に打てる手を考えてしまうゼンの悪い癖が出ていた。自分が手を出さなくてもいい、考えなくてもいい問題についてさえ、深く考えてしまう。


 むしろ、常に嫌な雰囲気を醸し出し、西風旅団やゼンに絡みそうな連中ばかりだった上級冒険者に、そうなった別の原因があった事に、ゼンは深く安堵している。


 でなければ、大半の冒険者が、ゼンの粛清対象になっていたかもしれないから……。



 ※



 夜は、当然のようにゼンが、その日取れた戦利品にある肉や、自分のポーチにある食材等を使って、適当な煮物、焼き物を作った。


 ゼンにとって、料理とは労働ではなく、自分の楽しみでしかなく、誰にも譲るつもりがない役目なのだ。


 時々作るおやつのお茶菓子等で、ゼンの料理が上手い事を知ってはいた被験者達だったが、

菓子と夕食用の料理では意味合いがまるで違うし、材料も別物だ。


 初めてゼンの料理を食べる者がいつもなる様に、半ば欠食児童の様になる一同。


 その中には、今回の結果を確かめに来た研究者と学者のエルフの女性と人間の壮年男性、それに迷宮(ダンジョン)の見張り番をする、元冒険者と通常のギルド職員の2名もいた。


「この、戦利品の量を見る限りでは、今回の実験は成功と見ていいのですか?」


 美味い料理に舌鼓を打ちながらも、自分の役目を忘れない律儀な研究者のエルフ女性が言う。


「冒険者10人が、1日入ってもこんなに稼ぎは出ませんよ。軽く2倍は行っているな」


 元冒険者の、見張り番なギルド職員も同意して、自分の見解を出す。


 今回の稼ぎと戦利品は、布の敷物をしいた上に、解りやすいように積まれている。


「それが半日の成果なんですから、4倍は行く?従魔とは、それ程優秀なものなんですか?」


 もう一人の門番なギルド職員は、感心して、主人達の脇でゼンの料理を同様に食べる従魔達に目をやる。


 戦闘演習をするこの迷宮の門番のギルド職員達には、前もって誓約魔術を施した上で、今回の従魔の話の概略は説明されている。


 白銀狼王(シルバー・ウルフ・キング)、雪豹女王(スノー・パンサー・クィーン)、黒鋼鷲(ブラックスティール・イーグル)にホワイト・ハーピィ純白妖鳥


 どれも、上級の冒険者にならなければ、生きて目にするのが不可能な、上位の魔獣達だ。


 それが大人しく、人懐っこく振る舞っているのも脅威なのに、それがこれから冒険者の補佐(サポート)をする従魔なのだと言う。凄い時代が来たものだ。


「今回の被験者の冒険者が、特に優秀で、従魔もそれに合わせて、進化したものになったお陰ですね。統率種が2種、レア1種に元からの上位進化種。


 それと、冒険者と相棒(パートナー)の従魔の意思疎通がしっかりしていて、全体の連携がちゃんと取れているお陰で、同じ数ならいつもこうなる、とまではいかないと思います」


 ゼンは、明らかに手抜きな料理を喜んでもらうのは、少し複雑微妙なのだが、それは顔に出さずに、今回の成果の理由を説明する。


 学者、研究者、ギルド職員達は成るほど、と頷いている。


 自分達を褒められて、照れながらも、料理を食べる手をまるで休めない被験者達だった。




 夜は、持って来た圧縮テントを迷宮(ダンジョン)の入り口近くに展開し、で就寝につく。


 門番なギルド職員達は、近くに建てた簡素な小屋で。被験者達は、男女別で2つのテントに別れ、研究者と学者の男女は、どうも恋人同士だったらしく、一緒のテントに入っている。


 上司(ニルヴァーシュ)が気を利かせたのだろうか?


 ゼンは、一人用のテントを用意して、すでに展開しているが、まだ外で、椅子代わりに岩に腰かけ考え中だ。


 久しぶりに、サリサもザラも傍らにいない夜。……いや、前夜は一人だった。


 今、フェルズでゼンより圧倒的に強いのは、アルティエールと、後もう一人。


 時々、夜中の訓練に付き合わされている、迷惑な義親、ギルドの頂点。


 圧倒的に、でなければ、ロナッファも、ゼンより確実に強いだろう。ゼンが今までの訓練などで優位に立っているのは、あくまでロナッファの隙をついた、駆け引きの上手さや、『流水』の相手の力を利用する、技術の特性上の話だ。


 実際に総合力では、ロナッファの方がかなり強い。ロナッファ自身は、言っても納得しないだろうが。


 ゼンは今、自分が充実した日々を送っているのだろう、と思う。


 万事が万事、順調ではないが、確実に良い方向へ向かっていると思える。


 それなのに、ゼンの心の中に落ち着かない、焦燥としか言いようのない気持ちが沸き上がって来る。


 フェルズに戻ってすぐは、色々ゴタゴタがあり、それの解決と、『悪魔の壁デモンズ・ウォール』の攻略があって、そちらに気持ちが向いていた。


 その後も、従魔研に関わり、自分の恋愛関係のいざこざもあって、気づかないフリをしていられたが、1月以上、フェルズの外に出れず、魔物と戦わなかったせいなのだろう。


 こんなノンビリした事をしていて大丈夫なのか、もっともっと、厳しい、命がけの訓練をしなければ、これ以上強くなれない、弱くなってしまうのではないか、と強迫観念にも似た気持ちが沸き上がるのを、抑え切れない。


 ラザンとの修行の旅は、基本的に毎日が厳しい鍛錬だった。


 ただ、異国を旅するその途上でも、ラザンがゼンを、厳しく鍛えていた。


 そして、その時々の、限界を超える為の“試練”、それは、ゼンが限界を越えなければ倒せない様な強い魔物を、ラザンが判定してあてがう事だった。


 1匹で足りないなら、数でそれを補う。


 ゼンがある程度強くなった頃から始まった、ゴブリンの百人斬りや、コボルドの百人斬り等がそれだった。


 実際は百匹丁度などではなく、ラザンが適当に、ゼンの限界以上になるように頭数調整をするので、百匹以上の時もあれば、それ以下の時もあった。


 ゼンは最初は、敵に囲まれない様に、最小限の力で急所を狙って倒すようにするのだが、それはまだ余裕のある始めの時間のみで、すぐにそんな余裕はなくなる。


 どんな弱い魔物でも、大群ともなれば、単体を相手にするのとはまるで違う。


 足が疲れ、防御がおろそかになると、大群は一気にゼンを押し包み、全周囲から攻撃を仕掛けてくる。遠方から弓や槍で攻撃してくるものもあるが、それは仲間が側にいない時でなければ出来ない。


 周り中が敵になったら、もう剣を滅茶苦茶に振り回し、身体を回転させ、全方位を薙ぎ払うように攻撃する。


 そこに間隙が出来ると、遠距離武器を持った敵が動き出すので、ゼンはそれを最優先で倒さなければいけない。魔術士などは、特にそうだ。


 それを何度も何度も繰り返す。怪我などは当り前だ。なるべく身体の大事な箇所には攻撃を受けないように、それだけは注意する。


 目や顔、頭部、それに手足。攻撃手段、移動手段がなくなれば、ただ嬲り殺されるだけだ。


 ただもう、倒す倒す倒す殺す殺す殺す斬る斬る斬る。


 一体何度繰り返しただろうか、分からなくても、ともかく手足を動かし、死に物狂いで戦うしかない。


 そして、最後の最後に、ボスが現れる。


 自分の部下である、戦士(ファイター)や魔術師(メイジ)ホブゴブリン(上位種)等が倒された後の、本当に最後に現れる。


 これは、魔物的な掟か決まりがあるのかもしれない。


 でなければ、序盤でボスのキングと戦えば、ゼンの消耗は大きく、疲労も大きい。


 その後であれば、大群がゼンを押し包み、数による勝利があっただろう。


 それを、魔物のキングはしない。あるいは、低位の知性が低い魔物だからで、高位の知性が高い魔物はもっと戦術や戦略を考えるのかもしれない。


 とにかく、ゼンが戦った、ゴブリン小鬼コボルト犬鬼オーク豚鬼はそうだった。


 そうした、最後に現れるキングを、ゼンは残った全精力を使い切って倒す。その先は、もう何もないので、ただ無心に、がむしゃらになって、本能のままに戦う。


 そして、大抵が気絶して終わる。


 気づくと、ラザンがハイポーションを自分に振りかけている、冷たい感触で目覚める。


 身体のあちこちに痛みは残るが、傷は治療されている。


 最後に一口飲ませてもらって完治、となる。


 正直言って、ゼンはこの大群相手の“試練”が、一番きつく、過酷で嫌だった。


 数えられる程度の相手の方が、まだ何をどうしようか、等の戦略を立てやすい。


 大群相手だと、終わりまでの勝ち筋がまるで見えず、最初の絶望感が大きい。ともかく死なない様に、永遠に戦い続けるしかない様に思えたからだ。


 余りの辛さに、何度泣いて、フェルズに逃げ帰る事を夢見ただろうか。


 それが和らいだのは、皮肉な事に、コボルト犬鬼との“試練”の後に、従魔を、ミンシャを得た事からだった。


 従魔を得た事で、ゼンが修行の旅に耐えられる様になったのは、従魔による補佐が受けられる様になったから、とかではなかった。そもそもゼンは、修行に従魔の力を使った事はない。


 単純に、従魔とゼンの命が繋がっている事が分かったので、それを護る為には、自分が死なないようにするしかなく、その責任感が、ゼンを支え直したのだった。


 元々ゼンは、西風旅団の面々を助けたい、力になりたいからこそ、強くなりたいと思ったのが動機だったのだ。


 それに、今現在護らなければならない、明確な対象をその身に宿した事で、ゼンの目的意識はより一層増強され、補強されたのだった。


 だからそれは、従魔が増えれば増える程高まり、より揺るぎないものへと変化した。


 だから、と言う訳でもないのだろうが、ゼンは一種の修行中毒のようになっているのだった。


 ずっと辛く厳しい修行を続けていて、師匠は今も尚、自分抜きでそれを継続中なのだから、自分がさぼっていい理由にはならない、と思う訳だ。


 だから、この従魔研に通う一カ月が、段々と憂鬱になり、ともかく早く自由になり、外だろうと迷宮だろうと構わずに、戦いたい衝動が抑え切れないのだった。


 一応今、上級迷宮(ハイ・ダンジョン)にいる訳だが、ゼンは見届け役に過ぎず、後ろで後方に沸く少数の魔獣をチマチマ斬り捨てるしかない現状は、実はかなり辛い。イラつく。


 ゼンは、師匠の様に最強を目指している訳ではない。強さの限りない高みを目指したい訳でもない。


 現状で充分なのだ。


 それでも、落ち着かない。無意味に焦りに似た感情が、湧き出して来る。


 それに、師匠(ラザン)にもう言い渡されているのだ。


 今の歳、身体つきでは、鍛えるのはもう限界だろう、と。“気”での身体強化も限界に近く、これ以上は、逆に身体を壊しかねない、とまで言われている。


「美味い物たらふく食って、身体が大きくなるのに合わせて、段々と成長する事になるだろうさ、って、全然背が伸びないんですけど……」


 ついつい愚痴が零れ落ちる。


 考えても仕方がない。寝ようか、と腰を上げると、被験者のテントで、人が動く気配がある。


 見ていると、狼の獣人族、フォルゲンがノソノソとテントから出て来て、周囲を見回すと、ゼンを目ざとく見つけ、小走りに駆け寄って来る。


「師匠、眠れないんですか?」


「……君達兄妹は……いや、もういいや。俺は、それ程戦った訳じゃないからね。疲れてもいない。考える事もあったから」


「そうですか。……その、お暇なら、俺と少し組手でもやりませんか?」


「……午前中も、結構つき合ったと思うんだけど?」


「いや、あんなんじゃ、全然足りないッスよ。だって、これ終わったら、俺は獣王国に戻らなきゃいけないんですよ?


 リーランや姐さんはズルイッスよ。俺のお守りで来たのなら、一緒に帰るのが筋ってもんでしょうが!」


「……俺もそう思うけどね。一度、説得にでも来る?連れ帰ってくれるなら、俺も助かるけど」


「いや、あいつ一度言い出したら、絶対言う事聞かないんですよ。姐さんは論外だろうし」


 頑固な妹で困る、とフォルゲンは眉をしかめる。


 強者として、それなりに尊敬はしている様にも思えるが、妹上位な関係らしい。


「……まあ、いいさ。俺も、ちょっと身体を動かしたかったから、少しならつき合うよ」


「やった!ありがとうございます!師匠」


「“気”で遮音結界モドキを張って、と」


 ゼンは、テントを張った場所から少し離れ、“気”で結界を張る。


「それも便利ですね」


「やり方は、そんなに難しい事じゃないから、国元の師範代に聞いてみな。今のフォルゲンなら教えてくれるだろう」


「今のって事は、前だと駄目なんですか?」


「それなりに“気”が扱えないと出来ないから。研究棟に籠ってる間に、結構使えるようになったみたいだから」


「そ、そうですか!嫌、あそこ狭いし暇ですからね。他にやる事なくて、“気”を練って、中心で増強して、全身を循環させて、って、ずっとやってると、一瞬で時間が飛びますよ」


「それだけ集中してるんだろう。他の人もそうだけど、この研究期間は、皆、有意義な内容になったみたいだ」


「ですね。なんか、性格がみんな丸くなって、俺は戸惑ってましたけどね」


「……だろうな」


 フォルゲンに余り詳しく説明する訳にはいかないが、全てが終わったら、話す時が来るかもしれない。


「じゃあ、組手やろうか」


「お願いしまっス!」


 フォルゲンは、模擬試合をした頃に比べれば、各段の進歩を遂げていた。


 特に、“気”による身体強化を常にして、動きが数段速く、鋭くなっている。


 そして、“瞬動”も会得していた。


 “立体包囲殺法”も“瞬動”モドキの跳躍を繰り返す技だったが、それに“気”の爆発を付け加えるだけだ。会得するのは当然の成り行きだった。


「“瞬動”になったな」


 ゼンは、フォルゲンの動きを見、飛んでくる拳や蹴りを躱しながら言う。


「うッス。前までは出来なかったんでスよ」


 フォルゲンは得意そうに、“瞬動”を使って動きまくるが、それには欠点がある。


「覚えたてで嬉しいのは分かるが、そんなに使いまくるなよ」


 ゼンは、フォルゲンの動きを先読みし、“瞬動”を使ったその直後に、目的地の途中に移動。かがんで手を前に伸ばす。


「え?ぐふぉ!」


 “瞬動”で動ていたフォルゲンは、腹の位置に差し出された、その手を避ける事も出来ず、思いっきり突っ込んでいた。くの字に身体を曲げ、苦痛に苦しむフォルゲン。


「“瞬動”は跳躍移動だから、読まれてカウンター受けたり、途中に何かを置かれるだけでも大ダメージ受けるんだよ。これが剣なら、胴体が両断されているぞ?」


「な、なるほど……」


 それからはフォルゲンも慎重になり、要所で“瞬動”を使いつつ、ゼンとの組手を続けた。


「―――そろそろ終わろうか」


「……そ、そうですね……」


 フォルゲンは、疲労困憊、汗みどろだ。


 ゼンは最小限の動きで、フォルゲンの攻撃をいなしているので、それ程でもない。


「……虫も、出て来ているみたいだし」


「へ?虫?」


 ゼンが高く跳躍し、何かを手刀で両断した。


 フォルゲンの前に落ちて来たそれは、目玉に蝙蝠の羽をつけた様な、不気味な魔物だった。


「な、なんですか、これ?」


「多分、魔族の偵察用の使い魔らしい。旅の途中でも、よく見かけて、師匠が羽虫が!って斬り落としていた」


「は~~、魔族の、ですか。また攻めて来ようとか、考えてるんスかね」


「どうだろう。かなり見かけるから、ともかく情報収集の為なんだろうけど」


 フェルズの組織に、関係あるのかどうか、それも分からない。


「ま、それはいいさ。フォルゲン、凄く強くなったな。ロナッファと戦ったら、驚くんじゃないかな」


「え!そうですか?師匠に褒められると、照れるなぁ……」


 狼顔が、クネクネテレた様子を見せるのは、ちょっとキモかった。


「多分、獣王国の冒険者ギルドでなら、A級に昇格するんじゃないかな」


「え~、マジッスか!」


「獣王国のギルド、昇格甘いし」


「師匠、そういう落ち、いらないッスよ……」


 落ち込むフォルゲンは、涙目だ。


「冗談。本当に、昇級はすると思うよ」


「おお……。俺もついに、姐さんと同じクラスに……」


「あ、ロナッファも、うちで訓練してるから、かなり強くなってるよ。


 今だと、AAダブルエー級ぐらいかな」


 ゼンは、フォルゲンをからかっている訳ではないのだが、一度持ち上げてから落としている。


「師匠~~、姐さんは、あれ以上鍛えちゃ、駄目ですよ~~」


「そんな事、俺に言われてもなぁ……」


 苦笑いするしかない、ゼンだった。












*******

オマケ


サ「ゼンは三日間不在かぁ」

ア「寂しいねぇ、恋しいねぇ~」

サ「……まあ、ね」

ア「こういう時って、身体が夜泣きするんでしょ~?」

サ「……はぁ?シア、あんた、意味分かって言ってるの?!」

ア「うううん。だから、サリーに聞いているんだけど、どこから涙流すの?」

サ「またドーラね!私は知らないから!」

ア「え~、ケチケチしないで教えてよ~~」

サ「教えた人に聞きなさい!」

ア「チェ~~」

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