第1章

1・空峰光 高校二年

 いつものように叩き起こされる朝。

いつもの食パンにスープ。

学校指定の制服をいつもの様に着る。

なんの変哲も無いいつもどうりの日々。変化なんて何もない。


こう、おはよう!」

「おはよ、雫」


玄関を開ければ幼馴染の月岡雫が立っているのもいつも通り。

平凡でなんの変哲も無いそれに退屈はしている。

だが、それを変えたいとも思わない。このままであってくれてと思う。


「光は相変わらず眠たそうですね〜」


まだ冴えぬ目をこすっているとそれを覗き込んでくる。


「万年寝不足で何が悪い」

「どうせまた携帯ゲームでもしてたんでしょ?」

「そんな事しねぇよ。動画見てただけだし」


そう屁理屈をいえば呆れ半分哀れみ半分の顔でこっちをみてくる。


「どっちも違わないよ…」


忙しなく人が行き交う駅ですらそれは日常。

電車が遅延でもしてるのか行き交う人の多く、特にサラリーマンが舌打ちをしている。

いつものようにすぐに動くだろう。案の定、三分もすれば電車が来る。

ホームに停車した電車に無理やり乗り込む。人との隙間なんてものは存在しない。

見れば定員オーバーということはすぐにわかる車両にサラリーマンが乗ってくる。

押された雫が自分の方へ倒れ込んでくるのを支えるけれど僕自身も脚と腰が同じ方向を向いてないので一方的に寄りかからせてるだけ。


「ごめんね」

「大丈夫」


そのままの状態で電車に揺られること二十分。乗り換えの駅に到着。下車するも次に待ってるのはこれよりも混雑具合がひどい路線。

都市部の朝の電車など基本どこも混雑しているのだ。しょうがない。

ホームに並ぶ列のの最後尾に並びやっと落ち着く。

一本目に来る電車に乗れるわけはなく二本目にきた電車に乗る。

またぎゅうぎゅうに押しつぶされながら約四分。家から計四十五分で学校に着く。

学校に行くだけでめちゃくちゃ疲れるし体力の六割ぐらい持っていかれる。正直怠いし面倒くさい。

けれど、それで良いのだ、なんの変哲も無い平穏が一番良い。


「あっ!宿題忘れた!」


踏切が開くまで止まっていた時雫が声をあげた。

すごく深刻そうな顔をしてこちらをみている。


「は?なんの宿題」

「数学…教科書の問題解く宿題出たんだけどやってない」


この世の終わりみたいな顔を向けられたら「あっそ」で済ませることができないじゃないか。


「ノート貸してやるから。僕のクラス結構進んでるから多分もうやってると思う」

「光…あんた神」


手を合わせて拝んでくる雫にノートを渡す。今までも何回か貸してきてるしノートを貸すこと自体は慣れてる。

雫の宿題忘れも何回目のことやら…。


「この貸しはいつか返せよ〜」

「今度パン奢る」

「それで許そう」

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