小説を読んだあとの答え合わせ

「読み終わりました?」


「ああ。……安茂里も犯人は誰か考えがあるんだよな?」


「はい。一応」


「よし、じゃあ犯人の名前とその根拠を言ってみろ」


「なんか上から目線ですね。……いや別にいいんですけど。えーっと、犯人は四角太郎でしょ」


「ふむ。……なんでそう思った?」


「まず、容疑者の三人ですけど、三人とも同じくらいの時間一人で行動する時間がありました。だから、アリバイという観点から犯人は絞れません。でも、今回の事件、現場の宝物庫の場所から犯人が分かるんじゃないですか?」


「宝物庫の場所か。それは具体的にどういう意味だ?」


ってことですよ。入り口も目立たないし、距離的にそこまで遠くなくても、入り組んでいてすんなり到着するのは難しいでしょう」


「そうだな。現場に向かうまでの描写はそういう風に取って欲しい、っていう意図で書かれた手掛かりだろうな」


「はい。そして、受付の従業員の話から、三人は一応トイレに行くために外に出てるということです。つまり犯人に残された時間はさらに短くなります。ということは、、という事になると思います」


「そうだな。いわゆるお約束的なロジックだけど、そうだろう」


「で、みんな竜宮城は初めて、みたいな口ぶりでしたけど、実は竜宮城に来たことがある人物を探せば犯人だろう、と思いました。そして、その手掛かりはトイレに行ったときの描写ですね。第二話のところで、一度部屋をでた三角太郎がトイレの場所を亀に聞くために戻るという場面がありました。建物の外にあるトイレですけど、宝物庫の場所と同様に、、という手掛かりになります。そして、三角太郎がトイレに行く前に、四角太郎がトイレに行っています。部屋にいる亀はもちろん、とくに従業員に話を聴いた素振りはありません。つまり、四角太郎はあらかじめトイレがどこにあるのか知っていた。つまり竜宮城に来たことがある。よって犯人である。……という結論です」


「そうだな。安茂里の言う通り、四角太郎が犯人だろう。それで、安茂里の推理はそれで終わりか?」


「え?そうですけど。だって犯人は一人ですよね?これ以上何を推理すれば?動機について考える必要ないですし」


「そうじゃなくて、四角太郎が犯人だという手掛かりはそれで全部なのか、ってことを聞いたんだけど」


「はあ、まあそうですけど。それがなにか?」


「加波志も言ってたんだろ?簡単なクイズだから、せめて手掛かりは全部拾って欲しいって」


「はい、そうですよ」


「だったら、まだ足りないだろ。四角太郎が犯人だとする手掛かりはもう一つある」


「もう一つですか?」


「ああ。まあ四角太郎が竜宮城に来たことがある、ということが分かる描写がな」


「どこです?」


「四角太郎が一度外に出て酒を持ってくるシーンがあっただろ?」


「ああ、ありましたね。ビニール袋に入れて持ってきていましたね。えーっとそれが?」


「いや、その酒木箱に入ってただろ?んで、んじゃないのか?」


「あー……そうでしたね。竜宮城は結構深い所にあるから、体全体にかけとかないと体がつぶれちゃうって亀が言ってましたね。だったら木箱なんて水圧でつぶれてもおかしくないですね」


「そうだ。スプレーは水中で呼吸して活動できるためだけじゃなくて、海底でかかる水圧にも耐えられるようにするためのスプレーだっただろ」


「でも主人公は三人にはきちんと全部説明してませんでしたね」


「そう、そうなんだよ。主人公の話し方だと、水中で呼吸ができる、っていうことしか伝わっていない。でも四角太郎は普通にお酒を竜宮城に持ってきた。ということは、四角太郎はきちんとお酒にもスプレーをかけて持ってきたってことになる。竜宮城に出る時にスプレーをもらったっていう話は出てないんだから、四角太郎が元々持っていた、っていう考えができる。つまり、四角太郎は竜宮城に来たことがある」


「……なるほど、言われればそうですね。四角太郎がお酒をもらったのが三日前って言ってるから、お酒をあげた人がそのスプレーをかけたっていう可能性も否定できますね」


「そ。つーことでここまで推理して完全正解だな」


「……なんですか、そのドヤ顔は。なんか腹立つんですけど」



 その後、加波志くんに正解を確認したところ、仙ノ倉先輩の解答で正解とのことだった。

 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

竜宮城殺人事件 安茂里茂 @amorisigeru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ