第25話 異教に焦がれて夢を見る


非業の殉教を遂げた聖人の名を呼ぶすべもなく、天を仰いだところで異教の神は恩寵を下賜せずに、病み疲れた身を硬いベッドに横たえて、今日も悪夢を見る。失われた言語で話す人々の群れの中で、ひとり物云わぬままさまよい、摩天楼が立ち並ぶ一角で祝祭に巻き込まれ、怒涛のように押し寄せる人々の波に呑み込まれて聴覚を失う夢も、おまえから離れて久しい山道を当てもなく歩きつづけた果てに、鬼に攫われて跡形もなく食まれる夢も、すべてが徒労に終わる日記の結末が延々と繰り返される夢も、もう見飽きた。計算を誤ったために抜け出せなくなった部屋で見た、おまえの亡骸は造花で埋もれていた。その花弁を一枚一枚剥いだ先に眠るおまえの夢には、異形の天使たちが舞い降りる、まばゆい雪原の光景が白く焼き付いていた。


ココア共和国2022年4月号落選作

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