第4話 004

頭が痛い。


眉骨から、脳天に向かって鈍い痛みが走る。


不鮮明な記憶と対照的に、

身体に纏わり付く繊維の感触がやけにリアルだ。



記憶のフィルムを掻き集めて、自分に起きた事を再構築する。


けれど、


正解のフィルムは見つからないってこと。

俺は、よく知っている。




左腕を上げて、右腕に力を入れて。

何とか、けたたましいアラームを止めようと、携帯を探る。



けれど、音が、アイフォンのアラームのそれとは違う事も、意識の奥の奥では分かっていた。




鳴っているのは、玄関の向こうで誰かが押したボタンの音だ。




ドアフォン。

インターフォン。


よく、ピンポンと擬音されるその音だった。

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